Ian Rowley (BusinessWeek誌、東京支局特派員)
米国時間2009年3月9日更新 「Stimulus Spending Boosts Japan's Train Manufacturers」
欧州や米国をしのぐ急速な景気悪化、数千人規模の人員整理(BusinessWeekチャンネルの記事を参照:2009年2月19日「中川財務相が象徴する、日本政府の統治能力欠如」)、そして相次ぐ難局に右往左往し、為す術のない政治家たち(BusinessWeekチャンネルの記事を参照:2009年2月28日「中川前財務相の失態、幸運にも円安を招く」)――。ここ数カ月の日本の惨状には目を覆うばかりだ。だが、そんな暗い見出しばかりが踊る中、ある取引に関するニュースが異彩を放っている。
2月13日、日立製作所(HIT、本社:東京)率いる合弁企業が、英国を縦断する高速鉄道車両の製造・保守事業に関する優先交渉権を英運輸省から獲得したのである。その規模は100億ドル(約9700億円)に上る。
薄型大画面テレビから原子力発電所まで手広く扱う複合企業の日立にとって、これ以上ないタイミングでの契約獲得だ。日立は2009年3月期の業績予想で、国内大手では最悪の水準となる約7000億円の赤字を見込んでいる。今年はグループ全体で巨額の損失が見込まれているにもかかわらず、鉄道関連の売上高は17%の大幅増となる約1500億円と予想されている。10月に契約が締結されれば、日立とその共同出資者である英大手ゼネコンのジョン・レインと英バークレイズ銀行傘下の投資会社バークレイズ・プライベート・エクイティの3社で構成される共同出資会社は、最大1400両の車両を供給、また向こう20年間、車両整備サービスも提供していくことになる。
だがアナリストらによれば、今回の取引がより重要なのは、各国政府が世界的な不況対策としてインフラ投資による景気刺激策を進める中、日立をはじめとする日本企業が、鉄道産業で新規事業を獲得する機会が増える可能性を示唆している点だという。
自動車や電機などの主要輸出産業が低迷する中、鉄道事業は願ってもない成長機会を提供できるかもしれない。日立の契約獲得は「日本にとってはこの上ない朗報」と、米スタンダード&プアーズ(S&P、ビジネスウィーク同様、ザ・マグロウヒル・カンパニーズ=MHP=の事業部門)東京支店のアナリスト、柴田宏樹氏は語る。
海外の競合他社との争奪戦
こうした入札の機会は今後も豊富にあるだろう。例えば米国のオバマ政権は、7890億ドル(約77兆円)規模の景気刺激策(BusinessWeek.comの記事を参照:2009年2月20日「How the Stimulus Money Will Flow」)を打ち出し、運輸・鉄道整備に181億ドル(約1兆8000億円)を計上するなど、鉄道投資に弾みをつけようとしている。
欧州では、欧州連合(EU)が景気刺激策の一環として、域内での鉄道網整備に6億3000万ドル(約611億円)を拠出。欧州各国政府も投資を増やしている。例えばイタリアはローマ・ミラノ間に新たに貨物線を建設、フランスは有名な高速列車「TGV」の路線延長を進めている。
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