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やはり現れた、ネット文化革命「08憲章」

ネット蜂起を呼び掛けていた網民の声

2008年12月19日(金)

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 2008年12月9日、中国の網民(ネット市民)の間に閃光が走った。中国共産党の一党独裁を糾弾し、民主と自由、そして人権尊重等を求める「08憲章」なるものがネット空間に出現したからである。

 本来なら世界人権宣言が可決された1948年12月10日に合わせて、12月10日に公開されるはずだったが、起草者の主たるメンバーの存在が事前に発覚して当局に逮捕される危険が迫っているとの内部情報を受けて、急遽前日に公開されたとのこと(正式公布日は12月10日となっている)。

 そして、彼らの危惧は現実となった。

 発起人と目される劉暁波は逮捕され、釈放を求める署名活動はいま、世界中の華僑華人のネット空間を満たしている。公開時には実名入りのネット署名者の数が303人であったものが、12月14日時点では1231人に増えた。逮捕されることを覚悟しても抗議の声をあげる人が増えているのだろう。署名者の中には著名な学者や作家、人権派弁護士や新聞記者など、知識人が多い。

 数回にわたってネット上での中国政府による検閲制度を紹介してきたが、この事件でも中国語のGoogle(谷歌)検索で「08憲章」というキーワードを、単語のセットで検索した時に出てくる記事数は、一時期は521万件を越えたが、見る見る削除されて12月15日の夕方ごろには1万件台に収束していった(「08」でも「憲」でも「章」でも引っ掛かる件数は中国語簡体字で48万件、繁体字も含めると80万件ほど残っている)。なお、ここに示した数値は全て北京においてパソコンにアクセスした時の数値である。北京にいる知人がほぼ3時間おきに知らせて来てくれたものだ。

 当初の件数が膨らんだのは削除が間に合わなかったこともあろうが、もう一つには、増えていく署名者を掌握するために当局がしばらく泳がせておこうと考えたからかもしれない。しかし拡大を抑える方に徹底したのだろうか、12月15日の夕方現在で残っている記事の中には、署名を呼びかけるものはほとんど見られなくなり、「08憲章」を非難するトーンのものが目立つようになった。

 こういった事態が起こることは、私がこの連載に手をつけた頃から予想していた。これまでご覧いただいたように、中国は「民主」の導き手として、官と民(ネット市民=網民)がネット空間における主導権を激しく争っている。だが、民主の土台である「言論の自由」について、中国政府が見せている顔は、検閲をはじめとした非常に厳しいものだ。

言論抑圧への怒りが爆発し「ネット蜂起」

 中国の庶民は、貧富の格差が大きいだけでなく、官が大企業と結びついて特権をほしいままに悪用し私腹を肥やしている現状に大いなる危機感を抱いている。網民はその庶民の代弁者として改善を求めるために膨大な書き込みを行っているのだが、その主張が次々と検閲に遭い削除されていく。それが民主と言えるのか。網民の大きな不満はそこにある。今回の事件はそれが形を取って爆発したものだ。

 今年の8月頃に発見した以下に紹介するブログは、「08憲章」と同根の動きがいくつも潜んでいることを示す例だろう。ブログの作者は、ブログの最後に「尊厳のために我々は“ネット蜂起”を起こそうではないか!」と、不特定多数の網民に呼びかけていたのである。

 彼の論点はなかなか興味深く、しかも「民主」を巡る争いから浸みだしてくる、政府の一見不可解な動きを見せてくれる。それこそが私がこの連載で一番掘り下げたい個所でもあるのだ。

 まずは彼のブログ「博客日報」(「博客」は“Bo-Ke”と発音し、「ブログ」という意味)を読んでみよう。発表日は2008年7月2日で、作者のハンドルネームは漢尼抜(ハンニーバー。中国文字の「抜」には右肩に「、」がある。なお、2008年12月18日時点では、サーバーが故障し修繕中である旨のお詫びとお知らせ、このブログのメールアドレスが表示されている)。ネット警察に発見されにくいように、地名を中国語の発音記号で表現したり、「暴動」という単語を用いるときに「暴」と「動」の間に「/」を入れて「暴/動」と表現していることが、興味を引く。

 タイトルは「言論の自由は与えられるものか、それとも勝ち取るものなのか」である。

 書き出しは、2008年6月に貴州の瓮安(おうあん)で起きた若者の暴動(万を超える若者が警察や公安局を襲って焼き打ちをした、という事件)に関して論じているが、そこは主題でないので、事件の内容に関しては省略する。

物権法の施行を足がかりに

 彼は、「なぜ政府は情報を封鎖しようとするのか?なぜCCTV(中央電視台)や新華網は暴徒の怒りの真の原因を報道する勇気を持っていないのか?」という疑問をぶつけた上で、 現在のネット検閲に関して、以下のように述べている。

 インターネットは網民のネットであり、網站(もうたん。ウェブサイトの意味。站は日本語の駅に相当)は站長(駅長)の私有財産である。ネット上の全ての書き込みには全て網民の私的所有権がある。站長は自分のお金を投じてネット空間とドメインネームを購入しており、血の吐くような思いをして網民とともにネット家園を創り上げてきたのだ。

 政府からは一銭のお金ももらってない。政府は私営ウェブサイトのいかなる株も持っていないし、<物権法>によって、政府は私営ウェブサイトのいかなる支配株主持ち分も持ってはならないことになっているはずだ。站長の一挙一動を指図する資格が、政府のどこにあるというのか?あなたたちは今まで、テレビ局や紙媒体のメディアをずっと操縦してきたではないか。あなたたちはわれわれ納税者のお金を使ってメディアがあなたたちの“喉と舌”になるよう仕向けてきた。だというのに、今度はわれわれが僅かに持っているネットの自由まで見逃さないというのか?

 <物権法>(正確には中華人民共和国物権法)というのは、2007年3月16日に日本の国会に相当する全人代(全国人民代表大会)で可決され、その年の10月1日から施行され始めた、国民の財産権を保護する重要な法律である。

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「やはり現れた、ネット文化革命「08憲章」」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官