• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

日本の宰相には“マルチセンス”が欠けている

  • 吉田鈴香

バックナンバー

2008年9月5日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 福田康夫首相の突然の辞任は、昨年の同時期における安倍晋三前首相の辞任と同じく、あっけなく“ぺしゃんこ”になった内閣という印象を受ける。世界各地では、紛争にまみれ、政治基盤も何もない脆弱な国々が政権維持を図ろうと必死になっているというのに、本当に“こらえ性”がないと感じてしまう。

 筆者は東西冷戦末期の1989年から国際協力の取材を始め、多くの発展途上国と紛争地域を取材してきた。取材の際は、その国の背景にある政治課題や経済的社会的問題を分析し、問題の核心を突き止めようと多くの人の声に耳を傾けてきた。そして、こうした“脆弱国”が、平和な国へと生まれ変わるための復興策、日本としての関わりも考えている。

 そんな中、福田首相の政治姿勢の特徴を思い起こすと、とにかく「マルチ」という概念、“マルチセンス”がなかったことだ。「多国籍」「多分野」の概念である。1つの問題を解決するにあたり、相手の国とだけ相対して交渉していて、ほかの国々を国際的に巻き込んでいくという発想がなかった。

他国を巻き込むような交渉力がほしかった

 例えば北朝鮮問題でも緩急がなく、“アメとムチ”のような臨機応変さが感じられない戦略を進めてきたのは、まぎれもなく福田首相である。6カ国協議はともかく、本当に北朝鮮との膠着した状態を打破したいなら、国際協調に持ち込むべきだった。制裁解除をするなら国際協調支援に発展させて、「ここで人権を尊重する国として、核放棄と拉致問題の本格解決を進めれば、日本1カ国ではなくもっと多くの国際支援が手に入る」と、「日本だけではなくEU(欧州共同体)や米国が提供できる“アメ”」を見せることで、北朝鮮の気持ちを動かすことができたであろう。

 制裁という点においても、もっと多くの民主主義国を巻き込んで“ムチ”(圧力)とすることもできた。特にイスラエル、英国、フランスの同調を誘わずに終わったこと、シリアへの圧力を北朝鮮とイランへの圧力と並んで国際協調していれば、ずいぶんと日本の名前が国際舞台で踊ったのではなかろうか。

 これらは、民主主義に逆行する米国のブッシュ大統領の言に倣えば「ならず者国家」であるから、国際協調を仕掛けていれば実現可能だっただろう。結果、世界の各国が北朝鮮に対してバラバラに圧力と投資、貿易、援助を行う状態に入ることとなった。

 福田首相が4~5月の外遊をロシアだけにとどめ、当初予定にあったフランス、英国を歴訪しなかったのは、「疲れたから」ではなく、「何をやればいいのか見当がつかなかった」からではないか、と私は見ている。名だたる外国の元首と会っても、何を協議すればいいのか思いつかない。その前にまず、日本をどんな国にすればいいのかというビジョンがなかった。「前首相に頼まれて、やむを得ずに首相になっただけ」とも受け取れる辞任に際しての言い訳が、“マルチセンス”どころか、ビジョンなきまま国家を動かしてきた1年間を表している。

 「マルチ」を実行するには、概念の提示が肝心である。「人権」「民主主義」「住民の意思」「発展する権利」など、どの国も反論できないような人類共通の概念である。国際社会は同調せざるを得なくなり、国際協調を築きやすくなる。

 相対の交渉では具体的な事柄をめぐってのやり取りに終始しがちだが、概念を持ち出すことで、北朝鮮のようなマルチ概念が欠如している国には反論の余地が減り、日本には同調する国家が増え、攻守どちらも有利になる。ここを押さえておけば、国際協調が運びやすいのである。

コメント9

「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

もっと事業を効率化して、料金を下げて、消費者に貢献しないと業界はだめになってしまう。

和田 眞治 日本瓦斯(ニチガス)社長