「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」

麻生首相には、「内需拡大」と言ってほしかった

自動車救済協議決裂の日、首相の会見内容に落胆

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2008年12月16日(火)

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 米国上院議会でビッグスリー(米自動車大手3社)救済の協議が否決され、ドル売り、株安が一気に進んだ12日。日本では、麻生太郎首相が自ら記者会見を開き、景気対策「生活防衛のための緊急対策」を発表した。しかし蓋を開ければ、わざわざ首相自ら会見するほどの方針の発表でもなく、経済対策どころか「3年後に税制改正やるよ」宣言。米国経済の揺れを受け、景気浮揚を考えたかと期待したが、違ったようだ。

記者会見の中身は「雇用対策」1兆円だけ

 意気込んで発表された「生活防衛のための緊急対策」は、表紙1枚、中身は1枚の紙に数行の簡単なものだ。そのまま掲載すると、

生活防衛のための緊急対策
1.財政上の対応計10兆円
・雇用対策 約1兆円
年内住宅・生活支援、雇用維持、再就職支援、雇用保険料引下げ、給付見直し等
・雇用創出等のための地方交付税増額 1兆円
・「経済緊急対応予備費」(新設) 1兆円
・減税措置(平年度) 約1兆円
住宅減税、設備投資減税等
・生活対策(金融措置を除く)(10月30日公表済み) 約6兆円

2.金融面での対応計13兆円
・金融機能強化法に基づく政府の資本参加枠拡大(資本参加枠拡大後12兆円) 10兆円
・政策金融の「危機対応業務」発動・拡充 3兆円

 上記を説明した後、首相は増税の意向を堅持すると言った。この記者会見は景気対策ではなかったのか。それとも、税制改正か? 近い将来の増税と来年の減税とを一緒に表明されれば、誰でも減税分を貯蓄に回す。そんな矛盾したことを、一国の首相がメディアを集めて言うとは、信じられない。

キーワードは雇用創出、需要喚起、株価対策

 ここで、筆者が必要だと考える経済対策を述べてみたい。現在、世界中が景気浮揚のための財政・金融政策に注力している。世界的な景気後退の影響を最小限に食い止めようと、各国がまずは自国の手当てに必死だ。

 世界経済が低迷すると、単に消費を上向かせる需要喚起だけでは日本経済を浮揚させることはできない。キーワードは、雇用創出、需要喚起、株価対策。まずは下記が必要だと筆者は考える。

1)第一に雇用創出
2)サービス業を中心とした内需型の産業の活性化(需要喚起)
3)不動産市場を活性化させ、株や不動産など担保価値の下落による信用収縮効果をできるだけ小さくする(株価対策)

 そして、景気対策がその効果を上げるには、「景気対策として、一定の規模があること」「需要を喚起できる部門に対して、景気対策を打つこと」が必要だ。

 残念ながら円高対策は1カ国で手当てできる問題ではなく、輸出関連製造業は軒並みしばらく低迷するだろうし、これを景気浮揚策で支えることなどできない。

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著者プロフィール

吉田 鈴香(よしだ・すずか)
ジャーナリスト

吉田 鈴香1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。
主な著書に『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)、『紛争から平和構築へ』(論創社、共著)など。ウェブサイト「吉田鈴香が見る世界」も公開中。Twitterのアドレスはこちら



■編集部よりお知らせ
本コラムの著者である吉田鈴香さんが参議院選挙に立候補することになりました。 そのため新着記事の更新を停止いたします。[2010年6月14日]

■筆者より
2年弱、読者の皆様の叱咤激励に支えられながら続けてまいりましたことに厚く お礼を申し上げます。ご愛読ありがとうございました。(吉田鈴香)



このコラムについて

吉田鈴香の「世界の中のニッポン」

東ティモールから旧ユーゴスラビア、シエラレオネ、イラクまで、世界の紛争地帯をジャーナリストとして訪ねてきた著者が、国際支援の現状、ODA(政府開発援助)に望むこと、武装解除と平和交渉などを鋭くリポートする。

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