2008年、中国における自動車販売台数は前年比6.7%増の928万台だった。それまでの3年間は伸び率が20%を上回っていたから急減速だ。「2010年には1000万台」と言われた巨大市場もバブルにかさ上げされた面が大きかった。巨大な販売台数を前提としていた自動車メーカーは今度、どう変わっていくのだろうか。2006年に掲載した「中国発自動車大革命」。第5回は「悩ましい『LIME』」
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2006年9月18日号より
中国の自動車販売台数は今年、670万台を超え、584万台の日本を抜き、米国に次ぐ世界2位に躍り出る見込み。原動力となったのが、3万元(約44万円)という値段に代表される民族系メーカーの安価なクルマだ。「安い価格でそれなりの品質」だった中国車も外国から技術を導入し、品質向上を急いでいる。中東やアフリカ、中南米などの低所得新興国への輸出ラッシュも始まった。
(編集委員 石黒 千賀子、伊藤 暢人、宮東 治彦、大西 孝弘、佐藤 嘉彦、
北京支局 田原 真司)
8月8日午後4時頃、福建省福州市の郊外。田んぼの間を抜ける片側2車線の幹線道路の車道に、10人ほどの人だかりができていた。トレーラーが停車しており、その後輪付近に粉々に砕けた黒いバイクと、血だらけの男性が動かずに倒れている。バイクの運転手がトレーラーに巻き込まれたらしく、その遺体を前に周囲の人間は呆然とたたずむだけだった。
安全や品質のプロ不足
これは、本誌記者が遭遇した交通事故の一幕だ。
今、中国では交通事故が深刻な問題となっている。2001年からの4年間では、自動車事故による死者は毎年10万人を超えていた。2005年には若干減ったとはいえ、9万8738人。それに対し、日本は6871人に過ぎない。
今年販売台数が日本を超える中国では、この事故のような「負の面」も確実に膨らんでいる。中国が質量を兼ね備えた自動車大国になるには、自らが抱える課題を解決しなければならない。その中国の課題もまた「LIME」に集約される。
まず、人的資源(Limited Human Resources)が不足している。組み立てなどの単純作業の担い手ではなく、クルマの開発作業の中核を担う専門的な知識を持った人材が足りない。
京都大学経済学部の塩地洋教授は「中国系では研究開発の人材が不足している。各社とも研究開発には200〜300人しかおらず、内部の力には限界がある」と見る。交通事故による死者が多いのも、安全技術の開発が置き去りになっていることは無視できない。
それよりも深刻なのは、品質確保のできる人材の枯渇だ。部品レベルでの不良率は日本ではppm(100万分の1)単位で、1ケタの水準。ところが、中国では2万以上となる。品質の作り込みができる人材は少ない。
知的財産権(Intellectual Property)の侵害も深刻だ。
8月30日、広東省広州市の自動車販売店街で、ホンダ系販売店の前を白いSUV(多目的スポーツ車)が走っていた。ヒット車の「CR-V」かと思えば、後ろのドアに書かれた車名は「S-RV」。予備タイヤの覆いには「HONDA」と描かれている徹底ぶりだ。
知財法の改正は2008年か
ホンダが「CR-Vがコピーされた」として、北京市高級人民法院に外観意匠権侵害の訴訟を起こしたのは2003年11月。だが、いつの間にか、担当は河北省の人民法院に移り、いまだに審理すら始まっていない。
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