「世界鑑測 菅原出の「安全保障・インサイド」」

オバマは本当に“ハト派”なのか

どうなる?新政権の安全保障政策

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2008年11月7日(金)

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 バラク・オバマ氏が第44代のアメリカ合衆国大統領になることが決まった。

 オバマ氏は「変革」のメッセージを掲げて圧勝し、米国民は新しいアメリカの誕生に対する期待感を高めている。選挙キャンペーン中、オバマ・チームは、安全保障政策に関して「忍耐強い外交を擁護する知的な多国間協調主義者であり、ブッシュ政権の強硬な一国主義(ユニラテラリズム)とは対極に位置する」というイメージを売り込むことに成功し、概ね「外交・安全保障政策では穏健派」というパーセプションが出来上がっているように思われる。

 しかしオバマ新政権の外交・安全保障政策、特に「対テロ戦争」は、本当にこうしたイメージ通りの内容になるのだろうか? オバマ新大統領の対テロ戦争における「変革」とはいかなるものになるのだろうか?

イラクではゲーツ路線の継承

 そもそも「安全保障」とは「国家の中核価値を脅威から、軍事的・非軍事的手段によって守り、高めること」と定義されるのが一般的であり、アメリカの場合、アメリカの領土や国民の生命や財産、それに自由や民主主義といったアメリカの価値観を、さまざまな脅威から軍事的・非軍事的手段で守り、高めるための政策が、安全保障政策となる。

 守るべき「国家の中核価値」に関する考えは、当然のことながらブッシュ氏もオバマ氏もまったく変わらない。ネオコンや第一期のブッシュ大統領のように「自由と民主主義を促進するために軍事力を積極的に行使する」という考えにはオバマ氏は異を唱えているが、その価値が脅威に曝されたときに断固としてその脅威から守るという点においては、その発言を聞く限り、オバマもこれまでの歴代大統領とまったく変わらない。

 では「脅威」に対する考え方はどうか?

 現在アメリカはアフガニスタンとイラクで現実の戦争を行っている。この二国で毎日米兵の命を危険に曝している敵は、アメリカにとって現実の脅威であり、この認識もオバマ氏はブッシュ氏と共有している。

 その脅威を取り除く方法について、初期のブッシュ政権は軍事力一辺倒のテロリスト掃討作戦により、「敵を何人殺したか」というやり方をとってきたが、第二期政権のとりわけゲーツ現国防長官の下で、ペトレイアス将軍がイラクを担当するようになった2007年以降は、完全にアプローチを変え、敵対していたスンニ派の武装勢力を味方に取り込んで治安を維持していくやり方になっている。軍事力だけでなく、政治的な和解プロセスを進めることで反乱勢力を取り込んでいく手法にすっかり変わっているのである。

 その上でイラクからの米軍撤退を、2011年をターゲットに段階的に進めていくという路線は、そのままオバマ政権に引き継がれていくことになろう。現在の対イラク政策を仮に「ゲーツ路線」と呼ぶとすれば、それはもはやブッシュ政権の初期の頃とは似ても似つかないような内容に変質を遂げており、オバマ氏はこの路線を継続していくことになるだろう。

 実際にオバマ氏の安全保障問題に関するシニア・アドヴァイザーであるリチャード・ダンジッグ(Richard Danzig)氏は、「ゲーツ氏が進めている路線はオバマ候補がやろうとしていることと同じである」と述べて、ゲーツ国防長官の再任の可能性も示唆している。

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著者プロフィール

菅原 出(すがわら・いずる)

菅原 出

1969年、東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。平成6年よりオランダ留学。同9年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英危機管理会社役員などを経て、現在は国際政治アナリスト。会員制ニュースレター『ドキュメント・レポート』を毎週発行。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争詐欺師』(講談社)、『ウィキリークスの衝撃』(日経BP社)などがある。



このコラムについて

世界鑑測 菅原出の「安全保障・インサイド」

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

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