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中国の民主はいつ実現するのか

2009年2月20日(金)

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 私は今年で68歳になる。謝韜氏は88歳。私は思い立ったらその日にでも成田を飛び立ち北京に突撃してゲリラ取材をするだけの体力があるが、謝韜氏は私よりも20も年上だ。まだ語り足りないものがあるものの、約束の時間は1月2日午前9時半から11時半までだったので、この辺で遠慮すべきだろうと、この日は諦めてホテルに戻ることにした。

 中国は一般には1月1日の正月は祝わない。中華人民共和国が誕生した時には、まだ90%が農民であったような国なので、農歴の旧正月に相当する春節を“正月”と位置付けて祝う習慣が今でも根強く残っている。

 だから、元旦早々という遠慮は必要はないものの、それでも遠慮が先に立ち、これだけの収穫があれば善しとしようと自分に言い聞かせ、足りないところは帰国後にメールででも質問すれば良いと考えることにしてホテルの部屋に戻ったのだ。

 ところが、部屋で取材記録を整理していると、携帯が鳴った。謝韜氏からだ。
 飛びつくように受信ボタンを押すと彼もまた「どうもまだ話し足りない」という。

謝韜氏からの再度の誘い

 「いやあ、実に楽しかった。あんなに早く帰してしまうんじゃなかったと後悔してるんですよ。どうですか、明日、もう一度いらっしゃいませんか」というお誘いだった。

「私はもう齢なので、またお目にかかれるかどうかは分からない。あなたと話していると知的刺激を受けて、私の体にもいいんですよ。わざわざ北京に来て下さったのですから、どうです、明日の午後にでも遊びに来ませんか?」

 なんとありがたい! 私は大喜びで誘いに応じた。

 昨日最初に私を迎え入れてくれた時の行儀よさと違い、謝韜ご夫妻は両手を大きく広げて相好を崩し、「やあ、来てくれましたか!ありがとう、ありがとう!」と、まさに熱烈歓迎してくれた。齢をとってもなお、新しい友人ができるというのは嬉しいことだと言って。

「実は」と謝韜氏は切り出した。
「最初、鉄流から話があった時は、実は少々用心していたのですよ。でもあなたが長春で生まれて革命戦争を経験したというのを聞き、また筑波大学の名誉教授だということも知って、ようやく会う決意をしたんです。筑波大学には私は2回ほど行ったことがあります。80年代でしたがね」
「まあ、そうだったんですか。私は90年代に入ってから筑波に移りましたので、残念ながら、そのときはお会いできなかったわけですよね」
「ええ。しかし、こうしてわざわざ東京から北京に来て下さった。うれしいことです」
「ありがとうございます。私はまさに謝韜先生に遭うために、わざわざ来たのです。ですから、お会いできる時間をまた取って頂いて、嬉しくてなりません」

 こうして私はまた取材を始めてしまった。何より、胡錦濤や温家宝が、謝韜氏の論文をどのように受け止めているか、それを知りたかったのだ。それにより、今後の民主の行方の予測が、いくらかでも正解に近づいていくのではないかと期待したのである。

 それでは、前回に引き続いて謝韜氏との対話をご紹介しよう。

五四運動の位置づけに「民主」という言葉を使った温家宝

遠藤:実は私は、胡錦濤国家主席や温家宝首相が謝韜先生の論文をどのように受け止めているかを知りたいのですが、それに関しては、どのように思われますか?

謝韜:さあ、それはどうでしょうねぇ。直接本人に聞かないと何とも言えませんし、また聞いても明確なことは言わないものですが、しかし少なくとも重要視はしていると私は思ってますよ。というのはですね、私がこの論文を発表した2007年2月の後のことですが、実はその年の5月4日、つまり五四運動(※)記念日にですね、温家宝が中国人民大学で講演をしたんですよ。

注:
 五四運動とは、第一次世界大戦の講和条約として1919年に締結されたベルサイユ条約に不満を持った北京大学の学生が暴動を起こしたことをきっかけに全国の都市に広がっていった反帝国主義・反封建主義運動。5月4日に起きたことから「五四運動」という名が付いた。中国では「民主と科学」を旗印とした「新民主主義」の始まりと位置付けられ、1921年の中国共産党創立を促した。そのため、中華人民共和国建国後は5月4日を記念して「中国青年節」とした

遠藤:ああ、その記事、ネットで見ました。謝韜先生が副学長をしておられた中国人民大学をわざわざ選んだことには、どういう意味があるのかな、と、そのことが気になっていました。

謝韜:そうでしたか。ネットではどこまで書いてあったか知りませんが、温家宝がその講演で使った言葉が、一つの事実を暗示していると考えることはできます。

 つまり、江沢民時代には五四運動は「愛国運動」としか位置づけられていなかったのですが、このとき温家宝は初めて「民主と科学が五四精神だ」と断言したのです。わざわざ中国人民大学に行って“民主”という言葉を使って五四運動を位置付けた。

遠藤:ああ、民主と科学。そういえば、五四運動の時は「De(徳)先生とSai(賽)先生」(DemocracyのDeと、ScienceのSci)という言葉が若者の間に流行ったようですね。

謝韜:そうそう、そういう言葉がありました。その原点に戻って、“愛国”ではなく、“民主”を使った。おまけに「国家の目標」として「民主と和諧」を位置づけたんです。そしてその後の記者会見でも世界の普遍的価値は「民主、自由、憲政」等にあると認めたのですよ。

遠藤:まあ、そうですか。“民主”ずくめですね。しかも“憲政”も入れた。ということは謝韜先生の主張を認めているに等しいと解釈できますね。

謝韜:口には出さないでしょうが、否定をしたとは思っていません。

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「中国の民主はいつ実現するのか」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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