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(4)「黒人大統領」が目指す夢

経済危機はマイノリティーパワーが救う

2009年1月23日(金)

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(前回「(3)歴史の復讐 民族分断とテロの悲劇を越えて 」から読む)

 1月20日、バラク・オバマが第44代米国大統領に就任した。

 そして就任式当日、首都ワシントンは夜明け前から人々が押し寄せてきた。パトカーのサイレンが鳴り響き、交差点など街の至る所に警官が配備されていた。そんな厳戒態勢の首都で、人々は連邦議会議事堂を目指した。


就任式ゲート前、就任式会場

 就任式に用意されたチケットは25万枚。だが、約200万人以上が首都に集まってくる。そこには黒人の姿が目立った。

「黒人初の大統領」

 その歴史的瞬間に立ち会おうというわけだ。人混みに埋もれながら、車椅子でやってきた高齢の黒人女性もその一人だった。

 「どうしてもここに来たかったの。だって今日、マーチン・ルーサー・キングの夢がかなうのよ」

****

 半世紀前、米南部で牧師を務めていたキングは、地元での人種差別に立ち上がり、その後、全米を揺るがす公民権運動の先導役を果たした。そして、1963年にはワシントン大行進を決行し、「私には夢がある」(I have a dream)と語った名演説を行っている。

 「将来、すべての人間が平等であるという国家の信条が実現する日が来る」

 キングは演説で、そう「夢」を語った。
 それは、当時の米国が、憲法でうたっている平等の精神に背いていることを示している。演説の中で、キングは「黒人に不渡り手形を渡した」と表現した。そして、25万人の聴衆に対して、こう宣言した。

 「今日、我々が集まったのは、首都ワシントンで、手形を換金してもらうためだ」

 キングの後ろには、奴隷解放宣言を出したエイブラハム・リンカーンの像が建っていた。国を二分した南北戦争時代の1862年、第16代大統領だったリンカーンは、奴隷商人によってアフリカ大陸から連行された黒人に、人権を回復させようと図った。


リンカーン記念館


リンカーン記念館

 しかし、その後も人種差別が消えることはなかった。米南部では黒人へのリンチや殺人が後を絶たず、しかも白人はその罪を問われない…。

 奴隷解放宣言から1世紀という時を経て、新たな歴史を切りひらいたキング。「非暴力」を貫く運動が一部の白人層にも支持され、公民権運動というムーブメントを生み出した。だが、1968年4月、テネシー州メンフィスで銃弾に倒れる。

 それから、さらに40年という時が流れ、次の歴史を刻む瞬間がやってきた。再びワシントンの広場(モール)は群衆で埋め尽くされた。

 就任式の中で、牧師のリック・ウォーレンは聴衆にこう語りかけた。

「比類なき可能性の大地に生きていることを感謝します。アフリカからの移民の息子が、この国最高の指導者と成ることができたこの地に。今日、キング牧師や多くの苦難を受けた人々が、天国で歓喜の叫びを上げていることでしょう」

 オバマも就任演説で、こう振り返った。

「我々は、南北戦争と人種差別という苦しい体験を経て、その暗い歴史の1章から、強く、結束した状態で抜け出してきた」

 だが、人種問題がいまだ解決されていないことも認めた。

「我々は信じている。古い憎悪はいつか過ぎ去る、と。人種の壁は、間もなく消え去るだろう」

 かつてのような、人権を踏みにじるような人種差別こそ影を潜めたが、米国内には、未だ心の中に潜む人種間対立が深い溝となって残っている。

 だからこそ、初の黒人大統領には人種問題の解決が期待されている。そして、「危機の最中にある」(オバマ)という米国経済の復興は、人種問題と切り離せないことを、彼は見抜いている。

 大統領となって最初に突きつけられる経済課題が、自動車産業の救済だ。なぜ、ビッグスリーは破綻寸前に追い込まれたのか。その真因を探っていくと、人種問題が見えてくる。

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「(4)「黒人大統領」が目指す夢」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス編集委員

日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長、日本経済新聞編集委員を経て、2017年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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