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軍を律する文民統制とは何か

民主国軍と非民主国軍の違い(1)

  • 吉田鈴香

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2008年11月25日(火)

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 田母神俊雄前航空幕僚長の論文と、彼の一連の言動が発端となって「文民統制(シビリアンコントロール)」という言葉が取り沙汰されている。「前航空幕僚長の論文には2.26事件のような決起の心が潜んでいる」とか「自衛隊がまた暴走するのでは」という不安を口にする識者もいる。

 筆者はこれまで、国際協力の現場で各国軍の活動を取材してきた。スウェーデンの国防軍で軍と文民(非軍人)との共同オペレーションを学んだこともある。民間の軍事専門会社の経営者の知己も多い。軍人と軍を律するものが何か、ということをこの十数年追い続け、意思命令系統をつかさどる人とそれに従う軍人との両方を見てきた者としては、今回の問題は捨て置けない気がしている。

 前航空幕僚長の論文で示された歴史解釈の是非については、既に多くの識者から論考がなされているので、ここでは「文民統制」の定義と、軍を律することに関する筆者の独自指標を述べてみたい。

文民統制は「意思」と「力」の分離

 「文民統制」とは担当する大臣、つまり防衛大臣の意思に全面的に従ってオペレーションも人事も行うという意味である。「文民(シビリアン)」とは、国民のことだ。軍事力の行使を、国民の代表である担当大臣に一任するのである。

 なぜ統制せねばならないかというと、「軍」とは「力」そのものだからである。「力」そのものが、その組織を構成する人間だけの企図で行使されることは、はなはだ危険だ。だから、国民の代表が「意思」を担い、軍人が「力」を持つというように、「意思」と「力」とを分離して機能させることで、力の暴走を止め、要所要所でその存在を示す。そして「意思」は、1本の綱で伝達される。つまり防衛大臣の手にのみ握られる。これが「文民統制」の形態だ。

 ほとんどのメディアで誤解があるのは、指示を出すのは「政治家」だとしていることだ。すべての政治家の意思に個別に従っていては、オペレーションは進まない。政治家の中でも、「意思」は担当する防衛大臣にある。そして、さらに上層の最高指揮官が総理大臣である。

 文民統制の真意は、「政治優先」である。軍人が法律を作成することはないし、オペレーションが法律より優先されることもない。軍人が政治家になったために、太平洋戦争の愚が起きたわけだ。

 とはいえ現実には、オペレーションを知らずに法律を作るのは極めて困難で、作成の責任者である大臣は、自衛官から業務の中核をなす知恵を得なければできないだろう。だからこそ法律の草案を作成する文官も、文官の知恵を基盤に君臨する防衛大臣も、法律や予算案の作成の際に、“制服組”(ここでは軍人のこと)の意見を聞いている。

 昨年秋に問題が表面化した守屋武昌前事務次官の疑惑では、“背広組”(ここでは文官のこと)たる非軍人が、組織の運営もオペレーションでの武器使用の許可は合法かどうかの判断も行っているという現実が明らかになった。つまり、文官が「文民」であるかのような行動を取っていたわけである。これも、文民統制の曲がった形態であった。

コメント10件コメント/レビュー

『総理大臣と防衛大臣が、…制服を着た自衛官の愛国心を高く保ったまま、士気を高揚させる言葉を発する』ことが必要であると言う吉田氏の言葉は、無理難題でしかない。そもそも日本国憲法は、『戦力を保持しない』と定め、自衛隊(軍)の存在を否定しており、「自衛官は日本国には必要ない人間なのだ」と宣告しているのである。それで、自衛官の愛国心、士気をどうやって高揚させられるというのか? 田母神氏の「自衛官の愛国心と士気を高めるには、これまでの自虐史観を払拭しなければ、不可能である」という論理の方が、ずっと筋が通っている。先日某テレビ番組に出演していた左寄りの某議員などは、「大災害の時に救助活動に特化した組織になってくれれば良い」などと、わけの分からない発言をしていた。いつも不思議に思っているのは、護憲派の人たちが「自衛隊など解散してしまえ」とはぜったいに言わないことだ。また、『国家安全保障の有事ですら、国民の命より政権の維持に関心が向くという政治家の在り方』が問題であると吉田氏は言うが、その政治家の在り方を縛っているのは、われわれ国民(の世論)にほかならず、その国民の意識を形成する大きな力となっているのが、マスコミの言論活動だ。この背景を論ぜずして、わが国の自衛隊の是非を問うことは無意味である。(2008/12/02)

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『総理大臣と防衛大臣が、…制服を着た自衛官の愛国心を高く保ったまま、士気を高揚させる言葉を発する』ことが必要であると言う吉田氏の言葉は、無理難題でしかない。そもそも日本国憲法は、『戦力を保持しない』と定め、自衛隊(軍)の存在を否定しており、「自衛官は日本国には必要ない人間なのだ」と宣告しているのである。それで、自衛官の愛国心、士気をどうやって高揚させられるというのか? 田母神氏の「自衛官の愛国心と士気を高めるには、これまでの自虐史観を払拭しなければ、不可能である」という論理の方が、ずっと筋が通っている。先日某テレビ番組に出演していた左寄りの某議員などは、「大災害の時に救助活動に特化した組織になってくれれば良い」などと、わけの分からない発言をしていた。いつも不思議に思っているのは、護憲派の人たちが「自衛隊など解散してしまえ」とはぜったいに言わないことだ。また、『国家安全保障の有事ですら、国民の命より政権の維持に関心が向くという政治家の在り方』が問題であると吉田氏は言うが、その政治家の在り方を縛っているのは、われわれ国民(の世論)にほかならず、その国民の意識を形成する大きな力となっているのが、マスコミの言論活動だ。この背景を論ぜずして、わが国の自衛隊の是非を問うことは無意味である。(2008/12/02)

民主主義国=倫理的である。非民主主義国=倫理的でない。という決め付けはいかがなものでしょうか。アメリカがグアンタナモでしたことやイスラエル国防軍がパレスチナでやっている事などを見れば、そうは言い切れないように思います。軍を統制するのであれば、資金や人材などを管理する仕組みが必要であり、教育だけでなんとかなる問題ではないと思います。(2008/11/30)

非常に興味深い記事をありがとうございます。文民統制の意味を深く考えるきっかけになりました。吉田氏の視点は海外での経験に裏打ちされていて、日本国内の我々に貴重な知見を提供してくれたと思います。私自身も武力紛争の無い日本にいるため、文民統制が存在しない国がある現実と、その危険性を忘れてしまいます。今後、自衛隊が海外での任務に就くとき、第2次世界大戦時のインパールかニューギニアのような無謀な作戦に投入される可能性があります。仮にあったなら、それは指揮官の罪でなく、文民統制を怠ってきた国民全体の罪になるでしょう。この論評を読み、そんな日が来ないことを切に願うものであります。(2008/11/29)

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