「茂木崇の「タイムズスクエアに魅せられて」」

ニューヨークのケーブルチャンネル「NY1」 、その成功の理由を探る

「見るに値する唯一のローカルニュース」

バックナンバー

2009年2月13日(金)

1/3ページ

印刷ページ

ステーション・ロゴ

 ニューヨーク市内のニュースを24時間休みなく伝えるケーブルチャンネル「NY1」。

 私もNY1を頼りにしている1人である。日本ほどではないものの、ニューヨークの地上波のローカルニュースもバラエティー化が進み、アンカー同士の雑談に割く時間が増えている。息の合った掛け合いはそれはそれで楽しいが、短時間のうちに主要なニュースと天気をきちんと頭に入れようとするとNY1に軍配が上がる。

 NY1は、記者がビデオカメラを持って1人で取材するビデオジャーナリズムの先駆的存在としても知られる。私は小回りの利くビデオジャーナリストの仕事ぶりを観察したいと思い、NY1に取材を申し込んだ。保険の問題があって記者の取材に同行するのは実現しなかったが、チェルシー・マーケット・ビルにある編集局において開局当初からのスタッフで現在はアンカーのローマ・トーレにインタビューし、NY1の生みの親の1人であるスティーブ・ポーラスにも質問をぶつけることができた。

ニューヨーカーのための報道機関

ローカルニュース「NY1」アンカーのローマ・トーレ

「NY1」アンカーのローマ・トーレ

 NY1は「見るに値する唯一のローカルニュース」を局のキャッチフレーズとし、地域密着でニュースをストレートかつナンセンスなしに伝えるのをモットーにしている。ウィットを差し挟むのは最小限にとどめている。現在は、40人以上のフルタイムの記者が勤務している。

 ニューヨークの地上波のローカルニュースでは、スタッフがお膳立てをした原稿を読むことしかできない美人の女性がニュースを伝えることがあるが、NY1ではそういうことはない。

 トーレによると、ニューヨーカーは簡単にバカにされる人々ではなく、ニューヨークを愛し熟知している記者に親近感を抱く。だから、NY1はニューヨークをよく知り、ジャーナリストとしての基礎を習得している人を記者として採用している。この結果、美貌だけが取りえの人は生き残れず、仕事のできる記者が活躍の場を広げていくことになるのだという。

 米国のテレビニュースで白人男性以外の人が活躍の場を見いだすのは、バラク・オバマが大統領になったとはいえ依然として不利な部分がある。だが、NY1は多彩な側面を持つニューヨークを反映した報道機関を目指しているため、様々なエスニシティーの記者を採用する。NY1に親しんでいる方なら、CNNに移籍したサンドラ・エンドウ記者をご記憶の方も多いだろう。彼女は日系2世である。特にクオータ(割り当て)制度を設けることはしていないそうだ。

 NY1の記者は自らビデオカメラを持って取材に出かけ、リポートの文面を練り、編集作業も行う。このため、NY1の編集局では、ライザ・ミネリやフランク・シナトラの歌声で知られるNew York, New Yorkの歌詞をもじって、If you can make it on NY1, you’ll make it anywhere.という話になることもあるのだそうだ。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント1 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

茂木 崇(もぎ・たかし)

茂木 崇

1970年生まれ。東京工芸大学専任講師。専門はマス・コミュニケーション論、アーツ・マネジメント論で、守備範囲はニューヨークの新聞・雑誌・テレビ・デジタルメディア・広告・音楽・ブロードウェイ。1年のうち2カ月ほどをニューヨークでの取材と調査にあてている。



このコラムについて

茂木崇の「タイムズスクエアに魅せられて」

 世界の文明の十字路、米ニューヨーク・タイムズスクエア。この地に魅せられ、研究を重ねる筆者が、米国のメディア、エンターテインメント、ファッション産業などについて、縦横無尽にテーマを選び、最新動向をリポートする。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内