「茂木崇の「タイムズスクエアに魅せられて」」

「価値を認める顧客とのみ取引する」
老舗ブルックス ブラザーズの哲学(上)

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2008年6月20日(金)

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 創業1818年。したがって10年後の2018年に創業200周年を迎える老舗ブルックス ブラザーズは、なぜこれほど長きにわたって商売を続けることができるのだろうか。

 私はニューヨーク本店8階にある同社オフィスを訪ね、戦略開発及び国際ビジネス担当プレジデントのエラルド・ポレットに、ブルックス ブラザーズの哲学について話を聞いた。

 今回はこの取材に加えて、Brooks Brothers Centenary 1818-1918(1918年刊)、ジョン・ウィリアム・クック著Brooks Brothers-Generations of Style: It's All About the Clothing(2003年刊)、落合正勝著『男の服 こだわりの流儀』(世界文化社、2000年刊)所収の「B・ブラザーズの思想」ほか各種の資料を用いて、ブルックス ブラザーズの魅力について考えてみたい。

 現在、ニューヨークで評価の高いトム・ブラウンをゲストデザイナーに迎えた新コレクション「ブラック フリース バイ ブルックス ブラザーズ」が人気のブルックス ブラザーズ。私も好きなブランドであり、特にニューヨークでの取材の際に真面目できちんとした人物であると印象づけたい時、同ブランドの衣類を身に着けて出かけることが多い。

マディソン街44丁目の本店は1915年に完成

マディソン街44丁目の本店は1915年に完成

 ブルックス ブラザーズはマンハッタンには4店舗を構えている。端正な接客は4店とも共通だが、私はマディソン街44丁目の本店でお買い物をする。というのは、品数が最も豊富だという理由もさることながら、この本店には他のお店と違って歴史を感じさせる独特のにおいがあり、米国の紳士の伝統に自分も連なることができたように思え、良い気分になるからである。

 ブルックス ブラザーズはアメリカン・トラディショナル、略してアメトラの元祖として日本では知られている。だが、本店で買い物をしていてこのことを口にしたら、店員さんにキョトンとされたことがある。私どもはクラシックな装いを提供しておりますというのが店員さんの答えだった。

 そこで、ポレットにまずこのことを聞いてみた。すると、アメリカン・トラディショナルという表現に親しみはないが、ブルックス ブラザーズがそう呼ばれるのは理解できるという答えだった。

 ポレットは話を続け、ブルックス ブラザーズは顧客との信頼関係によって築かれてきたブランドであり、マネーや権力ではなく、顧客と精神的につながっているところに特色があると言う。

 そして、同社のミッションステートメントは、創業者ヘンリー・サンズ・ブルックスが定めた

「最高の品質の商品だけを作り、取り扱うこと。適正な利益のみ含んだ価格で販売し、こうした価値を商品に求め、またその価値を理解できる顧客とのみ取引すること」

のただ一つであり、この点は創業時から今日に至るまで一貫しているという。

 「精神的に」というのは重要なポイントである。ブルックス ブラザーズというと、ポロカラー(ボタンダウン)やシアサッカーを想起する人が多いと思われるが、同社は服のディテールや素材でもって自らを規定しない。ニューヨークの紳士と共に米国独自のエレガントなスタイルを作り上げようと努力してきたところに、ブルックス ブラザーズが米国の服飾史において占める位置がある。

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著者プロフィール

茂木 崇(もぎ・たかし)

茂木 崇

1970年生まれ。東京工芸大学専任講師。専門はマス・コミュニケーション論、アーツ・マネジメント論で、守備範囲はニューヨークの新聞・雑誌・テレビ・デジタルメディア・広告・音楽・ブロードウェイ。1年のうち2カ月ほどをニューヨークでの取材と調査にあてている。



このコラムについて

茂木崇の「タイムズスクエアに魅せられて」

 世界の文明の十字路、米ニューヨーク・タイムズスクエア。この地に魅せられ、研究を重ねる筆者が、米国のメディア、エンターテインメント、ファッション産業などについて、縦横無尽にテーマを選び、最新動向をリポートする。

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