「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」

中国は大丈夫か[77]ここで仕事する夫の顔は死んでいない〜中国で活躍する日本人シニア

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2009年3月27日(金)

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 退職後も働き続けたい――。そう願う読者は多いはずだ。人間の能力は本来、年齢や国籍とは関係がない。日本に仕事がないなら、海外に職を求めるのも1つの選択だろう。

* * *

1999年9月6日号より

 発展途上の中国は、確かな知識と経験を持つ人材を求めている。自ら決断して中国で働く、日本人シニア3人を紹介しよう。武器は豊富な知識と経験、そして忍耐力だ。=文中敬称略

(田原 真司=香港支局)

24時間OKの“総務部長”
星井 清氏(71歳)日技城・行政経理

 「願ってもない話だ。明日からでもすぐ深センに来てください」――。

 電子機器メーカー・宮川香港社長の石井次郎の意外な返事に、星井清はとまどった。しかし次の瞬間には、中国に行くことを決心していた。1998年9月、星井は日技城の行政経理として深センに乗り込んだ。齢70の決断である。

 長期の不況や企業のリストラ本格化で、国内では中高年の失業と再就職難が深刻な問題になっている。しかし発展途上の中国の工場では、年齢にかかわりなく、確かな知識と豊富な経験を持つ人材を求めるニーズがある。星井はさしずめ、その代表選手だ。

日本人が考えもつかないトラブルも

 星井が再就職した日技城は、中小企業向けの「貸し工場」である。石井をはじめ、深センに工場を持つ日系中小企業の経営者有志が共同で92年に設立した。単なる建物の賃貸ではなく、電力供給から社員の採用、隣接する香港との間の輸出入の通関代行、行政機関との各種折衝まで、様々なサービスを提供する。海外進出のノウハウがない中小企業でも、入居してすぐに操業できるのが売り物だ。

 日技城の行政経理は、これらのサービス全体を統轄する。いわば総務部長である。決して楽な仕事ではない。工場にトラブルは付き物だが、中国では日本人が考えもつかないトラブルも少なくないからだ。日技城は深セン郊外の3カ所の建物に分かれており、そこに入居する23社の様々な苦情や要望が、星井の耳に次々に入ってくる。

 「トイレの水が流れない」「寮に泥棒が入った」「通関の遅れで部品が届かない」。何かが起こるたびに星井は現場に出向き、話を聞いて事後処理と対策に奔走する。入居企業の中には24時間操業のところもある。日技城の事務所の3階で暮らす星井は、突然のトラブル発生で夜中に起こされることもある。前任の行政経理2人は、仕事のきつさに耐えられず、半年ももたずに辞めてしまったほどだ。

「年をとるひまなんてない」

 ところが星井は、異国での多忙な生活をむしろ楽しんでいるようだ。

 「最初は正直言って『ひどいところに来てしまったな』と思った。でも僕は、生来どんな場所で生活してもビクともしない性質。毎日やらねばならない仕事が山ほどあるから、年をとるひまなんてありませんよ」。背筋をピンと伸ばし、青年のような明るさで実に愉快そうに笑う。

 星井は28年生まれ。9歳から18歳までの青少年期を中国東北部(旧満州)のハルビンで過ごし、終戦後に日本に引き揚げた。以来、中国に対して一種の郷愁を持ち続けてきたという。大学を卒業して藤倉電線(現フジクラ)に入社し、電線に使う絶縁樹脂の開発技術者として活躍した。

 79年からは、現地法人の社長としてシンガポールに12年間滞在。さらに91年から中国の珠海工場、95年から上海の合弁会社の立ち上げを技術顧問として現場で指揮した。96年、フジクラを退職して日本に帰国した時は、すでに68歳になっていた。

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著者プロフィール

谷口 徹也(たにぐち・てつや)

日経エコロジー編集長。日経ビジネス、日経情報ストラテジーの記者などを経て、2002年1月〜2007年8月日経ビジネス香港支局、2007年9月〜2009年5月日経ビジネス副編集長、2009年6月日経ビジネスオンライン副編集長。2012年1月から現職。



このコラムについて

日経ビジネスが描いた日本経済の40年

2009年10月に創刊40周年を迎える日経ビジネス。この間、日経ビジネスは企業の栄枯盛衰の現場に立ち会い、多くの記事を掲載し、特集企画では「会社の寿命」「軽・薄・短・小」など時代を切り拓くキーワードを生み出してきました。創刊40周年のカウントダウン企画として、日経ビジネスが掲載してきた記事を、現在の問題意識から時代を超えてセレクトし、シリーズで掲載します。経営、企業、マクロ経済、金融、人…、日本経済が直面する問題のヒントが見つかるはずです。

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