「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」

中国は大丈夫か[34]アニメは国家事業

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2009年1月23日(金)

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世界が注目するクールジャパン。だがメジャーデビューで浮かれていると、イチロー、松坂大輔を失って人気低迷に悩むプロ野球の轍を踏む。人材流出と地盤沈下を食い止められない日本のアニメは、圧倒的な数の力で押し寄せる中国アニメの荒波に耐えられるだろうか。

* * *

2007年12月3日号より

中国がアニメを国家事業に位置づけ、日本を猛追し始めた。エリートを大量に大学で育て、国産アニメ制作を加速する。輸入障壁も高く、日本アニメ普及には現地進出するしかない。

(編集委員 大西 康之、吉野 次郎、香港支局 熊野 信一郎)

卒業生はテレビ局やゲーム会社などから引く手あまた

 夜8時を過ぎてもそこは活気に溢れている。ある部屋には、大型スクリーンに映し出された作品を観賞し、議論する学生がいる。別の部屋には、パンを頬張りながら、フィギュア作製に没頭する生徒がいる。人の動きをCGで再現する「モーション・キャプチャーシステム」など豪華な機材が揃う真新しい建物は、学校というよりもテレビ局や大手アニメ制作会社のようだ。

 北京市の学園地帯にある北京電影学院。メディア関係ではアジア最大規模を誇るこの大学に、中国アニメ産業の将来を担うスーパーエリート700人が学ぶ「動画学院」がある。

 最高責任者、孫立軍・動画学院長はこう話す。「日本の学生はアニメを趣味として学んでいる。この学院では優秀な学生がアニメの専門性を高めるよう優れた教育をしている。卒業後もほかの職種より好待遇で働ける」。

 実際、同校の卒業生はテレビ局やアニメ制作会社、ゲーム会社などから引く手あまたで、劣悪な労働環境に苦しむ日本のアニメクリエーターとは雲泥の差がある。

4000人受験、合格は80人

 とはいえ、クリエーティブな才能は、学校で簡単に教えられないはずだ。そう聞くと、孫学院長は事もなげにこう答えた。「面接試験で受験者に自己表現させる課題を与えればいい。通り一遍の答えしか返せない人材は我が校には入れない。創造性に秀でた人材だけを合格させるようにしている」。

 今年の受験者4000人のうち、合格者は80人しかいない。競争率は実に50倍だ。アニメの世界を志す大量の若者がいるからこそなせる業だ。

 北京電影学院はもともと映画界の人材育成で知られ、張藝謀監督ら数多くの監督や俳優を輩出してきた。2002年に卒業した人気女優、苗圃さんは「ものすごい数の人が受験して、俳優コースに入学できたのは25人だけ。陝西省で受かったのは私1人」と解説する。

 しかしここ数年は、映画コースを上回るほどの人気が動画学院に集まっているという。日本や欧米の下請けから脱し、国産アニメの競争力を世界最高水準にまで引き上げようとする中国の国策が、アニメブームを煽っている。

全国17カ所に「アニメ産業基地」

 中国のアニメ産業振興策の2本柱が、海外アニメの需給コントロールと国産アニメの制作体制強化だ。

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著者プロフィール

谷口 徹也(たにぐち・てつや)

日経エコロジー編集長。日経ビジネス、日経情報ストラテジーの記者などを経て、2002年1月〜2007年8月日経ビジネス香港支局、2007年9月〜2009年5月日経ビジネス副編集長、2009年6月日経ビジネスオンライン副編集長。2012年1月から現職。



このコラムについて

日経ビジネスが描いた日本経済の40年

2009年10月に創刊40周年を迎える日経ビジネス。この間、日経ビジネスは企業の栄枯盛衰の現場に立ち会い、多くの記事を掲載し、特集企画では「会社の寿命」「軽・薄・短・小」など時代を切り拓くキーワードを生み出してきました。創刊40周年のカウントダウン企画として、日経ビジネスが掲載してきた記事を、現在の問題意識から時代を超えてセレクトし、シリーズで掲載します。経営、企業、マクロ経済、金融、人…、日本経済が直面する問題のヒントが見つかるはずです。

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