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(1)300日戦争~金融恐慌が後押しした劇的な勝利

2008年11月5日(水)

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  11月4日、米イリノイ州シカゴ、午後10時(シカゴ時間、日本時間午後1時)。民主党大統領候補、バラク.オバマが第44代アメリカ合衆国大統領に決まった。当選を決めた夜、イリノイ州シカゴの中心グラントパークには10万人の支持者が集まり、オバマが登場すると歓喜の声をあげ、抱き合い、涙する姿があった。

 ついに、初の黒人大統領の誕生――。

 思い返せば1年前、オバマの勝利を予想する向きは少なかった。歴史の歯車が動き始めたのは、これから勝利宣言するイリノイ州の隣、アイオワ州だった。

 今年1月、この地でオバマは劇的な勝利を飾った。わずか300日前のことである。

 そして、史上まれに見る激戦がスタートした。全米を巻き込んだ選挙戦は、各地で多くのドラマを生み出し、そして再び中西部のシカゴで幕を閉じようとしている。

 世界が注目した「300日戦争」。これから、彼の軌跡をたどっていく。そこに、オバマ勝利の真実が隠されている。米国の未来、世界の未来がそこから見えてくるかも知れない。

=敬称略(ニューヨーク 金田 信一郎、木瀬 武、加藤 靖子)

****

【第1幕 女王の誤算】


2007年末アイオワの討論会会場周辺

 2008年1月3日、アイオワ州。

 日中も気温が氷点下のこの地は、これといった特徴もない穀倉地帯と言える。しかし、4年に1度の大統領選は、決まってこの地からスタートする。

 寒さを避けるように、片手をポケットに突っ込んで、タクシーに乗り込む。行き先を告げると、20代の白人の運転手は、選挙取材だと知ってこう話し始めた。

「恥ずかしい話だけど、4年前はブッシュに投票してさ。でも、もうあんなヤツはうんざりだ。なんでウォール街だけが儲かるんだよ」

 毎年冬の季節、米国では投資銀行の巨額のボーナスが話題に上る。新入社員で1000万円を超える、とも言われる金額は、庶民感覚とはかけ離れている。一方で、昨年末からの不動産価格の下落で、景気は明らかに下降曲線を描き始めていた。

 男は体をひねってこちらを向き、眉をひそめた。

「オレは医療保険にも入れねえ。この違いは何なんだよ。経済がおかしいんだ」

 その時、大きなうねりが米国を襲おうとしていることを感じた。

 数カ月前、誰もが民主党はヒラリー・クリントンが予備選挙を圧勝して、大統領候補に選ばれると考えていた。事実、アイオワ州でも、ヒラリーの支持率はオバマを20ポイントもリードしていた。

 ところが、12月中旬にアイオワで取材を始めると、ヒラリーの「楽勝ムード」が変化していることに気付いた。

 オバマの選対本部は、ここに照準を合わせて活動してきた。「アイオワを取れば、一気に流れを作れる」。オバマは選挙前の1年間、アイオワ州で200回近い集会をこなした。そして、ボランティアを中心に、きめ細かく戸別訪問を繰り返す。学生など選挙に足を運ばない若年層に向けて、「選挙に参加しよう」と呼びかけ続けた。

 12月中旬、ちょうど取材に入った頃、アイオワでにわかに効果が現れてきた。若者を中心に、オバマを推す声が広まっていたのだ。

「この難局を乗り切るには、どう考えたってオバマしかいないよ」

 ジーパンにパーカーという格好の30代白人男性は、そう言い切った。インターネット時代、若者たちの支持はあっという間に通信回線を通して広まっていく。その流れは、勢いが衰えなかった。

「クリントンとの支持率の差が数ポイントに縮まっている」
 この頃、主要メディアが、驚きをもってそう報じ始めた。


2007年末アイオワの討論会会場周辺。この頃は、ヒラリーの看板がオバマのそれを圧倒していた

 ヒラリー陣営は、組織と資金の力で逃げ切りを図った。討論会場だった建物の周囲や駐車場に、ぎっしりと「Hillary」の看板を立てた。それを目の当たりにしたオバマ支援者は、ヒラリーの圧倒的な知名度と組織力を思い知らされることになる。

 そして、決戦の日。開票が始まってオバマリードが伝えられても、オバマの支援者たちは、勝利を確信できない。だが、時間が経つにつれて驚きの声が広がっていく。そして、「当選確実」が出る。その時、演説会場は、興奮が収まらない支援者たちで溢れていた。

 そこに、青いネクタイをしたオバマが登場する。会場は騒然となり、拍手と歓声が鳴り止まない。聴衆に手を振って静めようとするが、数分ほど経過してしまう。まだ騒然とする聴衆に向けて、オバマは静かに切り出した。


車に乗り込むオバマ

「こんな日は絶対に来ないと言われていた。彼らはこう言った。目標があまりにも高すぎる、と。だが、1月のこの夜、この瞬間、あり得ないと言われたことを、君たちはやってのけたんだ」

 再び、割れんばかりの歓声が上がった。
 勝てるはずがない――。そう思われていた。

 1990年代、ヒラリーは、大統領だったビル・クリントンの「ファースト・レディー」として、早くもその政治手腕が注目された。その後、上院議員として政治経験を積み、「ブッシュ後」の最有力候補となった。

 だが、一夜にして戦況は変わった。
 最終的に、オバマはヒラリーに得票率で9ポイントという大差をつけて勝った。

 全米が注目する中、オバマは名演説を打った。
 企業優遇税制打ち切り、中間層の減税、イラク撤退、医療制度改革…。彼の基本政策はすべて簡潔に述べられていた。

 演説の後半、オバマの話はハイライトを迎える。

「希望(HOPE)――。“希望”が私を、今日、この場に立たせている。ケニア出身の父と、カンザス出身の母の間に生まれた私のストーリーは、アメリカ合衆国でしか起こりえなかった」

 あらゆる人々に希望を与える国家、アメリカ。それがオバマの存在の原点だった。アフリカ出身の優秀な学生だった父が、米国に渡り、その後ハーバード大学に学んだ。白人の母との出会いがあり、オバマが生を受けた。

 すべては「希望」の大地から始まった。だが、いつしか米国から、その二文字が消えてしまった。

 「米国の希望を取り戻す」

コメント11件コメント/レビュー

今回のアメリカ大統領選挙は「項羽と劉邦」との戦いを思い起こさせる。平民の劉邦が地道に少しずつ力をつけ、豪族で実力もある項羽に最終的に勝ったという経緯によく似ている気がする。(2008/11/08)

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「(1)300日戦争~金融恐慌が後押しした劇的な勝利」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス編集委員

日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長、日本経済新聞編集委員を経て、2017年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

今回のアメリカ大統領選挙は「項羽と劉邦」との戦いを思い起こさせる。平民の劉邦が地道に少しずつ力をつけ、豪族で実力もある項羽に最終的に勝ったという経緯によく似ている気がする。(2008/11/08)

オバマ大統領の演説は私が尊敬する人物の一人である故ケネディ大統領を思い出させます。その点で希望は持てるのですが、取り巻きは、どうなんでしょう?クリントン政権時にひどいジャパンバッシングがありましたよね?民主党は親中反米だという記事もいくつか見たのですが。(太平洋戦争を始めたのも、民主党政権ですし)リーマン、ファニーメイ等の破綻もクリントン政権時の規制緩和が原因だと言う人もいましたし、クリントン政権のしりぬぐいだった面もあるような気がします。その点をどなたかお教えいただけたらと思います。(2008/11/06)

今回のオバマ44代大統領選出に当たり、日本の次期選挙に際し次の事を思った。 1.日本の次期首相若しくは選挙の時に米国に日本として何を主張するか明白にしてもらいたい?2.次にこの経済の仕組みに日本として何を提案するかを明らかにしてもらいたい。具体的に株取引、石油価格のコントロール、穀物とバイオ燃料価格、CO2対策に対する考え方等である。3.価値観を法制度で如何表現するかの話し合いを主要国とする必要性を確認し進めてもらいたい。此れまでのように自国だけ政府の都合で戦略を左右されることなく協調し繁栄を目指す為である。(2008/11/06)

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