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「財政出動4兆元(約55兆円)の使途をガラス張りにせよ!」~共産党長老たちの意見書、ネットに嵐を呼ぶ

2009年3月6日(金)

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「ネットをすぐに見ろ。零九上書が載っている。老共産党員が胡錦濤に宛てて書いた公開信だ。2008年は“08憲章”が出現したが、今年2009年は“09上書”が出たよ」

 2009年2月22日夜、「08憲章」に署名した北京の鉄流氏から連絡が入った。

(08憲章については「やはり現れた、ネット文化革命『08憲章』」、鉄流氏については「北京ゲリラ取材 社会制度のモデルコンテスト」をお読みください)

「今後もいろいろ出てくると思うけど、とりあえず読んでみて。詳細はそれを読んでから」(上書というのは日本語にもあり、ふだんあまり使う言葉ではないが、広辞苑によれば「意見を書いて官または貴人に書状を差し出すこと。また、その書状」のこと)

 大急ぎでgoogle.cnにアクセス。08憲章と違って、幸いなことに今度は削除されていない。

 公開状という形で意見書を書いたのは、元毛沢東の秘書だった李鋭(92歳)。激しい体制批判を展開することで有名な大物だ。署名者は李鋭以外に15名いる。そのほとんどはかつて国家の重要ポストにあった80歳前後の老共産党員ばかりだ。

 内容は、現在の金融危機に当たって中国政府が景気刺激策として緊急財政出動する4兆元(約55兆円)に関し透明化を求めており、そのために使途を公開し、それを追跡する報道に関する言論規制をするな、というものだ。

 これは金融危機というタイミングを好機ととらえ、謝韜と同じように、「政治体制改革を急げ」「言葉の上だけでなく、真の民主化をせよ」と、胡錦濤に迫ったのに等しい。

政府に削除の口実を与えない老練さ

 しかし、さすが百戦錬磨の老練ぞろいと思わせるのは、削除の口実を与える隙がまったく見あたらない筆致である。

 タイトルは「経済的困難を克服し改革の新局面を切り開くことに関する建議」。

 「錦濤同志および政治局各常務委員の同志たちへ」という書き出しは、彼らの立場というものを明示している。“胡錦濤”と書かないで“錦濤”と書く。すなわち“胡錦濤”の姓である“胡”を抜かして、名前の部分の“錦濤”だけを書いて、しかも“国家主席”でもなければ“中国共産党総書記”でもなく、“同志”という呼称で呼ぶ。中国では一般に名字を抜かして名で呼ぶのは、親しさを表す時や、親が自分の子供の名前を呼ぶ時などだが、この場合は、「親しさ」を表すとと共に、「我々は、自分の子供に呼びかけ諭すような立場なんですよ」ということを、胡錦濤や政治局に対して先ず示しているのである。

 この書信を公開するのも、香港の雑誌である「争鳴」を選ぶという、何とも巧妙なやり方を採った。

 「争鳴」は中国の国家指導層が「参考消息」として実は丹念に見ている雑誌だが、「合法的に」意見を発表できる場でもあることから、現体制に批判的な老共産党員の大物たちは、このルートを用いて国家指導層にもの申すことが多い。

 公開状は、まず胡錦濤の「執政為民(民のために執政する)」というスローガンを褒め称え、温家宝が言った「困難で複雑な状況であればあるほど民主政策を強化し、政策決定の透明度と民主監督を強化せねばならない」という言葉を礼賛している。特に、「民主、透明、監督」という6文字は、(2007年に開催された)17大(中国共産党第17回全国大会)において提唱された「法に基づいて民主選挙を実行し、民主政策決定、民主管理、民主監督、人民の知る権利、参与権、表現権および監督権」を体現したものであり、これは各レベルの党委員会および各レベルの政府の行動規範となっていると確信すると、褒めちぎるのである。

 つまり彼らは「あなたたちは、これを実行していませんよね」、とは言わず、「あなたたちは、こういうことを決定し、それを実行していますよね。実にすばらしい」と礼賛する。その実、「言葉だけではないでしょうね?実行していますよね?」と反語で問い、「実行しなければダメですよ」と釘を刺しているのだ。

 そして4兆元の財政出動に関して、以下のような建議を具体的行っている。

4兆元を腐敗の中に消さないために

  1. 4兆元の財政出動は大変けっこう。しかし、その使途を明確にしなさい。これがまた官僚の懐に入り、この機に乗じて腐敗の温床にならぬように使途を監督せよ。
  2. 4兆元の使途の全行程を公開し透明にさせ、全てのメディアに開示し、メディアの追跡報道を奨励すること。絶対にメディア活動を禁止封殺したり圧力をかけたりしてはならない。
  3. 監督機構の独立性を強化すること。党幹部の干渉の下で処理せず、公正性を保つこと。
    (筆者注:現状では全てが党幹部の指導の下で遂行されるので、チェック機能を果たしておらず、かえって賄賂と腐敗政治の温床となっていることを批判している。)
  4. 民間組織が育つ空間を拡大せよ。
  5. 1986年に成立した「政治体制改革領導小組(指導グループ)」を復活させよ。われわれは経済体制に関しては計画経済から市場経済に転換したが、政治改革に関しては極端に遅れており、権力が市場に介入し特権を乱用して私物化し汚職が蔓延している。これは党と人民に甚大な損害を与えている。
    (ここでも「党が被害者だ」という書き方をして党を持ち上げながら批判。なお、1986年に誕生した「政治体制改革領導小組(指導グループ)」は当時の中国共産党総書記・胡耀邦によって開設されたもので、「党と政治の分離」および「権力の移譲」等を検討実行することを目的としたものである。今回の公開状が最も言いたいのは、この項目なので、詳細は後述。)
  6. 中央はトップダウンの“重要指示”やら“重要講話”やらを少なめにするように。
    (中国ではトップが言えば、それが全てだという人治的要素が強く、法律に基づく憲政国家としての要素が欠けていることを批判した言葉と読み取ることができる。要は憲政を実施しろ、ということを要求している)。

    同時に公用車使用、公費旅行、公費接待等に関して検討せよ。
    (筆者注:国民の税金を無駄遣いするな、という意味)

    国営(ママ)企業、特に金融、電力、電信等の独占企業の幹部たちの中には、年収数十万元、数百万元、あるいはひどい場合には1千万元に達する者さえいる。積極的に自ら減給に努力し、民とともにこの(金融危機という)難関を乗り越えよ。
    (筆者注:金額はその日の為替レートによって異なるが、日本円に換算するとおよそこの額の約13~15倍)

 以上のような内容で、最後に「中国は30年前に比べたら想像もできないほど発展した。これは鄧小平と胡耀邦同志の恐れを知らない大胆な改革のお陰で、ここ30年の執政が正しかったことを証明している」とした上で、次のように結んでいる。

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「「財政出動4兆元(約55兆円)の使途をガラス張りにせよ!」~共産党長老たちの意見書、ネットに嵐を呼ぶ」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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