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ウォール街の混迷の元凶は何か

「潮が引くまでは、誰が裸で泳いでいるかは分からない」

2008年9月29日(月)

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Paul Barrett (BusinessWeek誌、アシスタントマネジングエディター)
2008年9月29日発行号カバーストーリー 「Wall Street Staggers

 金融業界の人々は、現在の市場の惨状を、せめてもの気休めに自然災害に例え、口々に「数々の不可抗力が重なって“最悪の大嵐”になった」とか、「不測の事態が“100年に1度の大洪水”をもたらした」などと言う。

 だが今回の金融危機を予防はできないまでも、せめて予測するにはどうすべきだったのか。

 著名投資家のウォーレン・E・バフェット氏はずばり核心を突く。何年も前に、企業の無節操な借り入れについて同氏はこう語った(と言われる)。「潮が引くまでは、誰が裸で泳いでいるかは分からない」。

 潮が引き始めると、とても美しいとは言えない事態の全容が見え始めた。汚れきった海から裸同然で現れた者たちと共に、今回の市場暴落をもたらした愚かな考えや無謀な判断があらわになったのだ。衝撃的ではあるが、実はこれまで何度も目にした光景だ。

 それでも我々は、ハリケーン襲来の危険が高い地帯に住む頑固な住民のように前回の大嵐を忘れ、もう2度とあんな災害は来ないと自分に言い聞かせようとする。なぜこのような過ちから自明の教訓を学ぼうとしないのだろうか。その答えは、いつの時代にもある、金儲けなどわけはないという思い上がりと、ここ30年間に金融界に蔓延した一連の愚かな信念にある。

 そうした信念の1つに、キリスト教の伝道集会さながらの熱気を込めてウォール街で説かれるやみくもな規制緩和肯定の思想がある。この考え方の不可解な点は、信奉者の多くが自由市場を信じる一方で、失敗すれば政府が助けてくれると決めてかかっていることだ。

 保険業界最大手の米アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、政府系住宅金融機関の米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ、FNM)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック、FRE)に対する異例の公的資金注入による救済や、その前の米財務省主導の米銀大手JPモルガン・チェース(JPM)による米証券大手ベアー・スターンズの買収がいい例だ。まるで、政府の干渉を拒否してメキシコ湾岸沿いに家を建て、それでいて連邦政府保証の洪水保険を求める家主のようだ。

 今では周知の“定説”も今回の危機を招いた一因だ。好況時には、借入金でいくらでもレバレッジを利かせられる(マイケル・ミルケン氏の例を覚えているだろうか)、デリバティブ(金融派生商品)はほとんど誰も理解していないにもかかわらず取り締まる必要はない(LTCMの例はもうお忘れだろうか)、計量分析の天才が考案した極端なリスクを消し去る理論モデルがあるので問題ない(エンロンの例はご記憶ではないだろうか)、といった考え方が横行した。

 「金融機関とブッシュ政権、ヘンリー・ポールソン米財務長官、ベン・バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は、今回も、現在の危機が洪水やハリケーンのような天災だと人々に思わせようとしている」。クリントン政権時代、米商品先物取引委員会(CFTC)の高官だったマイケル・グリーンバーガー氏はそう語る。1990年代後期、同氏が提唱した投資銀行への規制強化は、政敵の共和党議員だけでなく、同じ民主党の議員からも批判された。

 ほとんどの金融危機は天災のように制御不能なものではなく、「予測可能な事態だ」と同氏は言う。言うまでもなく、予測可能な事態は健全なルールを厳格に実施していればまず確実に防げる。

金融機関はほかの業種とは「別の生き物」

 アルフレッド・E・カーン氏は現在の金融危機を、遠い過去にさかのぼって眺めている。同氏は1970年代後期、カーター政権の民間航空委員会(CAB)委員長として、航路と航空運賃の規制を緩和。(良かれ悪しかれ)航空業界を再編し、長期にわたる経済の規制緩和の動きを促進した。米コーネル大学教授(経済学)の職を退任し、現在は非常勤のコンサルタントを務める同氏の鋭い洞察力は91歳の今も健在だ。

 カーン氏は、自由市場主義の考え方が主流になるやいなや、規制緩和を求める動きが一挙に高まったと当時を振り返る。金融機関も規制緩和を要求した。だが、金融機関はカーター政権が規制緩和した航空会社や運送会社とは「別の生き物」だと同氏は言う。「金融機関はマクロ経済に直接影響力を持つ存在で、物やサービスを提供する業界の規制緩和とは全く話が違う。私は金融業界のいかなる規制緩和も支持したことは一切ない」。

 レーガン政権時代になると、カーン氏が慎重に推し進めた業界ごとの規制緩和は、シカゴ学派(米シカゴ大学を中心とする市場主義信奉の新古典派経済学思想)が提唱する全産業一律的な規制緩和に取って代わられた。

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牛島 信 弁護士