「オバマ 勝利の真実」

オバマ 勝利の真実

2008年11月6日(木)

(2)シカゴ オバマを鍛えた貧民街

1/4ページ

印刷ページ

(前回 1:300日戦争〜金融恐慌が後押した劇的な勝利 から読む)

オバマ

© AP Images/Pablo Martinez Monsivais

 11月4日夜、シカゴの中心にあるグラントパークには、約10万人の支持者が集まっていた。CNNのニュースがスクリーンに流れる。そして、午後10時、カリフォルニア州やワシントン州の開票時間に、「オバマが大統領に当選」というテロップが流れた。

 その瞬間、大観衆が拳を突き上げ、地響きのような歓声がわき起こった。抱き合う若者たち、輪になって踊り出す黒人、そしてテレビの女性リポーターが涙を流した。

「歴史が変わった」「偉大な大統領が誕生した瞬間だ」
 興奮が収まらない聴衆は、主役の登場を待った。
 午後11時、ついに、壇上にバラク・オバマが姿を現した。再び、歓声が耳を劈く。

「Hello Chicago」

 オバマの第一声は、地元への感謝の言葉だった。

「この勝利は、間違いなくあなた方が勝ち取ったものだ。そのことを、私は決して忘れないだろう」

 そして、大統領としての姿勢を、こう語った。

「政府がすべての問題を解決できるはずもない。だから、私はあなたの声に真摯に耳を傾けるだろう。特に、私に反対している人の声に」

 大衆の声から、政治を考える――。
 究極のボトムアップ型の政治を宣言した。それは、新しい世紀の大統領像だった。
 演説が終わったシカゴの街は、お祭り騒ぎとなった。あちこちで歓声とオバマコールがわき上がる。集会に参加できなかった人がビルの窓から手を振ると、街頭の人々が拳をあげ、歓声で応える。
 シカゴとオバマは強い信頼関係で結ばれている。

 決戦の日、演説の10時間前から、早くも会場には長蛇の列ができていた。街の至る所でオバマグッズが販売されている。歩いていると、何度も「ちゃんと投票に行った?」と確認される。

 会場に隣接する公園で、画家のパトリック・スカフはオバマの似顔絵を描いていた。シカゴ生まれのスカフは、オバマを間近で見てきた。住民のために地道に活動していることは、知人からも耳に入る。

「今こそ、彼のような大統領が必要だと思うんだ。だから、こうやって陰ながら支援しているんだけどね」

 大都市シカゴ地区で、オバマは圧倒的な支持を受け、マケインに52ポイント差をつけた。地元での不人気がたたって、アリゾナ州で逆転されそうな危機に追い込まれたマケインとは対照的だ。

 オバマとシカゴ――。
 実は、大統領へと上り詰めた真相をたどっていくと、シカゴのある地区につきあたる。

次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。





Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント43 件(コメントを読む)
トラックバック


このコラムについて

オバマ 勝利の真実

初の黒人大統領が誕生する――。2007年に、オバマの勝利を予想する向きは少なかった。歴史の歯車が動き始めたのは、アイオワ州だった。2008年1月、この地でオバマは劇的な勝利を飾った。わずか300日前のことである。そして、史上まれに見る激戦がスタートした。全米を巻き込んだ選挙戦は、各地で多くのドラマを生み出し、そして再び中西部のシカゴで幕を閉じた。世界が注目した「300日戦争」。彼の軌跡をたどり、オバマ勝利の真実を探ってみよう。米国の未来、世界の未来がそこから見えてくるかも知れない。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

編集部よりお知らせ

日経ビジネスからのご案内