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社員をモノ同然に数値化する時

統制社会のにおいが漂う社員管理方法

2008年9月8日(月)

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Stephen Baker (BusinessWeek誌シニアライター、ニューヨーク)
2008年9月8日発行号カバーストーリー 「Book Excerpt: The Numerati by Stephen Baker

 BusinessWeek誌は2006年1月23日号のカバーストーリー「Math Will Rock Your World(仮訳「数学が世界を揺るがす」)で「数値情報化」という新時代の到来について取り上げた。新たなネットワークの登場により、誰もが自らのプライバシー情報を膨大なデータベースに向けて無意識に発信するようになってきたという内容だ。

 クレジットカードでの買い物や携帯電話の使用、コンピューター画面上でのマウスのクリックなどの行動は、1件1件がすべてデジタル情報として蓄積される。そうした情報を解読する手段や技術を手にした者は、行動パターンや嗜好、健康状態、買い物の習慣などを読み取り、未来の行動を予測できるようになるかもしれない。そうなればビジネスや社会は一変するだろう、というストーリーだった。

 この記事の話題をさらに掘り下げたのが『The Numerati(仮訳「ニューメラティ」)』という書籍。筆者であるBusinessWeek誌のシニアライター、スティーブン・ベーカーは、個人データを分析・解読し、患者や買い物客、有権者、テロリスト予備軍、あるいは恋人までをも見分ける数学の天才を紹介している。

 キーボード入力やマウスクリック、電子メールの履歴情報が日々蓄えられるため調査が可能な職場は、ニューメラティ(起業家的数学者)にとって最も期待できる“研究室”である。書籍の中の「The Worker(労働者)」の章では、ベーカーが米IBM(IBM)を訪れ、同社の数学者たちが取り組んでいる「従業員の行動に関する予測モデルの構築」を紹介している。以下はその抜粋である。

「上司があなたの能力を最終的にきちんと認識する」

 晩春のある朝、私はニューヨーク州ウエストチェスター郡の森の中、IBMのトーマス・J・ワトソン研究所の本部へ向けて車を走らせていた。やがて、丘の上に要塞のような建物が姿を現した。長い曲線状のガラス張りの外壁に、空に浮かぶ綿菓子のような雲が映っている。

 私はここでシリア生まれの数学者で、IBMの技術コンサルタント5万人もの数値モデルを統合するチームの責任者であるサメール・タクリティ氏(40歳)と会うことになっていた。タクリティ氏は、ここで各コンサルタントのあらゆる技能に関する情報を集積し、最も効果的な人員配置の方法を数学的に割り出すための取り組みを統括している。

 私が同研究所を訪れたのは、タクリティ氏のチームがどのようにIBMの従業員を数値化しているかを探るためだ。この数値化プロジェクトがうまくいけば、チームはこのモデルを他社にも適用し、今は管理業務と呼んでいる作業の大部分を自動化することを目指しているという。

 タクリティ氏が小ぢんまりとしたオフィスのドアを開けた。細身で大きく物憂げな目をした同氏は、ラガーシャツの裾をジーンズの中にきっちりしまい込んでいる。

 私はタクリティ氏に、「モデル化される側は、あまりいい気はしない。上司が私の行動をすべて把握し、予測しているとしたら、昇給の話を持ち出す前から電子メールで一言『昇給はダメ』と突っぱねられるのではないかという気がする」と、意見を述べた。

 するとタクリティ氏はプラス面を強調し、こう反論した。「上司があなたの能力を最終的にきちんと認識する、それも自分でも気づいていないような能力を認識する可能性もある。そして、自分の力をいかんなく発揮できる職務が与えられるかもしれない」。

労働力を交換可能な“モノ”にする

 とはいえ、タクリティ氏も実は神経を使っていると認めた。同氏の任務は、複雑に絡み合う知的労働者の高度な頭脳労働力を、配送業務の最適化やメインフレーム(大型汎用コンピューター)の寿命予測・生産予測の際に用いるような公式やアルゴリズムに変換することだ。

 時間とともに、同氏のチームでは、各従業員の気まぐれな行動や毎日の通勤だけでなく、仲間、場合によっては対立相手をも網羅した詳細なモデルを構築したいと考えるようになった。そのうち、各従業員が牛肉と豚肉のどちらを選ぶか、宗教上の安息日をどの程度厳守するか、命令に従わせるにはアメとムチのどちらが効果的かといった情報まで含むようになるかもしれない。北京やメキシコシティーなどの汚染された大気で息苦しさを感じる従業員もいれば、平気な者もいるだろう。

 場合によっては、これほどの細かい情報もそのほかの数え切れない情報とともに、モデルに盛り込まれることになるかもしれない。詳細な情報を十分に織り交ぜることで、実際の人の行動をそのまま数値化したようなモデルを構築するためである。そうすれば、監督者はそのモデルをうまく利用して、最も効率的な従業員の組み合わせを求めることができる。

 タクリティ氏のチームは一から研究を開始したわけではない。IBMは長年にわたり、あらゆる種類の複雑なシステムの数値化を手がけてきた、この分野の先端企業である。第2次大戦直後から、「オペレーションズ・リサーチ」(OR、企業経営や軍事作戦など複雑なシステムの実行に伴う問題の分析)と呼ばれる新しい科学的手法を採用し、同社の生産サプライチェーンの数値モデルを構築している。

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