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ネットに放たれた中国政府の「ボランティア」たち

「ネット空間官民争奪戦リポート」その2

2008年11月28日(金)

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 中国では、政府とネット上の民衆(彼らの自称は「網民」、本稿では「ネット市民」と訳す)が、互いにネット空間の中で「ネット民主」と叫んでいる。主導権をどちらが握るかの争いの中で、政府が行った、ネットをコントロールするための手法を暴露する報告書が民の側から現れた。それが、前回ご説明した「ネット空間官民争奪戦」リポートである。

 今回は、ネット空間官民争奪戦リポートの第2弾をご紹介しよう。

 2008年にオリンピックを控えていた中国では、「民主論争」などの出現も手伝って、社会不満分子が巨大化したネットを媒体として表面化するのを恐れ、ネット言論のコントロールを強化し、政府の手中に収めるための方策が、つぎつぎに編み出されて実行に移された。それが2007年という年であり、中国のもう一つの顔であった。以下に示すのは、2007年に政府が新たに実行に移した手段の数々である。

 逐語訳をすると、どうしても固くなり、日本語として読みにくくなるので、日本人の目に馴染みやすい形で意訳に努めている。また( )内に筆者による注釈を加筆した。

第一章 新たに出た監視法規とネット警察・ネット監視の拡大
1、ネットマガジンは新聞出版総署の許可が必要に

 2007年4月18日、新聞出版総署()・音声画像電子ネット出版管理司の役人が「2007年第一回中国ネットマガジン出版業フォーラム」において明確に述べたところによれば、新聞出版総署はインターネット出版業務に対し事前審査批准(許可)管理を実行するとのこと。これは通信主管部門へ「インターネット情報サービス付加価値電信業務経営許可証」を申請する前に、まず新聞出版総署の審査同意を経て、インターネット出版許可証を取得しなければならない、ということを意味する。

 それ以前は、2000年に交付された「インターネット情報サービス管理弁法」と2002年に公布された「インターネット出版管理暫定規定」に基づき、相応のICP(経営許可権)を取得したウェブサイトであれば、ネット上の雑誌の制作と発行が可能となり、また伝統的な紙媒体の雑誌出版において必要とされている「雑誌コード」は要求しない、という規則になっていた。

 したがって、この(2007年に新たに出された新しい)規定の登場は、疑いなくネット市民の言論の自由をさらに制限することにつながるだろう。

*筆者注::国家新聞出版総署というのはニュース配信や出版界を司る国家最高権力機関(本文の組織名は原文ママ)。そこがネット上の出版物にも介入し始めたことを意味する。中国では書籍のデジタル化が急激に進んでいることも影響していると思われる。活字メディアの閲読率はネットが書籍を上回っている

2、ネット110番ネット警察がネット監視のためにスタンバイ

 2007年9月1日、北京において「首都ネット110番ネット警察」が(バーチャルな形で)現れ、まず新浪、捜狐等のポータルサイトに実際に(入り込んで)スタンバイし、同年12月末までには北京の全てのウェブサイトをカバーするに至った。

 これに対しネット市民は「これは言論の自由に対する制限ではないか」という異議を唱えた。また『南方都市報』も「ネット警察に関する深い懸念」を発表し、「これは言論の自由と信教信条の自由を制限するものだ」という見解を述べている。

3、政府当局ネット監視員とネット評論員

 中国においては、大量に存在し誰もが知っている政府安全部門のネット監視員のほかに、またさらに別のネット監視員が存在している。

 5月14日付の「北京日報」によれば、現在北京市で合計181名の「ネット義務監督ボランティア」が仕事をしているとのこと。市のインターネット宣伝管理弁公室の責任者は、広大なネット市民とネット監督ボランティアのサポートは政府部門が有効な管理を行う上での強力な後ろ盾となると表明している。

 「北京インターネット違法及び不良情報通報ホットライン」は去年4月10日の開通以来、計4万7000件の各分野からの通報電話や電子メールを受けており、その中の1万2000件はいわゆるこれら「ネット監督ボランティア」からのものだった。(筆者注:この「不良情報」は中国政府あるいはその安定にとって好ましくない情報という意味と解釈できる)

 この「ネット義務監督ボランティア」は2006年8月1日からスタンバイを始め、北京市ネット管理弁公室が北京ネットメディア協会の名義により招聘したもので、各人毎月50件の「有害」情報を通報する義務を要求され()、ホームページのリンクアドレスを通報するだけでなく、取り込んだ(キャプチャーした)画像を送信し、協会を通してチェックが有効か否かを確認する。

*筆者注:「ネット義務監督ボランティア」という名称の中の「義務」という言葉は、ここにあるように、各人が毎月50件の有害情報を通報しなければならないという最低ノルマを課せられていることを表したものと解釈される。

 「北京日報」の自慢気な記事には「ネット監督ボランティアと通報ホットラインを通して有害情報等を収集し、全国初の、良好かつ有効なネット情報管理監視社会機構が既に初歩的に形勢されている」とある。実際には、ここで言われているいわゆる「有害」な情報とは政府当局にとっての「敏感」な(不利な)情報のことである。この「ネット義務監督ボランティア」の存在はネット市民の言論の自由を極めて大きく制限している。

 市中にもずっとネット評論員(俗称は「五毛党」)()が広く流布している。この一点に関して話さなければならないのは、ネット監視のために、北京市インターネット宣伝管理弁公室は2006年末に北京市ネットメディア協会の名義により、多くのネットメディア内容監視人員を増員招聘し、またその「監視センター」の大弁公室にて作業を行い、ポータル、BBS、ブログ等のネットの種類の違いにあわせて、それぞれ監視を行い、各大手商業ウェブサイトに対しては一人から三人が、「二交代制」の流れで作業し、「非常事態」の時期には「三交代制」を実行しているということである。

*筆者注:「五毛党」とは5毛(1毛は0.1元=約1.5円)という格安の値段で政府に都合のいいことをネットに書き込む者たちのことを指す。政府の「喉舌」という言い方をされる。これにより、あたかも一般庶民がこのような意見を持っているかのような形を取って、世論を代表するように誘導していく仕組み。5毛は、単なる喩えで、実際には下記にある通り、ネットの原稿料に相当する金額をもらっているようである。だから少なからぬ者が積極的に五毛党の「党員」となる志願をするのであろう。これらの人々を「五毛銭」と呼ぶこともある。銭で心を売ったという意味を込める場合もある。文化大革命時代(1966~1976年)の密告制度と、その精神と構造において基本的に類似している。

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「ネットに放たれた中国政府の「ボランティア」たち」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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