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役人は早々と危機を回避、泣きをみるのはいつも庶民

湖南省吉首市の“非合法資金集め事件”の実態

2008年10月10日(金)

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 「残暑」を中国語で“秋老虎”と言う。“老虎”は「トラ(虎)」を意味するので、“秋老虎”を直訳すると「秋のトラ」という意味になる。「秋のトラ」がどうして残暑を指すのか、その語源は分からないが、秋だというのにトラと同様に恐ろしいほどの暑さということなのかもしれない。湖南省西北部に位置する吉首市は、湘西土家族苗族自治州(以下「湘西自治州」)の首府で、人口約30万人の小都市である。2008年8月24日に北京オリンピックが成功裏にその幕を閉じてから10日目の9月3日、吉首市の中心部は“秋老虎”を凌(しの)ぐほどに熱い人いきれに包まれていた。

「出資者には5年以降に出資金を返還するが、今後金利は支払わない」

 9月3日、吉首市の不動産開発企業である“福大房地産開発有限公司”(以下“福大”)が出資者たちに約束していた金利の支払いができないことが判明し、「出資者には5年以降に出資金を返還するが、今後金利は支払わない」との噂が流れた。これを聞いた出資者たちは「5年後に福大がどうなっているか分かるものか」とばかり、福大本社前に続々と詰めかけて抗議を繰り広げ、責任者との面会を要求した。

 しかし、福大の最高責任者は不在で役員が対応したのみで埒が明かず、人々は自治州政府に陳情すべく、そこからさほど遠くない州政府へ大挙して移動を始めた。吉首市民の多くは福大を含めた多数の不動産開発企業に出資していることから、これを見た市民が次々と陳情の列に加わり、その数は2000人以上にまで膨れ上がった。吉首市の中心部は、当日夜遅くまで陳情者とそれを遠巻きにする市民も含めた人の波で溢れた。

 翌4日、抗議活動はさらに拡大し、数万人が市中心部に集結して出資金の返還と金利の支払いを要求する騒ぎに発展した。出資者たちは朝9時頃、州政府ビルと福大本社を結ぶ武陵西路にある歩道橋に集合して交通を遮断したうえで、行進しながら西環路を進んで吉首駅へ向かった。吉首駅に到着した彼らは、10時前後に駅構内へ突入して占拠するとともに、懐化から北京へ向かう列車を駅で立往生させた。人々は列車の先頭に赤地に黒い文字で“欠債還銭”(=借金返せ)と大書した垂れ幕を掛けて気勢を上げた。

 それから30分後に吉首市の地元の武装警察と公安警察が駅の秩序を回復すべく投入されたが、多勢に無勢で群衆に押し返された。午後4時頃、周辺の張家界、懐化、長沙から動員された武装警察、特殊警察部隊が車数十台に分乗して吉首駅へ到着した。機関銃を携行した彼らは盾と防護柵によって駅構内から群衆の強制排除を開始し、5時20分には群衆の完全排除に成功、吉首駅は秩序を回復し、立往生していた列車は北京へ向けて出発した。

今回の事件の発端は2004年

 今回の事件の発端は2004年に遡る。2004年に吉首市政府は、“福大”、“榮昌”、“三館”、“偉業”、“個協”、“機電”など三十数社の企業および個人に対して、月利(=1カ月当たりの利息)3%、5%、8%、10%という形で銀行よりも高い利息を餌にした民間からの資金集めを許可するとともに支援したのである。月利8%として考えても年利は96%であり、手持ち資金を1年間投資すれば元利合計で倍になる。

 ただし、吉首市および湘西地区にある民間融資企業では高利息は当たり前のこととなっており、上述した利息はあながち高いと言えないという。香港の週刊誌「亜洲週刊」の9月21日号によれば、中国人民銀行湘西支店が2008年に行った調査では、湘西地区には民間融資に参入している企業は100社以上、こうした非合法な融資規模は70億元(約1050億円)以上にも上り、これら融資企業の月利は、1995年には1.5%程度だったものが、3%、5%と上昇を続け、2008年8月には8%、最高は12%にも達していたという。

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「役人は早々と危機を回避、泣きをみるのはいつも庶民」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師