「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」

金融市場をゆがめる国際協力銀行は、財務省天下りの受け皿か

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2009年3月18日(水)

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 「政策金融機関を不要だとしたことは、不況が来ないことを前提とした経済学で、間違いだった」

 3月10日、与謝野馨財務・金融・経済財政相は参議院予算委員会で、政府系金融機関の民営化を否定する意見を述べた。「小泉純一郎政権時代は世界の同時不況を全く想定していなかったため、民営化という誤りを犯した。これを見直したい」という意味である。言葉の軽さを取りざたされている麻生太郎首相とは違い、“政策通”の与謝野大臣の発言には重みがある。中川昭一前大臣の後を受けて財務相になったとたん、積極的に民営化反対派になったの は、弟がこの機関の職員だったからだろうか。

 小泉政権が推進した郵政民営化によって、郵貯と郵便保険を原資にしてきた政府系金融機関を改革したことについては、麻生首相も与謝野発言を受けて、3月16日の参院予算委員会で、「今回のような騒ぎになることを想定していなかった。これは大問題だと思う」と述べ、改革が金融危機などを想定せずに進められたとの認識を示した。また、鳩山邦夫現総務相は日本郵政たたきを始め、かんぽの宿の売り方見直しや、旧東京中央郵便局の文化財保護を求めるなど、総務省に睨みをきかせている。

 現政権の主要閣僚は、政府系金融機関一元化の見直しに持ち込みたいようだ。“ミスター円”を標榜する元財務官の榊原英資氏は、金融危機前に出版した著書『強い円は日本の国益』で、国際協力銀行を元の公的機関に戻すべしと説いている。政治家も財務省OBも、「政府系金融機関民営化の見直し」マジックにかかっているようだ。

経済・金融秩序の混乱を想定した政策金融改革

 与謝野大臣は、お忘れのようだ。2005年11月29日に経済財政諮問会議の席上、経済財政政策担当の特命大臣として金融危機対応の役割にも言及していることを(議事録は、こちら)。しぶしぶ賛同したのではなく、自ら進んで決定しているのだ。

 そしてまた、2006年6月27日官邸から発表されている「政策金融改革推進本部決定、行政改革推進本部決定」のペーパーでも、与謝野大臣は担当大臣として自ら、政策金融改革推進本部の方針として、政府系金融機関の民営化と特殊会社化を進め、継承される業務として次の5点を挙げている。

(1)国民生活金融公庫の業務
(2)農林漁業金融公庫の業務
(3)中小企業金融公庫の業務
(4)国際協力銀行の業務(重要資源の海外における開発及び取得の促進、我が国産業の国際競争力の維持・向上、国際金融秩序の混乱への対処のためのものに限定)
(5)内外の経済・金融秩序の混乱又は大規模な災害、テロリズム若しくは感染症等による被害に対処するために必要な金融

 上記のうち(4)と(5)が、このたびの与謝野大臣の嘘を証明している。これら5つの業務を引き継いだのが、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)である。

 昨年の9月15日以来筆者は、金融危機克服のための政府、金融機関、民間企業などの取り組みを注視してきた。このコラムでも「麻生首相には、『内需拡大』と言ってほしかった」などの記事で意見を述べてきた。

 「100年に1度の経済危機」と言われる金融危機で、日本企業では、株価低迷のために自己資本比率が低下している現在、銀行の貸し渋りや貸しはがしはいっそう厳しさを増している。消費も投資も冷え込んでいる。確かに金融支援は必要だ。

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著者プロフィール

吉田 鈴香(よしだ・すずか)
ジャーナリスト

吉田 鈴香1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。
主な著書に『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)、『紛争から平和構築へ』(論創社、共著)など。ウェブサイト「吉田鈴香が見る世界」も公開中。Twitterのアドレスはこちら



■編集部よりお知らせ
本コラムの著者である吉田鈴香さんが参議院選挙に立候補することになりました。 そのため新着記事の更新を停止いたします。[2010年6月14日]

■筆者より
2年弱、読者の皆様の叱咤激励に支えられながら続けてまいりましたことに厚く お礼を申し上げます。ご愛読ありがとうございました。(吉田鈴香)



このコラムについて

吉田鈴香の「世界の中のニッポン」

東ティモールから旧ユーゴスラビア、シエラレオネ、イラクまで、世界の紛争地帯をジャーナリストとして訪ねてきた著者が、国際支援の現状、ODA(政府開発援助)に望むこと、武装解除と平和交渉などを鋭くリポートする。

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