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追い詰められた全米自動車労組

最大かつ頑強な労組をまんまと手なずけた巧妙な政治戦術

  • 水野 博泰

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2008年12月14日(日)

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 「議会がつなぎ融資法案を否決すればブッシュ大統領がTARPを使う、ということを共和党議員は知っていた。水曜(12月10日)の夜にホワイトハウスは上院共和党指導部にその点を内報している。さすがのブッシュも、GM、クライスラーを潰した大統領という汚名を着る政治的勇気は持ち合わせていなかったということだ」と、ワシントンウォッチ編集長の山崎一民氏は言う。

 そう考えれば、上院での協議決裂は“出来レース”とまでは言わないものの、米国内の政治力学からすれば当然の帰結だったと腑に落ちる。

 そもそも、米有権者がビッグスリー救済に極めて否定的だった。世論調査の結果はどれも半数以上の米国民が救済法案に反対していることを示していた。敗者は市場から退場するというのが米国型資本主義の鉄則ならば、死に体のビッグスリーに政府が公的資金を使って救いの手を差し伸べるのはルール違反。有権者の半数以上がそう考えているのだから、それぞれの選挙区事情を抱えた議員が世論の大勢に従うのは何ら不思議ではない。

 身から出た錆なのだから落とし前は自分でつけろという米国世論は、原理原則論としては筋が通っている。それは金融安定化法に対して米国人の多くが示した嫌悪感と同種のものであり、共和党、民主党の主義主張の違いを超えた、米国の根底に根付いている自主独立の精神に基づくものだ。

 だが、その原理原則を押し通すのは明らかに犠牲とコストを伴う。

 ビッグスリーと同じミシガン州に本拠を構えるコンサルティング会社、BBKとその傘下のアメリカン・エコノミック・グループの2社が共同で、あるシミュレーションを行った。ビッグスリーに対する救済(つなぎ融資)に踏み切った場合とビッグスリーが破綻した場合の両方について納税者が負担するコストを試算したところ、「救済」の場合のコストは164億ドル、「破綻」の場合は659億ドル。「破綻」を選択することは「救済」の4倍ものコスト負担増になるという結果が得られた。そのリポートは12月8日に公表され、議会関係者にも情報が伝えられていた。

 日本人的な感覚からすれば、「金融機関やビッグスリーが破綻すれば、経済状態がさらに悪化するのは目に見えているのだから、公的資金だろうがなんだろうが使えるものは何でも使って救済するのが当然。非常時なのだから、理屈や理念をこねくり回している場合ではない」と考えるのが普通だろう。

 だが、米国は理念によって建国され、理念によって成り立っている国である(少なくとも表層的には)。ビッグスリーを潰せば米経済は大変なことになると分かってはいても基本理念は曲げられない。それが引き起こす結果は、世界からは非常識に見えるかもしれないし、世界に迷惑さえかけるかもしれないがそんなことは気にしない。良い意味でも悪い意味でも、米国の米国たる所以だ。

 12日朝の主要な米メディアの報道を見ても、「当惑」の響きはあったものの、「驚愕」の空気を感じなかったのはそのせいなのだろう。

「ビッグスリー労働者は高賃金」という誤情報を流布?

 世論の後押しと選挙区事情、そしてブッシュ政権による「TARP流用スキーム」というセーフティガードを得たことによって、議会上院の特に共和党議員はこれ幸いと、全米自動車労組(UAW)を“悪玉”に仕立て上げ、譲歩を求めて徹底的に絞り上げたのである。労組は民主党の支持基盤であり、共和党にとっては政治的にも理念的にも目の敵である。

 ビッグスリーの従業員の賃金や様々な待遇がUAWの強力な交渉力によって守られ、場合によっては不相応に好待遇であったり、企業としての競争力を削ぐようなものがあったりするのは確かである。ただし、救済法案の審議過程では世論を誘導するための情報戦が議会の外側でも展開されていた。

コメント3件コメント/レビュー

ビッグ3の本当の失敗は経営/労組との関係が相互に会社の永続性を考えた経営をしてこなかった事に有る。環境対策しかり、デルファイの問題もしかりである。GMは部品メーカーであるデルファイを無くするべきではなかった。トヨタで言えばデンソーを無くしたトヨタのようなものである。どちらにしてもビッグ3は統廃合か無くなる状況に思える。早いうちに整理すべき時にきていると思う。(2008/12/15)

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いただいたコメント

ビッグ3の本当の失敗は経営/労組との関係が相互に会社の永続性を考えた経営をしてこなかった事に有る。環境対策しかり、デルファイの問題もしかりである。GMは部品メーカーであるデルファイを無くするべきではなかった。トヨタで言えばデンソーを無くしたトヨタのようなものである。どちらにしてもビッグ3は統廃合か無くなる状況に思える。早いうちに整理すべき時にきていると思う。(2008/12/15)

ミシガンのBBK他のレポート読みましたが、明らかに欺瞞だと思います。こういうのを信用して記事のベースにするのは、いかがなものでしょう。以下、レポートの問題点です。1)いくらリストラしても、こんな小さい規模の「融資」ではGMが2年間も生きながらえることはできないと思います。トヨタでさえ赤字決算予測で、仮に資産売却するにしても簿価以下でしか売れない状況ですし、多くが既に担保に取られているでしょう。そもそも「救済」ではなく「延命」について議論して、右往左往している状況にあるのに、スリカエをしていると思います。2)救済してから破綻するシナリオがありません。このつなぎ融資をしたあとに破綻するという状況は、相当に高い確率で発生するはずです。ちゃんと、計算する必要があります。3)万一、このレポートで計算している2年間は、つなぎ融資でビック3が生き延びられたとしましょう。それはそれで、その間に経済状況が回復すれば素晴らしいことですが、先送りした際の破綻コストは積みあがるだけです。2年後の破綻コストがどれぐらいになるかも予測しないと不公平でしょう。一方で、破綻させて負債を整理してから再生させれば民間投資(外資による買収)を集めることができたり、国有化したあとに再生できれば株式の売却益で国庫にプラスとなるような面もあります。以上、何かの参考になれば幸いです。(2008/12/14)

 ビッグスリーの問題の本質は、日本とは形を変えたアメリカの「年金・老人医療問題」だという事が今回の特集記事を読んで良く理解できました。 アメリカには「国民皆年金・医療」の制度が無いため、各企業が引退した職員の年金・医療費を負担しており、これが1世紀近い歴史を誇るビッグスリーの足かせになっている訳で、これから逃れる方法は唯一破産しか無い(年金・医療カットへの合意は政治的に不可能)という事になりそうです。 これは第一世代の従業員が引退に近づきつつある日系メーカーのアメリカ工場にも大きな「他山の石」となります。日系メーカーは場合によっては日本では廃れた「企業立病院」や「企業立老人ホーム」の設立を今から準備した方が良いかも知れませんね。(2008/12/14)

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