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ネットに「言論の自由」を求める訴訟が起こされた

あっというまに削除された提訴者の名前

2009年1月23日(金)

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 幸せってなに? と、柄にもない(?)お話をしようと思っていたら、また大きなニュースが中国から飛び込んできた。

 1月19日、中国ではネット上での「言論の自由」に関する訴訟が起こされた。

 政府の監視に屈して、一党独裁を批判し言論の自由等を求める文書を封鎖したポータルサイト「新浪網」を「憲法で保障されている言論の自由を守れ」と、訴えたのだ。提訴したのは元安徽省政治協商会議の常務委員だった汪兆鈞(北京にある会社の社長)。

 彼は2008年12月31日に「中国全国人民に告ぐ書――2009、中国社会形勢転換開始の年」というブログを「新浪網」で立ち上げている彼の個人ブログサイトで発表したのだが、この文書が削除されただけでなく、彼のブログサイト自身も封鎖されてしまったのだという。

 この汪兆鈞の友達であるという北京の知人から「早くネットを見ろ! さもないとすぐに削除されるぞ」と言われたのが、19日の夜中。慌ててアクセスしたが、時すでに遅し。

 中国語簡体字のgoogle.cnで"汪兆鈞"と入れたが、ヒット数はみごとに「ゼロ」!。「汪兆鈞に関するネット空間」は、きれいに掃除されて、空っぽになっていたのである(※彼がこの提訴に至るお話は、最後にまとめた)。

 もしやと思い、"08憲章"というフレーズを検索してみたところ、なんと、こちらもヒット数は「ゼロ」になっている。

ネット世論への警戒ぶりが白日に

 2008年12月10日、世界人権宣言に合わせて、中国共産党の一党独裁を糾弾し、民主と自由、そして人権尊重等を求める「08憲章」なるものが中国のネット空間に出現したことを前にご紹介した。私は「遂にこういう声が現われたか」という思いとともに、これに関連するネット記事および網民(ネット市民)の書き込みを当局がどう裁くかに興味を集中していた。ピーク時には521万件に達した書き込みと記事は、見る見る数万から数千そして数百へと激減していった。そして、今はゼロに。

 胡錦濤が、民主を巡るボトムアップの胎動、すなわち「08憲章」と今回の訴訟のような動きを、どれほど警戒しているかがよくわかる。今回の事件は、その証左の一つだ。

なお、中国からでなければこれらの情報にアクセスできる。海外にあるサイトの情報は、国が監視し、見せたくないものは「防火長城(Great Fire Wall)」で規制される。中国のグーグル(google.cn、cnはChina)はその長城の内側にあるので、海外に存在する08憲章を扱った記事が見つからなくなった。ただし「自由門」などのソフトが地下で出回っており、意思とテクニックがあれば、米国のグーグル(google.com)に接続し、情報を得ることができる

 この動き、はたしてどうなるのか--。

 第1回から報告してきたようにネットに対して行ってきた「徹底した管理」は、とうとう空間を"空っぽ"にまでしてしまった。こんなところまでやらねばならないのなら、果たしてトップダウンの民主化などというものが可能になるのか、そして、そういうことが可能だと、胡錦濤は本当に思っているのだろうかと、自問自答せずにはいられない。

 北京ゲリラ取材を行った時、私は「胡錦濤は民生を重んじる主席として慕われ、また民主民主とばかり言っているのに、なぜネット言論に関してだけは、ここまで厳しく監視するのでしょうか」と、ある要人(中国共産党のバックボーン、マルクス主義の大理論家でもある)に聞いたが、その答は

「党は、ネット空間をまるごと『人民網』と『新華網』に置き換えてしまいたいんですよ。ネット空間というのは、今までのどんな宣伝媒体よりも強力ですからね。一方、民意が現われる場所でもあるでしょう? 政府は"従下而上"(ボトムアップ)を、一番恐れているんですよ」

 というものであった(人民網は中国共産党の機関紙「人民日報」の電子版、新華網は中華人民共和国国務院直属の通信社である新華(通信)社の電子版)。

結局、官が勝利するのか?

 そこで私は、維権網がまとめた「ネット空間官民争奪戦(詳細はこちら→中国政府のネット管理・統制方法を初公開 「ネット空間官民争奪リポート」その1)」のリポートを見せて、「じゃあ、ここにあるような政府のネットへの統制はやはり、真実なんでしょうか」と聞いたところ、「それを読んだことはないが、しかし、そういう事実があるのは確かでしょう」という答が戻ってきた。

 となると、今回の事件は「官側が争奪戦の勝者になった」ということになるのだろうか。

 半年ほど前なら、まだ「cn」のネット空間から中国の民の声を拾い上げることができたというのに、今ではすっかり「お掃除」されてしまって、塵一つ残っていない。

 今年は1949年の中華人民共和国建国から数えて60年、建国60周年記念の年だ。天安門事件が起きた1989年から数えると20周年記念で、何かが起きるかもしれないと、世界中のチャイナウォッチャーは目を光らせている。

 きっと大きな民主化運動が勃発するにちがいないと、関係者は思っている。私もわずかながらそうした危惧を抱かずにはいられない。

 しかし、中国にはもう一つ大きな要素がある。

 それは中国のネット市民、すなわち網民の7割を占めている1980年以降に生まれた「80后(バーリンホウ)※注」たちの意識だ。

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「ネットに「言論の自由」を求める訴訟が起こされた」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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牛島 信 弁護士