この11月、中国における乗用車販売台数は前年比10%減少した。ここ数年、2ケタ成長を続けてきた中国市場だが、世界的な不況が影を落とし始めた。「2010年には1000万台」と言われた巨大市場もバブルにかさ上げされた面が大きく、中国市場に前のめりになっていた米ゼネラル・モーターズも足をすくわれた格好だ。2004年に掲載された「沸騰する自動車市場」。第2回は「背水の陣を敷く欧米メーカー」。
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2004年7月12日号より
1990年代初めに数十万台レベルだった中国の自動車市場は、2010年に1000万台、2020年には1700万台を超えると予想されている。だが、あまりに急速な拡大を前に、「中国自動車バブル」との見方も出ている。それでも、中国に熱い視線を注ぐ自動車メーカーの勢いは止まらない。バブルだろうが何だろうが、中国を手中に収めなければ、グローバルメーカーとして生き残れない。1990年代後半に世界で自動車メーカーの合従連衡劇が繰り広げられたが、今度は中国での勝敗が新たな再編劇を生む可能性がある。
(谷口 徹也=香港支局、伊藤 暢人=ロンドン支局、田原 真司=北京支局、田村 俊一、細田 孝宏、熊野 信一郎、江村 英哲)
「公式パートナー」という誘惑
「北京五輪の公式パートナーに選ばれました」――。6月10日、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、北京で開催した記者会見でこう発表した。VWは2008年の北京五輪において、自動車及び自動車を使った移動サービスを提供する。この日の夕方から、中国ではこのニュースが大きく報道された。
この契約は、VWの今後の中国戦略にとって重要な意味がある。ドイツのダイムラークライスラーや韓国の現代自動車なども候補に挙がっていたが、公式パートナーは1業種1社に限られる。愛国心の強い中国の国民性と、国家を挙げて五輪を支えていこうとする高揚感から考えても、市場におけるVWのブランド力は大きく向上する。VWの負担額は発表されていないが、相当な額を注ぎ込んだと見られる。同社の中国統括会社のヴァルター・ハーネック副社長は「外資系企業の参入が相次ぎ、競争は厳しくなる中で、重要なのはブランド力だ」と力を入れる。
ドイツを中国が超えたVW
VWは1984年に上海汽車と合弁会社「上海VW」を設立し、外資系としては最初に中国に参入した。タクシーとして普及している「サンタナ」や、それより上級車種の「パサート」などを製造販売する。92年には第一汽車とも合弁会社「一汽VW」を設立した。当初はVWグループは合計で50%以上のシェアを持っていた。今でもシェア34%を握る最大手だ。
欧州最大の自動車会社であるVWにとって、今や中国の重要度はドイツ本国をしのぎつつある。2003年の中国での販売台数は69万7207台で、前年比36%増の勢い。ドイツの94万3136台に次ぎ、VWの全販売台数の14%を占める。ここ数年、ドイツでは販売台数が伸び悩んでおり、今年に入ってからは、月によってはドイツの販売台数を中国が上回るようになった。
2003年のVWの総販売台数は501万台余り。中国市場が巨大化し、量産化によるコストの引き下げ競争は激化してくる。そこで生き残るためにも、VWは中国での事業拡大に注力する。
2003年の持ち分法による中国の合弁会社からの利益は5億6100万ユーロ(約730億円)だった。会社全体の税引き前利益は15億2900万ユーロ(約1990億円)なので、その37%を中国で稼いだ計算だ。VWが今後の成長を考えるならば、市場が成熟している西欧から、成長余力があり利益率も高い中国へ力点を移さざるを得ない。
7800億円の巨額投資計画
VWは中国での圧倒的に有利な地位を維持したいところだが、市場全体と比較すれば、同グループの成長の勢いは見劣りする。2003年には市場全体は67%伸びているので、結果的にはシェアを落としてしまった。この年、VW本社ではこれまで中国事業を主導してきたフェルディナンド・ピエヒ前会長らが引退し、中国に詳しいトップが不在となった。そこへ主力製品のモデルチェンジが重なり、本社側で中国事業への対応が遅れたようだ。ここにきて、中国での2工場の新設や研究施設の増強に、約60億ユーロ(7800億円)を投資する計画を打ち出した。
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