「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」

“身の丈”民主主義のオバマ政権

防衛費は抑えられ、国際開発費が増大傾向に

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2008年11月6日(木)

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 今回の米大統領選は、ジョン・マケイン氏の軍事力による平和維持と安全保障重視を選ぶか、バラク・オバマ氏の国内福祉と平和の配当を選ぶかの争いであったように思う。最終的に、米国経済の現実を冷静に判断した米国民の選択がくだされた。

 本来ならば、他国の大統領選の動向を外国人が語るとは僭越なことなのだが、筆者が多大な関心を覚え、ここで語るゆえんは、米国の次期政権の方針次第で日本の対外政策に大きな影響があるからである。

 オバマ氏は2つの政治観を持っていると、筆者は見ている。1つは民主党らしく、民主主義の理念を拡大し、世界に打って出る政権。初期ビル・クリントン政権と同様である。そしてもう1つは、縮小する米国に合わせた"身の丈政権"である。拡大する中国、資源のロシアなどをそのまま受け止め、米国の力の一部にしようとする現実主義的政権である。

初めは民主党の理念を拡大する方針に

 おそらく最初の4年間は、共和党との違いを鮮明にしようと、前者の「民主党らしい理念」を中心として突っ走る政権を作るだろう。アフリカやアジアなど途上国への開発に資源(国家予算、人材)を投入することになると思われる。おそらく金融部門は、かなり強い規制を受けるだろう。これまでのように、ウォール街に世界中からマネーを集め、通貨を供給する力強い米国ではなくなる。それは米国の伝統的な価値観に反するものであり、共和党支持者はもちろんのこと、米経済を牽引してきたウォール街からの反発を招くだろう。

 ところがもしオバマ氏が再任を狙い始めたとすると、まったく逆のことを始める可能性が高い。後者の、身の丈に合わせた縮小主義的、国益主義的政権になる可能性がある。

 民主党の政権は、従来この振れが大きい傾向があった。というのは、クリントン政権がそうだったからである。クリントン政権は、発足当時、積極的に世界に打って出ようと、軍のみならず人的移動を伴う貢献を打ち出した。ところがソマリアの失敗によって、その後積極介入を止め、結果としてセルビアを抑えられずに、1999年にはコソボの悲劇を招いてしまった。

 オバマ政権では、イラク戦争からの早期撤退などで戦費は急減するかもしれないが、それよりも紛争地への外交的介入、アフリカなど低開発国への開発予算の増大があるだろうと予想する。

 残念ながら、選挙結果が語るように、共和党支持者の見ている夢は、もう米国には到底達成できないものなのかもしれない。民主主義を守るという名目によってイラク派兵を続ける戦費を見つつ、金融機関を公的資金で助けることなど、現在の米国の国力を超えているのだから。それは60年代に巨費を投じたアポロ計画を、70年代に止めてしまったことと同じだ。

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著者プロフィール

吉田 鈴香(よしだ・すずか)
ジャーナリスト

吉田 鈴香1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。
主な著書に『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)、『紛争から平和構築へ』(論創社、共著)など。ウェブサイト「吉田鈴香が見る世界」も公開中。Twitterのアドレスはこちら



■編集部よりお知らせ
本コラムの著者である吉田鈴香さんが参議院選挙に立候補することになりました。 そのため新着記事の更新を停止いたします。[2010年6月14日]

■筆者より
2年弱、読者の皆様の叱咤激励に支えられながら続けてまいりましたことに厚く お礼を申し上げます。ご愛読ありがとうございました。(吉田鈴香)



このコラムについて

吉田鈴香の「世界の中のニッポン」

東ティモールから旧ユーゴスラビア、シエラレオネ、イラクまで、世界の紛争地帯をジャーナリストとして訪ねてきた著者が、国際支援の現状、ODA(政府開発援助)に望むこと、武装解除と平和交渉などを鋭くリポートする。

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