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金利政策で出遅れた日本

タイミングを逃したのは日銀の失態か

  • 吉田鈴香

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2008年10月21日(火)

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 10月に入って日経平均が1万円を割った後、乱高下を繰り返している。米国のダウ株価平均も4年ぶりに1万ドルを割り、次に円高がやってきた。収益の予想を下方修正する企業も相次いでいる。株価下落と円高を貫く金利に、筆者は“攘夷”の心を感じるのである。

ドル金利と一定の差を維持してこそ為替安定

 通常、金利を上げると円高に振れ、下げると円安になる。今回の金融危機で、日銀は金利を一切いじっていない。世界の株価が下落した10月8日、欧州と米国を含む10の中央銀行が協調利下げをした時も、日銀は動かなかった。また中川昭一財務・金融担当大臣はG7財務相・中央銀行総裁会議を終えた後もまだ、具体的な市場安定化策を発表しなかった。日本政府は円高を希望したのだろうか。
 
 現在の円高傾向の原因として、次の3つが考えられる。
 1)円キャリートレードを中止して円を戻しているから
 2)「相対的に金融システムの健全さに支えられた円の需要が高まっている」という印象があるから
 3)金利が他の国のようには下がらなかったから

 1)は正しいだろう。
 
 2)の、日本の金融システムが健全かどうかは疑問があるので、別の機会に書くが、“ミスター円”を標榜する榊原英資氏など、金融専門家が繰り返し「日本経済はバブル後に健全な体質になっているので、大丈夫。だから円は買われるんです」とテレビの画面で訴えている。どこに論拠があるのか、不明である。

 さて、問題は3)である。金利の設定は為替相場に直接響くため、各国とも真っ先に手をつける。

 金利を上げるか下げるかは、その国の経済状態による。上げる場合は基本的に経済が好調な局面で、スピードが早過ぎる成長(=インフレ現象が顕著になる)を抑制して、民間経済全体の浮揚(=企業収益だけでなく個人の所得水準が上がっていく)のスピードとのマッチングを図ることに主眼が置かれる。資金流動性の市場への供給を絞って、過剰な成長を抑える時に使う対策だ。

 一方で金利を下げるのは、景気後退が顕著な時に、流動性を潤沢にして設備投資や経済の活性化を刺激する時に行う。この金融危機(どころか金融恐慌)の到来にあたって日本が出遅れたのには、2つ理由があると筆者は考えている。

 1つは、日本ではサブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題の根深さについて、理解できていなかったこと。もう1つは、日銀特有の組織の理論が市場原理を超えて優勢だったことだ。

 前者については、日本の金融の舵取りだけを考え、国際市場の深い考察ができなかったために、サブプライム証券化商品の「ツケ」が保険会社にまで及ぶというような、Wall Streetの“Deal”(ごまかしの意味を含んだ取引)についての理解ができていなかった。

 世界的に懸念される、「金融システム全体の流動性不安」が心理的に波及し、世界中の株価を押し下げることが明白な段階であっても、である。だからこそ欧米の中央銀行は利下げに踏み切っているのだが。よその国が利下げをしたからといって「おつき合いでの利下げ」をする必要もないものの、流動性不安の問題をきちんと理解していれば、即時対応できたはずだと思う。しかし、白川方明日銀総裁は動かなかった。ここで、後者の理由(日銀特有の組織の理論)が浮かんでくる。

 以前から言われているが日銀には、利下げは「負け」、利上げは「勝ち」という世界観が根強く染み込んでいる。外国に虚勢を張り、身内の組織維持を真っ先に考えるという2つの意味で、「日銀帝国陸軍論」とでも言いたくなる。白川総裁はこの「帝国陸軍」きってのエリートだ。利下げや金融緩和は、日銀マン(日銀帝国陸軍)として着手したくない。世界中で日銀だけが協調しない状況にあるのも、なにやら「帝国陸軍は孤高を貫くべし!」「苦しくても耐えろ!」と叫ぶ直情軍人を思わせる。

コメント10件コメント/レビュー

「日銀は協調利下げしなかった」という判断があまりにも多い。しかし「漸く他の中央銀行が金融緩和で日銀に協調した」と考えるのが自然ではないか。そもそも金利は上げたり下げたりすることに意味があるのではなく、その水準にこそ意味がある。また、日銀は流動性供給と言う点では、米ドル供給を含めて協調路線を明確にしている。「日銀は利下げに協調しなかった」という判断は全く理解に苦しむ。また、流動性の供給と政策金利の調整の政策的、理論的意味の違いを理解しないまま、金融政策を論じる傾向の多さにも寂しさを感じます。(ちなみに私は日銀とは何の関係もありません。)(2008/10/25)

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いただいたコメント

「日銀は協調利下げしなかった」という判断があまりにも多い。しかし「漸く他の中央銀行が金融緩和で日銀に協調した」と考えるのが自然ではないか。そもそも金利は上げたり下げたりすることに意味があるのではなく、その水準にこそ意味がある。また、日銀は流動性供給と言う点では、米ドル供給を含めて協調路線を明確にしている。「日銀は利下げに協調しなかった」という判断は全く理解に苦しむ。また、流動性の供給と政策金利の調整の政策的、理論的意味の違いを理解しないまま、金融政策を論じる傾向の多さにも寂しさを感じます。(ちなみに私は日銀とは何の関係もありません。)(2008/10/25)

詳細には踏み込まないことにいたしますが、本記事には反対です。海外と日本では体勢自体が全く違う為、海外の事例を日本の内容に含めることはほとんど意味がありません。日本は経済状況がヨーロッパやアメリカと比べ全く上位にたっている為、日銀の判断は正しいと思います。(2008/10/23)

基本的に筆者の意見に賛成する。問題の根本は、政策目標を設定せず、一方的に独立性を与えてしまった日銀法にあると思われる。アメリカなら、FRB 議長は、議会に対し、政策目標と結果について証言が求められるのは常識であろう。ひとつだけ同意できない点は、財務省と日銀の政策が一致しているかのような認識である。財政均衡主義の財務省としては、財政出動圧力を減らすため、金融緩和と円安を志向していることは、ほぼ明らかなのではないか。(組織として日銀ほど統一されているとは思えないので、榊原氏のように例外的な意見のOBもいるようだが)小泉政権下の金融緩和が転換した最大の理由は、財務省の影響よりも、日銀総裁指名における、民主党による混乱である。緩和的政策をとっていたことを理由に政策委員の就任を拒否するという発言を行った民主党幹部は、もはや、反知性主義としか言いようが無い。専門性の高い金融政策を素人の思いつきで否定できるのであれば、日銀には専門家もいらないし、独立性も必要ないのだから。(ちなみにこの人は弁護士資格を保有しているにもかかわらず、C型肝炎訴訟での高裁の和解案をまったく理解せず、一方的に厚生省の責任があるかの発言も行っていたようである)(2008/10/22)

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