原油高騰を背景に、穀物大手からエタノールメジャーに成長した米ADM。
我が世の春も束の間、原油下落でエタノールの収益性が悪化、株価も低迷。
環境問題や食糧問題から批判が集まるバイオ燃料に今後も固執するのか。
世界最大の米穀物加工会社アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)のパトリシア・ウォルツCEO(最高経営責任者)は、原油価格が下落する前から、極めて難しいビジネス上の綱渡りをしていた。その綱渡りが今や実に危険な事態に陥りつつある。
同社にとって2008年は激動の年だった。トウモロコシ由来のエタノールに対する熱狂が冷める中、ウォルツCEO(55歳)は物議を醸すこの燃料添加物への肩入れを続け、顧客企業を怒らせている。原油下落で収益性が落ちたエタノールは環境に悪く、食用トウモロコシをはじめ様々な食品価格の高騰を招いたと批判の的だ。
日頃は冷静だが、ウォルツCEOが自らが耐えている精神的緊張を垣間見せることがある。イリノイ州ディケーターの本社での会議中、インターンの学生たちが同社のエタノール重視の姿勢について質問すると、厳しい口調で「ADMはただのエタノール企業ではありません。もう一度言います。皆さん、聞いていますか。我々はただのエタノール企業ではないのです」と答えた。
その通り。確かにエタノール事業は2008年、利益の19%、売上高の7%を稼いだ単独では最大事業だが、小麦やココア、大豆、植物油用種子といった穀物加工事業に比べると小さい。
来年初めまでに2工場を増設
ウォルツCEOは原油が上昇し、代替のバイオ燃料が注目された時にエタノール重視戦略を取り、今もその賭けにこだわっている。2010年初めまでに2工場を増設する計画で、年間生産量は11億ガロンから19億ガロンに増える。トウモロコシからエタノールを作ることは近頃支持されないが、これに代わる原料は現状ではまだない。ADMはブラジルで砂糖を原料とするエタノール生産の合弁で折衝中だが、これはブラジル国内の需要を満たすに過ぎない。
エタノール市場の崩壊は著しい。1900年代初頭T型フォードに採用されて普及したエタノールは、コスト削減のために化石燃料に混ぜて使われる。原油価格上昇で需要は急増、増産が進んだが、原油下落で需要は激減した。
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