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トヨタから引き抜いた救世主、フォードを変える

元レクサス部門の幹部ファーリー氏の鮮やかな手腕

2008年8月11日(月)

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David Kiley (BusinessWeek誌、デトロイト支局上級記者)
2008年8月11日発行号カバーストーリー 「Ford: A Toyota Vet to the Rescue

 SUV(多目的スポーツ車)の実質的“生みの親”である企業が、消費者を説得して自社の乗用車を買わせることができるか――。米フォード・モーター(F)でマーケティングを担当するジム・ファーリー副社長にとって、これは今後のキャリアを左右する重大問題だ。

 フォードは品質面でトヨタ自動車(TM)を急追し、北米市場でのピックアップトラック販売台数では首位を堅持している。だが燃料価格の高騰で、フォードは、路上で車にはねられて死んだ動物のように、目を覆いたくなる惨状を呈している。

 フォード・ブランドを復活させられる人物は、ファーリー氏のほかにはいないかもしれない。同氏は米国トヨタ販売でマーケティング活動を主導したのち、10カ月前にフォードのアラン・ムラーリーCEO(最高経営責任者)に引き抜かれて移籍してきた。

「外部から来る人間なら因習を打破してくれると思った」

 とはいえ課題は山積している。7月24日に発表した4~6月期決算では、フォードの105年の歴史の中で四半期では過去最悪の87億ドルの赤字を計上。今後は燃費の悪いSUV生産の縮小を加速していく方針を明らかにした。黒字回復には、燃費効率に優れたセダンや小型車の販売強化が不可欠だが、今年は現時点で、乗用車部門の市場シェアは10.4%。1995年から半減している。

 組織の官僚主義を廃し、マーケティング部門の余剰人員を削減したファーリー氏は自らの取り組むべき課題をこう語る。「最も重要なのはフォードから離れていってしまった人にアピールすることではなく、フォードを自動車のブランドととらえていない人を取り込むことだ」。

 現在45歳のファーリー氏が成果を上げれば、現在62歳のムラーリーCEOの後継者となる可能性は十分ある、とフォード関係者は口を揃える。

 ムラーリー氏は2006年9月のCEO就任後すぐに、フォードのマーケティング活動が機能不全に陥っていると判断した。過去5年間に実施した5つの乗用車の販促戦略はいずれも失敗に終わっていたが、その原因はブランドメッセージに一貫性が欠けていたことにあった。

 当初ムラーリーCEOは方向性が定まらず、「500(ファイブハンドレッド)」に変更していた名称を馴染みのある「トーラス」に戻し、さらに「Have You Driven a Ford Lately?(最近フォード車に乗った?)」という以前の宣伝コピーを復活させる考えを示した。

 その後、新たなマーケティング部門責任者の人材探しに入った。「当時の状況とその後の方向性を考えて、外部から来る人間なら因習を打破してくれると思った」と、自身も米航空機大手ボーイング(BA)から移籍してきたムラーリーCEOは明かす。

トヨタの事業計画を頭に入れたまま、フォードの課題に挑戦

 たまたまビル・フォード会長が身内から推薦を受け、白羽の矢を立てたのがファーリー氏だった。ファーリー氏の確かな実績に加えて、フォードに親近感を抱いている点にも興味をそそられた。フォード会長が会って話をしたところ、ファーリー氏の祖父はフォード販売店の従業員で、1920年代にミシガン州グロスポイントで「リンカーン」を販売していたことが分かった。その孫であるファーリー氏は、外部の人間であっても生まれながらにしてフォードの血筋を備えているという意味で、理想的な人材に思えた。

 またファーリー氏は、保守的なトヨタがSUV志向の強い北米市場で若者向け新小型車ブランド「サイオン」を立ち上げる挑戦を主導した。ムラーリーCEOとファーリー氏は2007年夏、ロサンゼルス国際空港にある社用機格納庫の中で会談。ムラーリーCEOは世界的なマーケティング活動を統括する異例の権限と、世界市場でどのような車種を販売するかについて大きな発言権を与えることを約束した。「ジム(ファーリー氏)はこの仕事をするために生まれてきた人物のように思えた」とムラーリー氏は語る。

 当時ファーリー氏は「レクサス」部門の責任者に抜擢されたばかりで、また、リア夫人と女の赤ちゃんを養子に迎えるなど、公私とも順風満帆だった。このタイミングで火中の栗を拾うべきかどうか悩んだ。何より不安だったのは、ムラーリーCEOの大改革が果たして長続きするのかということだ。これは当然の懸念だ。

 フォードの元マーケティング担当幹部アン・ハンソン氏は、「ファーリー氏の型破りな手法を定着させるには、様々な改革が必要だ」と述べている。しかしハンソン氏は、「トヨタでリスクの少ない仕事をしているよりも、フォード再建の方が自尊心をくすぐられることは間違いない」とも語る。

 ファーリー氏は夫人に、「大仕事」がしたいと打ち明けた。陳腐な言葉に聞こえるのは承知のうえだ。「だが、トヨタの利益をあと120億ドル増やすのに貢献したところで大した功績にはならない」。それに報酬は、ほとんどの場合フォードの方がトヨタより上だ。

 2週間考え抜いたのち、ファーリー氏は申し出を承諾した。この決断は業界に衝撃を与えた。こうした事態を予想もしていなかったトヨタは、ファーリー氏に競業禁止契約に署名すらさせていなかった。少なくとも今後5年間のトヨタの事業計画を頭に入れたまま、ファーリー氏はフォードへと移籍した(ただし同氏はフォードに計画内容は明かさないとしている)。

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