(前回 1:300日戦争〜金融恐慌が後押した劇的な勝利 から読む)
© AP Images/Pablo Martinez Monsivais
11月4日夜、シカゴの中心にあるグラントパークには、約10万人の支持者が集まっていた。CNNのニュースがスクリーンに流れる。そして、午後10時、カリフォルニア州やワシントン州の開票時間に、「オバマが大統領に当選」というテロップが流れた。
その瞬間、大観衆が拳を突き上げ、地響きのような歓声がわき起こった。抱き合う若者たち、輪になって踊り出す黒人、そしてテレビの女性リポーターが涙を流した。
「歴史が変わった」「偉大な大統領が誕生した瞬間だ」
興奮が収まらない聴衆は、主役の登場を待った。
午後11時、ついに、壇上にバラク・オバマが姿を現した。再び、歓声が耳を劈く。
「Hello Chicago」
オバマの第一声は、地元への感謝の言葉だった。
「この勝利は、間違いなくあなた方が勝ち取ったものだ。そのことを、私は決して忘れないだろう」
そして、大統領としての姿勢を、こう語った。
「政府がすべての問題を解決できるはずもない。だから、私はあなたの声に真摯に耳を傾けるだろう。特に、私に反対している人の声に」
大衆の声から、政治を考える――。
究極のボトムアップ型の政治を宣言した。それは、新しい世紀の大統領像だった。
演説が終わったシカゴの街は、お祭り騒ぎとなった。あちこちで歓声とオバマコールがわき上がる。集会に参加できなかった人がビルの窓から手を振ると、街頭の人々が拳をあげ、歓声で応える。
シカゴとオバマは強い信頼関係で結ばれている。
決戦の日、演説の10時間前から、早くも会場には長蛇の列ができていた。街の至る所でオバマグッズが販売されている。歩いていると、何度も「ちゃんと投票に行った?」と確認される。
会場に隣接する公園で、画家のパトリック・スカフはオバマの似顔絵を描いていた。シカゴ生まれのスカフは、オバマを間近で見てきた。住民のために地道に活動していることは、知人からも耳に入る。
「今こそ、彼のような大統領が必要だと思うんだ。だから、こうやって陰ながら支援しているんだけどね」
大都市シカゴ地区で、オバマは圧倒的な支持を受け、マケインに52ポイント差をつけた。地元での不人気がたたって、アリゾナ州で逆転されそうな危機に追い込まれたマケインとは対照的だ。
オバマとシカゴ――。
実は、大統領へと上り詰めた真相をたどっていくと、シカゴのある地区につきあたる。
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