「世界鑑測 田中保春の「サウジ・新潮流」」

中東・中国・韓国・・・グローバルな農地争奪戦が加速

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2009年3月3日(火)

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 サウジアラビアなど中東湾岸産油国が、近年の潤沢な資源収入をもとに、官民挙げてアジアやアフリカなどの農地の確保に積極的に乗り出している。国内ではなく海外で農業事業を展開しよう、というのである。

 1970年代の石油ブームの時、中東湾岸産油国は得られた潤沢なマネーを、欧米の不動産などに投資していた。だが今は、貴重な資源収入を、国家の将来の持続的成長に投資する戦略を打ち出している。

 各国は、国内の雇用創出のための教育・職業訓練、インフラ整備に加え、国家の持続的成長のために最も重要なのが、食糧保障だと位置づけているためだ。

「農業海外投資基金」も設立

 例えば2008年6月サウジアラビア農業副大臣は英フィナンシャル・タイムズ紙の取材に対して、「小麦、とうもろこし、米、大豆、家畜用飼料のアルファルファを栽培するため、海外の農地を確保し栽培する計画だ」と語った。続いて、11月23日、サウジアラビア農業大臣は、海外農業展開のために30億リアル(約8億ドル)規模の持ち株会社を設立すると公表した。

 2009年1月26日には、サウジアラビア内閣は国王の主導で、さらに総額53億ドル規模に上る「サウジアラビア農業海外投資基金」の設立を承認している。これは将来の食糧危機に対処するため、サウジ民間企業が海外の農地を買収し、農業事業の資金的支援や、地下水源の保全などに使うのだという。

 農地を買収しなくても、海外の食糧を市場で買い付ければいいではないかという、市場主義的な意見があるかもしれない。 しかし、地球上の人口爆発は加速し、地球温暖化による将来的な世界的食糧危機が現実味を増している。将来遠くない日、たとえ資金があっても国内需要を満たす食糧が十分に確保できない時代が来るかもしれないという危機感が、サウジをはじめ、中東湾岸産油国の間で共有されている。

 世界的金融危機および景気後退による石油需要が急低下し、昨年の1バレル140ドル以上の高値から、最近では40ドル前後と石油価格も急落した。それでも中東湾岸産油国が近年得たエネルギー収入は莫大である。サウジアラビアでは、中央銀行であるサウジアラビア通貨庁(SAMA)の対外資産は、2002年末はわずか419億ドルだったのが、2005年末に1503億ドル、昨年末には4380億ドルに膨れ上がった。

 この資金の有力な活用先が、海外の農地買収や農業事業なのだ。すでに多数のサウジ企業がサウジ政府と協議中で、サウジ政府もインドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、パキスタンなどのアジア諸国やスーダン、エジプト、南アフリカ、ウクライナ、トルコなど諸外国政府との交渉を開始している。穀物のほかにも、最近ではサウジの民間企業がマレーシアの漁業会社に資本投資して、同社が養殖した魚介類をサウジ市場に輸出する計画も現れた。今後こうした動きはさらに増えることが予想されている。

食料品価格は上がり若年人口が急増する中、地下水源が危機

 中東湾岸産油国では近年小麦や米などの値上がりが続き、国民生活に大きな支障を来している。各国政府は主要食料品に対する助成金を増額し、消費者価格への影響を最小限にすべく努力しているが、自国企業が海外で生産し、自国市場に輸出する方が、より経済原則に合うと考え始めている。

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著者プロフィール

田中 保春(たなか・やすはる)
サウジアラビア総合投資院(SAGIA)総裁オフィス・ジャパンデスク、投資アドバイザー

田中保春

1955年、京都市出身。大阪外語大卒、石川島播磨重工(IHI)、日興証券、仏系金融機関ソシエテ・ジェネラルを経て、1995年より5年間湾岸資本家の投資アドバイザーや海外事業のパートナーとなり米国留学、2001年12月より現職(リヤド在住)。 サウジアラビアとのつながりは、1983年より20年以上にわたる。現在、サウジ政府機関(SAGIA)にて海外からサウジへの資本投資政策アドバイスや、日本からの投資案件をサポートしている。



このコラムについて

世界鑑測 田中保春の「サウジ・新潮流」

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

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