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「早期退職は大丈夫」との甘い誘いに気をつけよ

老後の蓄えを狙われて、米国“団塊世代”にトラブル続出

2008年7月14日(月)

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Mara Der Hovanesian (BusinessWeek誌、金融担当エディター)
2008年7月14日発行号カバーストーリー 「Ruined by 401(k) Predators

 スタン・モリルさんは、これまでの蓄えによって退職後は妻と2人で不自由なく生活を送れるものと信じていた。31年間工員として働いた米イーストマン・コダック(EK)で、同僚が太鼓判を押す無料の資産運用セミナーに出席していたからだ。

 モリルさんは、講師を務めた米モルガン・スタンレー(MS)のトップ証券営業マン、マイケル・J・カザコス氏の提案する“49歳で悠々自適の退職”という夢のようなプランに魅了された。その実現には、企業年金と401k(確定拠出型年金)プランを、カザコス氏が管理する課税繰り延べ口座に預け換えるだけでよい。その後は32万745ドルの口座元本には手をつけずに、毎年3万6000ドルは問題なく引き出すことができるという。生活費を賄うには十分すぎる額だ。

 「会社に残って働き続ける理由など何もないと思った」とモリルさんは述懐する。1998年、モリルさんはこのプランに申し込んだ。

 だが、最高で年14%という破格の投資利回りを想定したこのプランは、“夢物語”にすぎなかった。今やモリルさんの貯蓄残高はわずか5万7559ドル。ほかに目ぼしい蓄えもなく、生活費の捻出に苦労している。

「何もかも失ってしまった。自殺を考えたこともある」

 モリルさんはまだ59歳で社会保障給付の受給年齢に達していないため、時給9.5ドルで地元の学校の管理作業員として働き始めた。2007年4月には妻のキャシーさんと共に自宅を売却。ニューヨーク州ロチェスター郊外のビクトリア調の邸宅で、寝室が5部屋あり、2人の子供を育て上げた家だ。フロリダ州に持っていた、相続した多少の土地資産も売り払った。今住んでいるのは町外れにある小さな平屋建て。モリルさんは「何もかも失ってしまった。自殺を考えたこともある」と悲痛な胸の内を語る。

 全米7700万人のベビーブーム世代で、モリルさんのようなケースが増えつつある。“自分が主人公の世代”と呼ばれたこの世代は、用心しないと“悲劇の主人公の世代”になりかねない。

 業界団体の米投資信託協会によると、企業年金や401k口座から新規退職者が手にするカネは今後20年間で未曾有の17兆ドルにも上る。当然、金融サービス会社は資産運用手数料をがっぽり稼ごうと舌なめずりしながら、この大金を狙っている。

 問題は、モリルさんのように、人生の移行期に対する備えができていない退職者や退職予備軍が多いことだ。貯蓄や投資を行う“資産形成期”から、蓄えを取り崩す“年金生活期”へと移行する準備ができていないのだ。

 米生命保険大手メットライフ(MET)の付属シンクタンク、米熟年市場研究所が6月24日に発表した調査によると、退職予備軍の69%は退職後に毎年貯蓄口座から安心して引き出せる金額を過大に見積もっており、かなり大幅に見込み違いをしている人も多いという。また、49%は支出額を過小に見積もっている。研究機関の全米退職保障研究所が5月に行った調査でも、退職間近の世帯の3軒に1軒は老後に資金不足に陥る危険性があるという結果が出た。

 貪欲な証券営業マンはこうした認識と現実との大きな格差に目をつけた。“早期退職”“高い投資利回り”“多額の引き出しが可能”といった甘い約束をちらつかせて、個人退職年金を積み立てる投資家の年金口座契約獲得に成功する例が増えている。運用を任された口座の資金は手数料の高い投資に回され、危なげな投資に向けられることも多いのだ。

 「こうした手口は大きな問題になりつつある」と、米金融取引規制機構(FINRA)のメアリー・L・シャピロ代表は言う。FINRAは証券業界の民間自主規制機関で、最近、企業の福利厚生担当者向けに対して、社内セミナーを行う資金運用アドバイザーの見極め方に関する啓発活動を開始した。「かつてないほどの退職ラッシュの真っ只中にあり、この問題は深刻化してきている」(シャピロ氏)。

社内セミナーが甘いワナ、非現実的な利回りを示して勧誘

 このように監視の目が強まっているにもかかわらず、悪徳資金運用アドバイザーの暗躍の場はなぜか広がっているようだ。企業内で、まとまった数の従業員を勧誘する機会が増えているのだ。

 人事・福利厚生業務コンサルティング会社の米ヒューイット・アソシエーツ(HEW)によると、401k制度を導入している企業のうち、従業員の資金運用教育の場となる投資相談を外部に委託している企業の割合は、5年前の28%から40%に増加している。しかも、会社非公認の社内セミナーはこの数字に含まれていない。

 全米各州の証券監督当局の協議機関である北米証券監督者協会のカレン・タイラー会長は、「最も厄介なのは、職場で開催されるセミナーが暗に安全と思われがちな点だ」と指摘する。

 こうした社内セミナーは、不正の温床となる恐れがある。昨年、連邦・州の監督機関は“無料ランチセミナー”と称する相談会を開催する110の証券会社とその支社に調査に入った。その結果、こうしたセミナーの大半はほとんどあからさまな商品販促の場で、「13.3%の利回りを得る方法」や「10万ドルの元手で100万ドルを子や孫に残す秘策」といった非現実的な想定の投資勧誘を行っていることが判明した。FINRAの規定上、金融商品の営業担当者は特定利回りを保証したり、蓄えを残せると投資家に約束したりすることはできない。

 「金融商品の販売がセミナーの最終目的なのを投資家は肝に銘じておくべきだ」と、米証券取引委員会(SEC)投資家教育支援局で投資家広報部長を勤めるマーク・ストーリー氏は忠告する。SECの調査でもセミナーの1割は不正の疑いが濃厚で、現在捜査中だ。

コメント2件コメント/レビュー

いずこも同じ秋の夕暮れ、である。国民の投資意欲もリテラシーも高いはずのアメリカでこれなのだから、日本ではおして知るべし。別記事で、秋田県が高齢者への訪問販売を制限する条例を作ったので、銀行・金融業界を始めとして反対の動きがあるというものがあったが、こういう実例を見ると制限による良い効果はあると思う。(2008/07/15)

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いずこも同じ秋の夕暮れ、である。国民の投資意欲もリテラシーも高いはずのアメリカでこれなのだから、日本ではおして知るべし。別記事で、秋田県が高齢者への訪問販売を制限する条例を作ったので、銀行・金融業界を始めとして反対の動きがあるというものがあったが、こういう実例を見ると制限による良い効果はあると思う。(2008/07/15)

甘い儲け話は危険という世界共通の教訓ですね。団塊世代で投資運用先に悩んでいる最中だっただけに大変ためになる記事内容でした。(2008/07/14)

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