• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

今こそ、年金の第2次構造改革を

年金5.8兆円の巨額損失の背後にある根深い問題

  • 山崎 養世

バックナンバー

2008年7月11日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 国民の150兆円の年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、昨年度5.8兆円もの巨額の運用の損失を出したことが明らかになりました。その原因は株式市場の下落である、と片づけられているようですが、本当は、表面には表れない構造問題が存在するのです。

 1994年から96年にかけて、日本の年金資産の運用の大きな構造改革が行われました。それによって、国民の年金資金の相当部分が守られました。

 しかし、12年後の今、前に積み残した課題が巨大なブラックホールになり年金財政に損失を与えています。年金資産の運用の第2次構造改革が待ったなしです。それには、大問題があることを広く知らせなくてはなりません。そして、愚かな魔女狩りではなく、国民への年金の約束を守るために必要な賢明な解決策が必要です。目先の利害や政治的な打算や視聴率稼ぎの安易なポピュリズムに流れることなく、政治も行政も関係機関も金融機関も学会もマスコミも、議論し、正しい方向に合意し、協力して新しい体制を作るべきです。

少子高齢化が年金財政悪化の原因ではなかった

 まず、前回の「東奔西走」では、年金に巨大なブラックホールが開いていることを説明しました。せっかく国民が積み立てた150兆円の年金資産のうち、3分の2の100兆円が国民に約束した利回りよりはるかに低い超低金利の国債にも運用され、隠れた巨大な損失を生み続けているのです。

 代表的な10年国債の利回りは、97~98年から1%台に低下しています。一方で、政府は、1999年までは年金資産を年率5.5%で運用することを約束していました(この利回りを予定利率といいます)。予定利率との逆ザヤは年間4%にもなっていました。当然、その分は年金財政の悪化要因となりました。

 その後予定利率は徐々に切り下げられました。それに伴って、年金の保険料の引き上げと年金給付の引き下げが行われてきました。国民の不満は高まりました。でも、一般に言われるような少子高齢化だけが年金財政の悪化の原因ではなかったのです。

 今では、年金の予定利率は3.2%まで低下しています。これは大変な切り下げです。1000万円を30年間5.5%の利回りで運用すれば、約5000万円になりますが、3.2%なら約2600万円にしかなりません。それでも、3.2%の予定利率は、超低金利水準の1.5%前後の10年国債の利回りよりも相当高いのです。ですから、国債で運用している100兆円の年金資産は、毎年1.5兆円程度の得べかりし利益(逸失利益)を生んでいることになります。

低金利で発行した債券を、自社で買う財務部長などいない

 こうして、国債金利が低下した90年代以降、国債に投資したことによる年金財政の逸失利益は巨大なものになります。

 これが企業の財務担当であれば、理解し難い行動にしか見えません。低金利で調達した資金は、収益性の高い事業に投資するのが基本だからです。超低金利で債券を発行しておきながら、会社の資金でその債券を買う財務部長はいないでしょう。

 ところが、財政全体で見ると、せっかく、1.5%という超低金利の国債で資金調達をしておきながら、年金資金の3分の2を超低金利の国債で運用しています。そのために、年金資産運用という事業の目的であるかつては5.5%、今でも3.2%という収益目標を100兆円の部分では最初から達成できずに逸失利益になってしまうのです。

 かつて、年金資金が自動的に国に預けられていた財政投融資の時代と実態は変わっていないのです。国債の安定消化と超低金利の維持という、財務省の国債発行の都合が、国民の年金資産の運用への責任という受託者責任よりも優先されているのです。しかも、肝心の財政全体では、年金の赤字が財政赤字を拡大させているのです。

 財政全体へのガバナンスも働いていないのです。まさに縦割りと前例踏襲の弊害です。

 問題なのは、こうした資産配分の実態が覆い隠されていることです。

コメント27

「山崎養世の「東奔西走」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長