「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」

農水省改革チームの提言は国家を動かすか?

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2009年1月13日(火)

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 2008年11月27日、農林水産省から衝撃的な緊急提言が発せられた。「農林水産省改革のための緊急提言」と題した45ページの提言書は、農水省のいわば“ダメぶり”を自己批判し、国民の視点に立った省になろうと呼びかける内容だった。その姿勢を大いに評価する。同時に、農水省改革は果たして農水省だけで完遂可能だろうか、と思う。

大臣主導で、2カ月でまとめた緊急提言

 改革チームが発足したのは、10月初めだった。石破茂大臣が9月に農水省に着任してまもなく構想を発表し、省内の部下に「自由にやれ。責任は俺が取る」と言ったとか。大臣官房秘書課が作業の取りまとめに当たり、16人がその任に就いた。

 提言書の冒頭で、チームの役割をこう位置づけている。

 農林水産省改革チームは、事故米問題を契機として、国民視点から農林水産省の業務・組織の見直しについて検討を行うために設置された。その使命は、当該問題発生の原因究明や直接的な再発防止策を策定するものではない。BSE問題に続いて事故米問題を発生させた農林水産省が抱える根本的な問題点を洗い出し、それを払拭するための改革案を策定することがこの改革チームの使命である。

 つまり事象として表れた事故米のような各事柄の追及ではなく、諸問題を生んだ農水省の体質についての問題提起と、改善のための工程を提言することが目的である。

 提言書では、「指示待ち」「自らの判断で行動することがない」「縦割り」「不透明な政策決定」など、いわゆる役所的な気質の問題点を指摘した後、「今回の改革のポイントは、まさにこのような実態を根こそぎ改革できるかどうかにかかっている」(4ページ)との認識を表している。

 骨子で書き表している「農林水産省の抱える根本的な問題点」は、端的に彼らの考えを理解するには適していると思われるため、ここに記す。
(1)国民のためにこそ存在するという使命感の欠如
(2)事なかれ主義の調整型政策決定
(3)縄張り意識が強く、身内の秩序を優先する組織風土
(4)健全な組織内競争が機能せず、緊張感を生かせない組織運営
(5)攻めよりも守りを重視する消極的判断の横行

 改革チームは10月初めから10回の会合、3回の有識者との意見交換会、意見窓口の設置、全職員対象のアンケート、年齢を区切っての「若手と語る会」の開催など、2カ月間ででき得ることの限りを尽くしたと言ってもよいだろう。

 この件につき筆者は、調査を間近に見ていた大臣官房のある担当者に話を聞くことができた。彼の話では、省内のイントラネットを通じて意見を募集したところ、職員から日頃感じている絶望感とそれを背景とする改革チームへの期待とが続々と寄せられたという。
 
 筆者が「それは内部の人たちが行う調査だからではないか」と問いかけると、彼は「内部だから甘くなる可能性もあったと思います。では外部からの提言ならばよいかというと、農水省はBSEなどでは有識者から提言をもらっておきながら無視するなど、せっかくの外部からの提言を生かしませんでした。そんな経緯があったので、職員たちに危機感とチームへの期待が大きかったですね」と語った。

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著者プロフィール

吉田 鈴香(よしだ・すずか)
ジャーナリスト

吉田 鈴香1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。
主な著書に『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)、『紛争から平和構築へ』(論創社、共著)など。ウェブサイト「吉田鈴香が見る世界」も公開中。Twitterのアドレスはこちら



■編集部よりお知らせ
本コラムの著者である吉田鈴香さんが参議院選挙に立候補することになりました。 そのため新着記事の更新を停止いたします。[2010年6月14日]

■筆者より
2年弱、読者の皆様の叱咤激励に支えられながら続けてまいりましたことに厚く お礼を申し上げます。ご愛読ありがとうございました。(吉田鈴香)



このコラムについて

吉田鈴香の「世界の中のニッポン」

東ティモールから旧ユーゴスラビア、シエラレオネ、イラクまで、世界の紛争地帯をジャーナリストとして訪ねてきた著者が、国際支援の現状、ODA(政府開発援助)に望むこと、武装解除と平和交渉などを鋭くリポートする。

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