Pete Engardio (BusinessWeek誌、国際シニアライター)
米国時間2009年2月12日更新 「The Electric Car Battery War」
ニューヨークのマンハッタンにある米エナ1(Ener1)(HEV)の質素な本社は、やがて業界の主要企業になる可能性を秘めているとはとても思えない。
同社の経営テコ入れのため、昨年8月、ヘッジファンドマネジャーからCEO(最高経営責任者)に就任したチャールズ・A・ガッセンハイマー氏のオフィスには、装飾品はほとんどない。あるのは、リチャード・ルーガー上院議員(共和党、インディアナ州選出)が同社のインディアナポリスの工場を訪問した際に撮影した額入りの写真、「ボール・オブ・ザ・ワイルド」と呼ばれる野生動物保護目的のチャリティー行事のポスター、そして書籍ほどの大きさの白い金属製の装置だ。
この装置にエナ1の将来がかかっている。装置の正体はリチウムイオン電池の試作品で、ガッセンハイマーCEOは環境に負荷をかけない自動車の動力源として期待している。
バラク・オバマ米大統領は、2012年までに米国で100万台の電気自動車を普及させるという目標を掲げた。ガッセンハイマーCEOは、「この目標を達成するには、400億ドル(約3兆7000億円)相当の電池を米国内で生産する必要がある」と話す。専門家の多くは、現在のハイブリッド車(HV)に使われている電池と比べてはるかに軽く、蓄電容量が大きいリチウムイオン電池が今後の主流になると考えている。エナ1がなすべきは、米政府から4億8000万ドル(約440億円)の融資を受けられるよう手を尽くすことだ。
重要な問題は、今後10年はかかる可能性もある電気自動車の普及化までに、エナ1など米電池メーカーが主力企業になれるかどうかだ。リチウムイオン電池の分野には既に多くの企業が参入している。米国内でも、少なくともエナ1の電池と同等の性能を持つとする試作品を完成している企業がある。米マサチューセッツ工科大学(MIT)から生まれたベンチャー企業の米A123システムズ(マサチューセッツ州ウオータータウン)や、仏米合弁企業で、米フォード・モーター(F)、独BMW、独メルセデス・ベンツ(DAI)と契約を取りつけている米ジョンソンコントロールズ・サフトなどだ。
だが、こうした米国メーカーは、潤沢な資金とリチウムイオン電池開発の豊富な経験を持つ、日本などのアジアメーカーとの競争に直面している。
資金力のあるアジア企業
どの企業が主導権を握るにせよ、リチウムイオン電池の一部は米国で生産されることになるだろう。より重要な問題は、バッテリーに組み込まれるリチウムイオン電池セルと自動車の駆動システムの設計という基幹技術をどの企業が制するかだ。
エナ1やA123などの米メーカーは、自社の自動車用電池セル技術の方が他社より優れていると主張する。従来の自動車バッテリーに使われている鉛酸蓄電池の世界最大手である米自動車部品大手ジョンソンコントロールズ(JCI)は、自動車業界での経験と、航空宇宙用や工業用のリチウムイオン電池メーカーの仏サフトとの提携関係を自社の強みとしている。
日本などのアジアメーカーは、パソコン用や家電用のリチウムイオン電池の分野で優位に立ち、トヨタ自動車(TM)やホンダのHV開発に協力してきた実績がある。
また、アジアの企業には、最新鋭の大規模工場の建設に必要な数億ドルの資金を用意できる余裕がある。米国の投資家は、新興企業にそれだけの大規模投資をするリスクを取りたがらない。しかも今は、不況と原油価格の下落でハイブリッド車の将来が不透明になっている。エナ1の株価は昨秋に上昇したが、12月中旬以降は4ドル前後に半減した。
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