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ブラックホールに飲み込まれる消費税

増税しても破綻への道を行く日本の年金運用

  • 山崎 養世

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2008年6月26日(木)

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 福田康夫首相が取り上げたように、いよいよ消費税の増税に向けた議論が始まりました。

 確かに、消費税増税は避けては通れない道なのかもしれません。団塊の世代の引退が進めば、人数が少ない現役世代からの税金や保険料では、年金や健康保険を支えていくのは難しくなります。引退した世代に比べて、40代以下の現役世代は、生涯の社会保障の収支が大幅に悪化します。

 すべての世代の消費に課税する消費税は、少子高齢化で急減していく社会保障の財源を確保するためには、合理的と考えられます。それに、50歳以上の世代が日本の個人金融資産の8割は持つと言われます。お金を持つ人はそれだけ消費するでしょうから、消費税の増税は世代間の負担を均等にする効果もあるでしょう。

 しかし、消費税の増税は、政治家にとっては巨大なリスクであることはまぎれもない事実です。消費税を導入した竹下登政権、消費税を増税した橋本龍太郎政権のいずれもが退陣に追い込まれています。それほど国民の反発の強い政策です。自民党と民主党の大連立という構想の根拠の1つとして挙げられたのも、消費税増税が容易になることでした。

 ところが、一方で決死の覚悟で消費税増税を検討しているのに、肝心の国が運営している厚生年金と国民年金の150兆円もの資産運用で、このままの資産の配分方法では、年金受給者が逸失している利益が、年間2兆円近くになるのではないでしょうか。消費税の年間の税収は10.6兆円ですから、消費税1%の増税に匹敵する金額です。この得べかりし利益は「年金のブラックホール」と言えます。

 消費税の増税を行う前に、年金のブラックホールをふさがなくては、増税をしてもすべてこのブラックホールに吸い込まれることになりかねません。

ブラックホールを拡大した「国債引き受け」

 年金のブラックホールを拡大してきたのは、財政を担当する財務省と年金を担当する厚生労働省との間の「年金による国債引き受け」という慣行なのです。ほとんど固定的に、150兆円の年金資産の3分の2の100兆円を1%台の超低金利の国債に入れているために、その部分が国民に約束した利回りに大きく不足し、逸失利益が発生しているのです。

 高度成長と高金利の時代の財政投融資の慣行をそのままにしているからです。15年も続く超低金利時代になっても、国民の年金資産に金利1%台の国債を引き受けさせ、年金の財政に巨大な逸失利益を発生させているのです。もちろん、年金財政の赤字は国全体の財政赤字を膨らませ、消費税などの増税圧力を高めます。財政赤字削減の先頭に立つはずの財務省が、国債の安定消化というお家の事情を優先させて、年金財政の赤字を拡大する仕組みを推進してきたのです。なんと皮肉なことでしょうか。

 ここまで読んで、いったい何のことだ、国民の年金を運用しているのか、そんな危ないことをやっていいのか、運用するなら安全確実な国債で運用するのは当然ではないか、と思われる方もおられるかもしれません。説明しましょう。

 そもそも、日本の公的年金は、若い時から年金加入者と雇用者が積み立てた保険料を、政府の責任で一定の利回りで資産運用することを約束した、国営の金融事業なのです。民間の積み立て型の生命保険や年金と本質的には同じです。そして、国民の保険料を積み立てた資産が今150兆円あるのです。もちろん、年金加入者である国民の財産です。

 政府による年金積立金の運用収益の前提として利回りのこと、そして給付設計における利回りを予定利率と言います(生命保険会社でも同じ考えを使います)。日本の年金の予定利率は、1997(平成9)年度に厚生年金基金制度の財政運営基準が全面的に改正されるまでは、長い間年率5.5%でした。つまり、毎年入ってくる保険料を年率5.5%で運用することを約束してきたのです。ずいぶん高い利回りを保障したものです。

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