Olga Kharif (BusinessWeek.com記者、オレゴン州ポートランド)
米国時間2008年10月1日更新 「The iPhone Apps Sweepstakes」
当初、ソフトウエア開発者のジョン・トレーナー氏は夢の引退生活を思い描いた。米アップル(APPL、本社:カリフォルニア州クパチーノ)の「iPhone(アイフォーン)」や「iPod Touch(アイポッドタッチ)」の端末上で遊べるゲームを開発し、売り上げが急速に伸びていたのだ。iPhoneユーザーは次々に7ドル99セントを支払い、トレーナー氏開発のゲーム「Bullfrog Touch(ブルフロッグ・タッチ)」をダウンロードした。迫り来る虫の群れを、沼地に棲むブルフロッグ(ウシガエル)が食べていくゲームだ。
だが2週間後、トレーナー氏は厳しい現実を目の当たりにすることになった。「ユーザーは別のゲームへ移っていった」のだ。面白そうな新しいゲームソフトやツール、娯楽アプリケーションが大量にアップルのソフトウエアダウンロードサービス「App Store(アップ・ストア)」に押し寄せ、古くなったアプリは次第に追いやられていった。
「アップ・ストアには次々に新しいアプリが加わり、膨大に増えたリストの最後まであさって見る人などいなくなった」とトレーナー氏は言う。今年7月10日のアップ・ストア開設時点で800本だったダウンロード可能なアプリは、今や4000本にまで急増している。
トレーナー氏はアプリの価格を3ドル下げてみたが、もはや再び人気に火がつくことはなかった。この時点でトレーナー氏は、「生計を立てられるだけの儲けは得られない」と見切りをつけた。しかし、20ドルで販売するマックパソコン用ソフトウエアライセンス管理ソフトにはまだ望みを懸けていると語る。
最近のシリコンバレーでは、パズルゲーム「Trism(トリズム)」の開発元が25万ドル(約2600万円)を稼ぐなど一夜にして大金を手中にしたという話に触発され、多数のプログラマーが競ってiPhone向けアプリケーションを開発し、アップ・ストアを通じた販売で一攫千金を狙うようになっている。
しかし、参入が相次ぎ競争が激化すると、アプリの価格は急速に低下。トレーナー氏のような開発者の多くは、以前のような売り上げや利用者の拡大は期待できなくなってきている。「確かに、一気に大金を手にした人もいた」と、ソフト開発者の1人、エリカ・サドゥン氏は言う。「宝くじのようなものね。アップ・ストアで金鉱を掘り当てる確率は、宝くじよりいくらかましな程度かしら」と笑いながら語る。
期待を大きく上回るアップ・ストアの売り上げ
開発者がiPhone向けアプリでの稼ぎを期待するのには訳がある。今年6月、米証券会社パイパー・ジャフレーのアナリスト、ジーン・マンスター氏は、iPhoneやiPod Touchのユーザーの91%が年間10ドルのアプリケーションを購入すれば、2009年にはアップ・ストアは12億ドル(約1600億円)もの収益を生み出すことになるとの予測を出したのだ。アップ・ストアの開始からまだ2カ月少々の時点で、既に1日に100万ドルの売り上げを達成しており、年間換算で3億6500万ドル(380億円)の売り上げが期待できることになる。
米調査コンサルティング会社エンビジョニアリング・グループのコンサルティング部長、リチャード・ドアティー氏は、iPhoneが飛ぶように売れていることを考えると、マンスター氏の予測でも控え目すぎる数字かもしれないと言う。「今秋中にアップ・ストアの売上高が、過去のあらゆる携帯向けアプリ販売の総売り上げを上回ることは確実だ」
さらに今月末に米グーグル(GOOG)がオンライン・アプリケーション・ストア「アンドロイド・マーケット」を開設するほか、米マイクロソフト(MSFT)、ドイツテレコム(DT)傘下の米携帯電話サービス部門TモバイルUSAなども新たなオンライン・アプリケーション・ストアの開設に向けて動いており(BuseinssWeek.comの記事を参照:2008年9月5日「App Stores: Microsoft, Google Follow Apple」)、携帯電話向けソフトウエア市場はさらに拡大する様相を見せている。米調査会社IDCのアナリスト、シブ・バクシ氏は、「今はまだほんの手始めに過ぎない。携帯向けアプリケーション市場には膨大な可能性があり、巨大市場になると考えている」と語る。
3割の手数料を徴収するアップル
確かにアップルにとっては巨大市場になるかもしれない。同社はアップ・ストアでの売り上げの30%を手数料として徴収する。しかし開発者側は、大人気を博したソフトでも、一気に売り上げが伸びた後、ほかのウェブアプリが登場すると数週間のうちに売り上げが急落するさまを目の当たりにしている。
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