• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

テロ発生の抑制に成功した北京オリンピック

会期中の警備を支えた裏方たちの実像

2008年9月5日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 2008年8月8日夜8時に華麗な開会式で幕を開けた北京オリンピックは、8月24日夜8時から行われた絢爛たる閉会式で幕を閉じ、その17日間にわたる全日程をつつがなく終了した。中国政府は北京オリンピック開催中のテロ発生を危惧して、全土で厳重な警戒態勢を敷き、万一の事態に備えたが、テロは発生しなかった。

 不幸にも開会式翌日の8月9日に北京の観光スポットである鼓楼で米国人夫妻が浙江省杭州市出身の暴漢に襲われた死傷事件が発生したが、これは生活苦に起因するもので、テロとは一線を画したものであり、中国政府はオリンピック期間中のテロ事件の発生を抑制することに成功したと言える。

 それでは中国政府はテロ抑制のためにどのような警戒態勢を取ったのか。この点について、中国メディアの報道を取りまとめると次のようになる。

 テロを抑制すべく配備されたのは、公安警察、武装警察、そしてこれに協力したのが人民解放軍であり、その総数は10万人。これに加えて情報提供や通訳などを行う「都市ボランティア」が40万人、交通整理など公益的活動を行う「社会ボランティア」が100万人の合計150万人が北京オリンピックの警備に当たった。

 「社会ボランティア」100万人には、中国共産党の末端組織である北京市内各地区の“居民委員会”(=住民委員会)の委員やタクシーの運転手が含まれ、不審人物や外国人と交流のある市民の監視を行った。

「真の大国」として飛躍するために

 何はともあれ北京オリンピック期間中の警備の主役は、北京市公安局と武装警察北京総隊であった。前者は北京市に所属する公安警察であるが、後者は行政上では中央政府公安部の管轄にあるが、実務面は中国共産党軍事委員会の指導下にあり、実態は共産党の治安部隊である。

 2001年7月13日、モスクワで開かれた第112回IOC(国際オリンピック委員会)総会で、北京は2008年の第29回夏季オリンピックの開催地と決定したが、中国政府は北京オリンピック開催決定の喜びと同時にオリンピック開催中のテロ発生を憂慮し始めた。1972年のミュンヘンオリンピック期間中の9月5日に発生したパレスチナ武装組織「黒い9月(ブラックセプテンバー)」が選手村でイスラエル選手とコーチの計11人を殺害したテロ事件は、オリンピック史上最悪の悲劇であったし、1996年のアトランタオリンピックでは、7月27日に「オリンピック百年公園」で爆破事件が発生し、死者1人、負傷者111人という大惨事をもたらした。

 北京オリンピック開催中に万一にもミュンヘンやアトランタのようなテロ事件が発生すれば、中国の国家としての体面が大きく傷つくばかりでなく、オリンピック開催により国威を発揚して「真の大国」として飛躍するという目標すらも台無しにされてしまう可能性が大きい。

 中国政府発表の統計によれば、1994年に1万件であった中国国内の集団争議事件(暴動や抗議行動)は、2003年に6万件、2004年に7万4000件、2005年には8万7000件に増大した。集団争議事件への参加者数も1994年の延べ73万人から2004年には延べ376万人へと大幅に増大した。集団争議事件の件数は2006年以降公表されていないが、その後も大きく増大していることは漏れ伝わってくる中国国内情報から考えて十分に想像できる。

 これら事件には、地域開発の名の下に農地を奪われた農民や住居を失った都市住民、役人の汚職や職権濫用および環境汚染などに対する一般大衆、乱収費(=むやみな費用徴収)に苦しむ農民などによる抗議行動などがその大部分を占めているが、これとは別にチベット族やウイグル族などの少数民族による民族としての尊厳と自立を求める抗議行動も含まれている。

 2001年7月の北京オリンピック開催決定時点で、中国政府がこれら国内の不穏な情勢をどれだけ真剣に捉えていたかは定かではないが、海外から潜入するテロリストによるテロ行動だけではなく、国内の不満分子によるテロ行動も抑制の対象として考えていたことは想像に難くない。

コメント0

「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」のバックナンバー

一覧

「テロ発生の抑制に成功した北京オリンピック」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万〜数百万円で売られている事例もある。

名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官