Jason Bush (BusinessWeek誌、モスクワ支局長)
米国時間2008年6月20日更新 「Pro Sports Are Starting to Score in Russia」
ロシアでは何年間も見られなかった光景だ。モスクワをはじめ各都市で、車のクラクションが鳴り響き、通りは熱狂したファンであふれ返る。ロシア国旗を振り回し、拳を突き上げ、「ロシア!ロシア!ロシア!」と連呼しながらのお祭り騒ぎは、興奮冷めやらぬまま夜通し続いた。
サッカーのUEFA欧州選手権2008(ユーロ2008)で決勝トーナメント進出が懸かるロシアは6月18日、オーストリアのインスブルックでスウェーデンと対戦。2-0で圧勝し、旧ソ連時代の1988年以来の8強入りを決めた(編集部注:準決勝まで進出)。
最近、スポーツ競技におけるロシアの歴史的勝利が相次いでいる。5月14日には、ロシアのクラブチーム、FCゼニト・サンクトペテルブルクがグラスゴー・レンジャーズFC(スコットランド)を破ってUEFAカップ優勝を決めた。そのわずか4日後、世界アイスホッケー選手権の決勝でロシアはカナダを破り、15年ぶりの優勝を手にしている。
国民はこうしたスポーツ競技での一連の勝利を、新しいツァイトガイスト(ドイツ語で「時代精神」の意)の象徴ととらえている。この背景には、好調なロシア経済や、旧ソ連時代以降で最高の状態にある国家の威信と自信がある。
「ロシアのスポーツは上昇気運にある」と語るのは、ロシアのソビン銀行の調査部長アレクサンデル・ラズワエフ氏。「もちろん、スポーツでの成果はビジネスに結びつく」。
実のところ、スポーツでの成功と好景気とのつながりは、単なる幸運な偶然の一致ではない。ここ最近のロシアのスポーツ分野における躍進は、国内の大手企業や大物実業家の莫大な投資に支えられてのものだ。世界的なコモディティー(商品)価格の上昇で巨万の富を手にした投資家たちは、何億ドル単位の巨額をクラブの買収やスタジアムの改修に拠出。選手や監督にも高額の報酬を提供している。
「多くの企業がスポーツに投資してきた。今、目にしているのはその結果だ」と、ロシアのスポーツマーケティング会社スポルティーマのアレクセイ・クラスノフ社長は言う。
潤沢な資金
サッカーのロシア代表チームがその好例だ。チームは過去2年間にわたって、ナショナル・フットボール・アカデミーから数千万ドルの資金援助を受けている。同アカデミーの運営資金を拠出しているのはロシアの大富豪ロマン・アブラモビッチ氏。サッカーのイングランド・プレミアリーグ、チェルシーのオーナーとして有名な人物だ。資金は、新スタジアムやトレーニング施設の建設費、選手の年俸、オランダ出身の人気監督フース・ヒディンク氏との2年400万ユーロ(約624万ドル)に上る高額契約などに使われてきた。
UEFAカップで優勝したロシア・プレミアリーグ、ゼニト・サンクトペテルブルクも同様だ。2005年12月にチームを買収したロシア国営天然ガス大手のガスプロム(GAZP.RTS)は、有力選手の獲得から新スタジアムの建設に至るまで、あらゆるものへの投資を惜しんでいない。
結果、2005年に2500万ドル程度だったチーム予算は今年、1億2000万ドルに達した。イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドやスペイン・リーガ・エスパニョーラのレアル・マドリードといった欧州ビッグクラブの4億ドルにはまだ遠く及ばないものの、それに次ぐドイツのブンデスリーガ、シュツットガルトやイングランドのプレミアリーグ、エバートンなどのクラブとは、財政面で既に肩を並べている。
ゼニト以外のロシア国内の強豪チームも大企業によって買収され、数億ドルに及ぶ潤沢な資金を得るようになっている。
ロシア実業界においてスポーツ分野への投資が盛んになったことには、様々な背景が考えられる。アブラモビッチ氏やガスプロムのアレクセイ・ミラーCEO(最高経営責任者)など、ロシアのトップ実業家には熱心なサッカーファンが多いため、ある程度は本人の趣味の延長とも言える。
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