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中国政府のネット管理・統制方法を初公開

「ネット空間官民争奪リポート」その1

2008年11月21日(金)

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 ネット言論は中国の世論を形成する、と言っても過言ではない。特に最近ではネット言論の力が社会問題を解決したり、政府の政策を動かすまでに至るケースが目立つようになった――。

 といったら、驚かれるだろうか。言論活動が制限されている中国では、ネットももちろん検閲の対象である。そのような状況の中で政府の意図に抗するような世論形成が、いかにネットとはいえできるものなのか。編集者にこの企画を持ちかけたときに、まず疑問を持たれたのがこの点だった。

 しかし、答は限定付きながらYesなのである。背景にはまず、ネット人口の膨大さがある。

 中国のネット人口が2008年7月24日時点の統計で2億5300万人に達したことは前回述べたが、中国の全人口13億人のうち56%の7億2800万人は農村人口である。2億5300万人というのは、都市におけるネット普及率の大きさを見せつけられる数値だ。彼らは経済力もあり、社会の中での発言意欲や問題意識も高い。そんな彼らのネットパワーを無視することはできない。

 論より証拠、実例をご紹介しよう。

人権をそこなう条例を廃止させたネットパワー

 たとえば2003年の孫志剛事件。孫志剛という、暫住証(暫定的居住証明書)を持たない青年が、広州市の収容所に連行されたのち、役人の暴行を受けて死亡した。最近では農村から都会に出稼ぎに出る流動人口が約1億5000万人に達していることから、かなり緩やかになりはしたものの、中国には建国以来非常に厳しい戸口(戸籍)制度があって、すべての国民に身分証番号をつけて公安が管理しやすいようになっている。

 もし、自分の居住登録がある市町村から他の市町村に移動した時には、逗留が3日から30日等、地域によって異なるが、一定期間以上であるならば必ず暫住証を登録しなければならない。

 27歳になる孫志剛は大学卒業後、深圳の企業で働いていたのだが、広州にある服装関係の企業に呼ばれて20日ほど前に広州市に来たところだった。しかしまだ暫住証手続きをしてなかった孫は、公安の抜き打ち捜査に遭い、流動者や物乞い等を収容する収容所に連行され、役人の殴打を受けて3日目にショック死してしまった。

 この事件を知った網民たちは、人権を無視した官側の横暴に対して激しい抗議活動を展開し、ネットは孫志剛事件で燃え上がった。その勢いに押されて、政府は遂に収容条例=「都市生活ホームレス等救助管理規定」を撤廃するに至ったのである。改革開放後の1982年に世に出て、地方から都会に出稼ぎに来る多くの民工たちを苦しめてきた悪名高き条例を、ネットパワーが廃止に追い込んだのだ。

 これは網民(ネット市民)が官を実際に動かした最初の事例であったということができよう。

 これで網民たちは自信をつけた。ネット言論が世論となり得、そしてそれが現実に政府を動かす。
 こういう時代が来た。ネット言論はそのような力を持ちうるのかもしれない――。

 それ以来多くの現象が見られたが、たとえば日本でも報道された2007年10月に陝西省で起きた華南虎偽造事件に関しても、網民たちは成果をあげている。陝西省林業庁が周正龍という農民が野生の華南虎の撮影に成功したと発表したのだが、網民たちはその写真に疑問を持ち、見知らぬ者同士がネット空間でチームワークを発揮し、それが偽物であることを突き止めた。そればかりでなく、事件の背後には地方政府林業庁の役人がその地域の開発融資をもくろんだ営利目的の意図が絡んでおり、この偽造には地元政府の介入があるのではないかという疑惑まで浮かび上がってきた。

「ネット民主」の主導権を官民が争う

 勢いをつけた網民たちは、「ネット空間」を、「民意を表現する空間」として位置付け、それはやがて「ネット民主」という言葉まで生むようになった。

 もちろん、中国政府としてはこの現状を黙視しているわけにはいかない。

 政府は融和策と規制策の両方を採っている。一方では胡錦濤国家主席がネットにアクセスして網民とネット上で直接「会話」し、政府がいかに民主的であるかをアピールして、それを「中国式民主主義」の一つの表れとして宣伝した。。その一方では、ネット言論の検閲を強化させ、より厳しい言論制限を実施しているのである。

 果たしてこの動きは、巨大国家中国に何を呼び込むのか。

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「中国政府のネット管理・統制方法を初公開」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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松﨑 曉 良品計画社長