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中国の「民主」を誰が導く?~沸騰した2007年

「ネット空間官民争奪戦リポート」その3

2008年12月5日(金)

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 今回は、中国政府はなぜ2007年にネット管理を激化させたのかに関して、民側が暴いた「ネット空間官民争奪戦」リポートに沿いながら、主として筆者の見解を述べてみたい。

 注意すべきは、2007年が特殊な年であったとしても、そこで強化された管理手法は、その後消失することはなく維持されていくということである。いや維持どころか、結局はさらに研究を重ねてより堅固なものとなっていくことだろう。

 ただし、その間にネット市民=網民の数はさらに激増するだろうし、ネット民主もより強く叫ばれていくであろうから、はたして、徹底した統制管理がネット上で可能なのかどうかは分からない。われわれは、その歴史をリアルタイムで検証する証人ということになる。

 それでは「ネット空間官民争奪戦」リポートの、「二 監視管理方式の強化」に進もう。カッコ内は筆者の注記だ。

二、監視管理方式を強化

 2007年というこの一年は、中国共産党ネットコントロール部門にとって、以下のような最も重要な差し迫った任務があった。それは、

  • 「十七大」(中国共産党第17回全国代表大会)の開催
  • 「オリンピック」の準備
  • いわゆる「和諧社会(調和の取れた社会)」を作り上げること

等を確実なものとし、政府が目にしたくない状況が世に出ないようにすることであると言ってよい。

 1月12日、北京市インターネット宣伝管理弁公室(以下北京ネット管理弁公室と略す。この下にネット管理処とネット宣伝処が設けられている)ネット管理処の範涛副処長は、新浪、網易、搜狐、鳳凰等19の商業ウェブサイトが出席した北京ネット管理弁公室の毎週金曜の例会において次のように述べた。

 「今年の作業の重点は、第一に北京オリンピックのラストスパート期であるため世論をうまく調整しなければならないことにあり、第二としては“十七大”が挙げられる。ここでは立候補者の推薦の審査、選挙の実行、各方面の報道において記事の出所を厳格に制限して(政府)規範に合わせることが肝要だ。第三は、和諧社会を構築することに力点を置くことである」

 この件(くだり)に関して、筆者なりの通訳的説明を少し加えたい。

 ここで言っているところの「和諧社会」とは、ざっくり言ってしまえば、「貧富の格差をなくす」ということであり、「都市と農村の格差を縮めること」と解釈することができる。

 鄧小平はかつて「富める者が先に富め」という先富論を唱えて改革開放における経済発展に勢いをつけさせたが、その目的は一応達成され、中国は高い経済成長率を示している。しかし経済成長一点重視が生む弊害は既に無視できないところに来ており、また中国の東沿海部を先に富ませたことが激しい所得格差を生み、内陸部農村の不満を爆発寸前までに高めてしまった。

 中国政府が恐れているのは、オリンピック開催に来訪する外国人記者に、中国の庶民たちが中国の負の側面を訴え、政府が覆い隠そうとしているものを世界に暴き出すことであった。そのため、決して暴動が起きないよう、農村を重視するというメッセージを発して「和諧」に努め、2008年に社会不満が表面化しないように全力を尽くせ、ということなのである。もちろんこの「和諧」の中には、農村そのものの問題だけでなく、農村から都会に出稼ぎに来ている、いわゆる「民工」たちの問題や、都会における勝ち組と負け組の間の諸問題も含まれているのは言うまでもない。

 決して見せてはならない不満の爆発――その導火線をネットが握っていると、政府は警戒していた。

 次になぜ「十七大」がそんなに重要かというと、これは5年に一回開かれる共産党大会なので、無論のこと、共産党にとっては命のような大会ではある。通常に加えてさらに何を警戒しなければならないかというと、大きく分けて4つほどある。

●選挙体制への不満の表面化

 中国政府は中国共産党がいかに「民主的」であるかを表明するために、党内人事に関して形式ではあるが、一応「選挙」のような形を採っている。たとえば十七大では、党が指名した221名の共産党中央委員会委員候補者の中から204名を選ぶという選挙を行った。何名か落選するやり方を「差額選挙」と称して民主性を強調しているが、党内選挙なので、共産党指導層が候補者の名前を決める。自由な立候補ができるわけではない。

 この選挙過程や内部事情等の情報に関して、網民に自由な書き込みを絶対に許してはならない、と政府側は警戒しているのである。

 党内人事には江沢民派閥やら、胡錦濤派閥やら、諸々の権力闘争があり、それが事前に明るみに出れば大会運営が影響を受けかねない。また、選挙過程が必ずしも「民主」ではないのに「民主」を連呼するわけだから、ネット民主を掲げる網民が大会前に反発を示す可能性がある。

 共産党一党が絶対支配するという大原則が揺るがない現在の中国においては、党内人事を、たとえば我が国の自民党内の選挙と同一視することはできない。日本の国会に相当する両会(全国人民代表大会や中国人民政治協商会議)というものがありはするものの、党大会はいわば国家の骨組そのもの。中国政府は、制限のない投票で民意を完全反映することがほとんど許されていない現状に対する不満が、党大会をきっかけにネット上で燃え上がるのを常に警戒しているのである。

 まして、2008年のオリンピック開催を控え、国際社会に中国政府がいかに民主的であるかをアピールせねばならない時期。このために、2007年の警戒レベルは空前の高さにまで上がった。

コメント3件コメント/レビュー

「インターネットが民意を反映し、それは浸透力が強いものであるならば、政府がインターネットで世論を誘導し、インターネットを通じて思想管理を行う」という、いかにも中国当局らしい単純な発想であると感じた。この情報統制計画を達成するために、官人らが研究を進めているようであるが、難点で示している通り研究と同時進行でインターネットの情況は刻々と変化している。そのような最中、ネット空間における中国当局の情報統制に限界がくることは必至である。また、更なる自由を有する携帯電話によるネット利用の管理は中国当局の監視下に収まるのか、この点も難点として指摘できるであろう。今後果たして実行可能か否かの中国当局の情報統制のプロセスに注目し、次回のコラムで記される中国当局の“三大任務”に関心が持たれる。(2008/12/08)

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「中国の「民主」を誰が導く?~沸騰した2007年」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「インターネットが民意を反映し、それは浸透力が強いものであるならば、政府がインターネットで世論を誘導し、インターネットを通じて思想管理を行う」という、いかにも中国当局らしい単純な発想であると感じた。この情報統制計画を達成するために、官人らが研究を進めているようであるが、難点で示している通り研究と同時進行でインターネットの情況は刻々と変化している。そのような最中、ネット空間における中国当局の情報統制に限界がくることは必至である。また、更なる自由を有する携帯電話によるネット利用の管理は中国当局の監視下に収まるのか、この点も難点として指摘できるであろう。今後果たして実行可能か否かの中国当局の情報統制のプロセスに注目し、次回のコラムで記される中国当局の“三大任務”に関心が持たれる。(2008/12/08)

不確か乍、オリンピックに向けてさまざまな情報規制がなされていたと聞いてはいたがここまでだったのかと記事で知り大変驚いている。 また、つい最近まで大昔の目安箱的手法でしか訴状を出すが出来なかった中国情勢を考えるとネットの進歩は驚くべき勢いで発展しており、ネットパワーと云うものが日本とは桁違いの偉力で動いており、「ネット空間官民争奪戦」がどのような形で進んで行くのか、この先が楽しみである。(2008/12/05)

驚くべきレポートというべきか、あまりにも予想通りの政府情報統制というべきか、両極端の感想で判断に苦慮します(笑)。むしろ、これでまだ、北京だけの話という点の方が興味深いかもしれません。上海市民なんかは北京オリンピックなんかクールに眺めていたとも聞きますし、中国ならネット民主主義の地域格差も注目かもしれないし、これまた逆にネットの地域毎の統制というのも無理があり、政府の愚策かもしれない、という気もしますし、まだまだ今後の展開に興味は尽きません。(2008/12/05)

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