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追い詰められた全米自動車労組

最大かつ頑強な労組をまんまと手なずけた巧妙な政治戦術

  • 水野 博泰

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2008年12月14日(日)

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 12月11日午後11時過ぎ、資金難に陥っている米自動車大手(ビッグスリー)を救済するための法案協議が決裂し、事実上の廃案が決まった、上院多数党院内総務ハリー・リード氏(民主党)は疲れ切った表情でこう言った。

「国家にとっての損失だ。明日のウォールストリート(株式市場)が怖い。愉快なものにはならないだろう」

 ところが、夜が明けて市場が開くと寄りつきで売りが先行したものの、その後じりじりと値を戻し、結局ダウ工業株平均株価は前日比64.59ドル高の8629.68ドルで引けたのである。

 救済案が葬られればビッグスリーのうち、特にGM(ゼネラルモーターズ)は年内に資金繰りに行き詰まり、破産法の適用(チャプター11=日本の民事再生法に相当)を申請することになる。自動車産業を中心に何百万人という雇用が失われるやもしれず、当然株式市場は急落するだろうと誰もが考えた。だが、現実は違った。

金融安定化法で自動車メーカーを救う?!

 救済法案は“最後の砦”ではなく、実はその背後に“奥の手”が隠されていたからである。

 12日金曜日。米東部時間9時30分に株式市場が開く。その数分前に、ホワイトハウスは緊急声明を発表した。金融機関の救済を想定して難産の末に成立させた金融安定化法に基づく公的資金を自動車メーカー救済に充てる、という内容である。

 ダナ・ペリーノの大統領報道官名の声明の全文は以下の通り。


窮地に陥った自動車メーカーを支え、再編するための適切かつ効果的な法律に対して両院の多数が支持しているにもかかわらず、議会が最終的な法案可決に失敗したことに失望している。この立法の基本は、既に自動車メーカー向けに用意されていた資金に活用機会を開くものであり、無秩序な破産を回避するための最良の道を提供するものだった。将来にわたって存続可能で競争力のある企業として再生できるようにする困難な決断に対してステークホルダー(利害関係者)が準備を整えた企業だけに、納税者の資金が向かうようにするという条件付きでである。

通常の経済状態ならば、民間企業の最終的な運命は市場が決めるべきである。だが、現在のように米国経済が衰弱している状態では、窮地の自動車メーカーの破綻を防ぐために必要ならば別の選択肢──TARPの活用を含めて──も考慮に入れる。この産業を突然破綻させることは、米国経済に深刻な影響を及ぼすだろう。今この時点で、米経済をさらに弱体化させたり不安定化させることは無責任である。

目の前に迫った破綻を防ぐためには、連邦政府が介入する必要がある。当然、自動車会社、労働組合、そしてほかのすべての利害関係者は存続に必要な、意味のある譲歩に備えなければならない。

 ここで、「TARP」とは「Troubled Asset Relief Program」の略で7000億ドルの公的資金による金融安定化法(Emergency Economic Stabilization Act of 2008)に基づいて設けられた不良債権処理スキームである。金融機関の救済を前提とした法律なのだが、大統領と財務長官の協議によって適用対象を拡大解釈する余地を残した例外規定がしっかり埋め込まれていたというのがミソ。それがビッグスリー救済に既に確保した公的資金を流用するという“ウルトラC”の法的根拠になっている。しかも、案件ごとに議会の承認を得る法的義務がないというおまけ付きだ。

 ウォールストリートジャーナル紙によれば、ペリーノ報道官はわざわざ大統領専用機エアフォース・ワンの機内で同行記者団との会見に臨んだのだという。この奥の手が早朝のタイミングで大手メディアを通じて一斉に流されたことによって、少なくとも12日の株式市場の急落は避けられたと言ってもいいだろう。

議会は知っていた

 ただし、この「TARP流用スキーム」という奥の手は、議会での協議決裂を受けて急遽用意されたわけではなく、むしろ、「たとえ法案が可決されなかったとしても大統領府と政府に最後の手段が残されている」という事実を前提にして議会での審議が進められていた節がある。ジョージ・W・ブッシュ大統領は元々TARPの流用に頑として否定的な姿勢を示していたのだが、「方針転換はある」と議会関係者は読んでいたようなのだ。

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