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2008年6月23日(月)

石油の次は「水」で儲ける

世界人口の47%が水不足に直面する未来を睨むビジネス

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Robert Berner (BusinessWeek誌、シカゴ支局記者)
2008年6月23日発行号カバーストーリー 「There Will Be Water

 米テキサス州パンハンドル地方の端にあるロバーツ郡は、なだらかな丘が続いている。背丈のある草、オークの木、メスキート(マメ科植物の低木)、畜牛などが印象的な広々とした美しい地域だ。ほぼ正方形の土地の面積は924平方マイル(約2400平方キロメートル)。人口は900人に満たない。

 この地に住むT・ブーン・ピケンズ氏は、石油業を営みながら企業買収を手がけている。1971年、ウズラ狩り用にロバーツ郡の土地を初めて購入した同氏は、今や郡一番の地主だ。所有するメサ・ビスタ牧場は約6万8000エーカーにも及ぶ。ハイプレーンズ地域に属する同郡の地下に、何百万年も前からある広大な帯水層の水利権も、多く買い取っている。

 水が石油のように取引されることになれば、ピケンズ氏は現代版のジョン・D・ロックフェラーとなるだろう。何しろ、個人としては米国内の誰よりも多くの水を保有しており、さらに多くの水利権を獲得しようとしているのだ。同氏は、現在保有する年間650億ガロンの水を、11郡、650の私有地を経て250マイル(約400キロメートル)離れたダラス市に売り込もうと目論んでいる。

 パンハンドル地方に建設中の広大な風力発電所からの電気も、水と同じ道を使って供給する予定だ。需要と供給が一致すれば、風力発電の電気、水、天然ガス、ウラニウムなど、何でも売るというのがピケンズ氏の考えだ。「必要に応じて水を買いたい人がいる。水の所有者は水を売りたいと思っている。それだけのことだ」。

2030年には、世界人口の半分近くが水不足の深刻な地域に住む

 今から数十年後には、都市部の人口増加や気候変動によって干ばつに見舞われやすい土地が増え、“青い金”とも呼ばれる水の希少性はますます高くなるだろう。経済協力開発機構(OECD)の予測では、2030年には世界の人口の半分近くが水不足の深刻な地域に住むことになる。ピケンズ氏はそうした状況を理解している。テキサス州では地下水の揚水に対する規制が珍しいほど緩いが、水資源を確保しようとする動きは世界で急速に強まっている。

 干ばつが始まって6年目になるオーストラリアでは、都市部のブローカーが農家から水利権を買い集めている。米国の農村地の住民は、スイスのネスレ(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年4月16日「A Town Torn Apart by Nestle」)など多国籍のボトル水メーカーに土地(と水)を売ろうとしている。

 事業に大量の水を使う企業も水源確保を目指している。例えば、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルはコロラド州にあるオイルシェール(油頁岩)の鉱床を掘削するため、現地の地下水利用権を買い集めているところだ。

 そうした状況の中で、目立った動きをしているのがピケンズ氏にほかならない。長い間、原油とガスの採掘で大きな利益を上げてきた同氏は、80歳になった今、化石燃料の時代は終わったと確信している。これまで水道事業に1億ドルと8年間をつぎ込んできたが、水を買おうというテキサスの都市はいまだに現れていない。それでも、ほかの多くの人が考えるのと同様、急増する人口の喉の渇きを癒やすことで巨万の富を得られるとピケンズ氏は考えている。最大限に水を汲み上げれば、毎年約1億6500万ドル分の水をダラス市に売ることが可能だ。

 「私益のために水を売ってもよいという考え方は、道徳的に受け入れられない人が多い」と、水や土地利用の法律を専門にする米国で名高い弁護士、ジェームズ・M・オルソン氏は言う。「だが、水の希少性と得られる利益の大きさは、市民感情を圧倒するかもしれない」。

敵対的買収で何億ドルも儲けていたピケンズ氏、1990年代半ばに勢いを失う

 オクラホマ州出身の地質学者で、世界で最も幸運な男と自称するピケンズ氏は典型的な起業家だ。1956年に石油採掘師として独立。その30年後には、同氏が設立したメサ・ペトロリアムは米国最大の独立系石油探査企業に成長していた。

 だが、ピケンズ氏の名を世に知らしめたのは、石油事業ではなく企業買収だった。1980年代には、自社よりもはるかに強大で資金力のある石油会社を相手に、次から次へと敵対的買収を仕掛けた。そうした企業はもっと株主価値を上げる努力をすべきだと同氏は考えていた。結局買収には至らなかったが、買収を仕掛けなければ検討もされなかったであろう取引を相手企業にさせたことで、石油業界の再編を促した。

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