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中国は大丈夫か[15]中国が人手不足に陥る日~2010年日中逆転(2)

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2008年12月18日(木)

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乗用車、薄型テレビ――。豊かさを象徴する耐久消費財の販売台数は、2007年上半期に初めて中国が日本を抜いた。携帯電話の契約者数は日本の5倍を上回る。世界の批判を浴びた食品の安全管理、急増するエネルギー消費、悪化する環境汚染、拡大する軍事費など、不安を抱えつつも中国は膨張を続ける。日本は、この巨大な隣国とどう向き合っていくべきなのか。

* * *

2007年10月1日号より

完全雇用に近づいた中国は、労働集約型からの脱皮に向かう。環境問題、食糧輸入の急増など、中国の動きが世界を揺さぶる。ホンダ、日立、リクルート…日系企業も変化に先んじて動く。

(北京支局 田原 真司、伊藤 暢人)

最近は30~40人集まればいいところ

 「数年前なら工場の入り口に求人の張り紙を出すだけで、翌朝には200~300人が並んでいた。最近は30~40人がいいところだ」。そう話すのは、広東省東莞市の電子機器メーカー、航天電子の西岡健一郎・副董事長だ。

 同社は電子部品商社、飯田通商の子会社で、日本の大手電機メーカーの携帯電話を受託生産している。従業員数は約1800人。電子部品を基板に実装する工程は自動化しているが、本体の組み立ては人手に頼っている。中国の安くて豊富な労働力をフル活用した典型的な工場だ。

人海戦術の前途に暗雲

 東莞市には500社を超える日系企業が進出し、数十万人の従業員を雇用している。同市のある珠江デルタ地域には、内陸部の湖南省、四川省、江西省などの農村から大量の出稼ぎ労働者が集まっており、その人手は無尽蔵に近い――。日系企業のほとんどは、そんな触れ込みを当てにしてやってきた。

 ところが2~3年前から、珠江デルタの雇用環境に変化が表れた。人手不足とまでは言えないものの、以前のように簡単には大量の人手を集められなくなったのだ。

 珠江デルタの工場では、生産の繁閑に合わせて従業員の数を調節するのが常識だった。受注が増えれば人を採用し、減れば解雇することで、総人件費を抑えられるからだ。

 しかし雇用環境の変化で、それが難しくなってきた。「年末の繁忙期に向けて500~600人を増やさなければならないが、早め早めに採用していく。中国は労働力が余っているという常識は捨てなければならない」と西岡副董事長は話す。

 珠江デルタで起きている変化の背景に一体何があるのだろうか。

賃金上昇への分水嶺「ルイスの転換点」

 「ルイスの転換点」。中国の経済論壇で、昨年からにわかに注目されているキーワードがある。発展途上国の工業化の過程で生じる、労働力供給と賃金の関係の変化を説明するもので、1979年にノーベル経済学賞を受賞した英国の開発経済学者、アーサー・ルイスが提唱した学説だ。

 発展途上国の多くでは、農業部門に大量の余剰労働力が存在し、経済発展とともに工業部門に吸収されていく。この余剰労働力がなくなるまでは、賃金は労働者の生存に必要最低限の水準から上がらない。しかし余剰労働力が枯渇すると、工業部門は農業部門から雇用を奪う形で労働力を確保しなければならず、賃金が上昇し始める。このタイミングをルイスの転換点と呼ぶのである。

労働力の逼迫から賃金の上昇は避けられない

 この問題を最初に中国で提起したのは、中央政府直属の政策シンクタンク、中国社会科学院の蔡ホウ・人口労働経済研究所所長だ。蔡所長は、中国の農村部の余剰労働力はこれまで考えられていたほど多くなく、企業が求める若い労働力は枯渇に近づいているという衝撃的な調査結果を発表し、一躍時の人となった。

 国際連合の推計によれば、中国の総人口は2030年頃まで増加を続け、14億6000万人に達する。しかし生産年齢人口(15~59歳)は2010年頃を過ぎると増加が止まり、2020年以降は減少に向かう。

 蔡所長が提起した仮説が正しければ、農村部には出稼ぎ労働者を大量に供給する余力はなく、2010年頃からは中国全体の総労働力も増えないことになる。中国経済がこのまま高度成長を続ければ、労働力の逼迫から賃金の上昇は避けられない。

人民元はさらに上昇へ

 もっとも、戦後の日本は1960年代にルイスの転換点を通過したが、日本経済の成長はその後も90年代のバブル崩壊まで続いた。賃金の上昇を上回るスピードで企業の収益が伸びたうえ、国民の所得増加で内需が拡大したからだ。

 13億の人口を抱える中国は、潜在的な国内市場の規模が日本よりもはるかに大きい。ルイスの転換点は、労働集約型の産業にとっては試練だが、中国経済にとっては本格的な内需主導型の成長に移行する転換点にもなり得る。

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