新たに入った人材をどう教育・訓練するかは、いつの時代でも組織にとって重大な問題である。もちろん、人材育成は一朝一夕で行えるものではないし、安易な方法に頼るべきではない。しかし、可能ならば、経済的で効率的な訓練・教育を行いたいと考えるのは、組織側としては当然のことだろう。
イラクやアフガニスタンの戦闘が長期化し、大量の新兵を育成しなければならない現在のアメリカ軍では、多くの兵士を効率よく訓練するため、シミュレーターの活用を積極的に進めている。単純で機械的な訓練用シミュレーターは、かなり古くから軍隊で使用されてきたが、近年ではゲームやCGなどのシステムやグラフィック技術などを応用した高度なものが多く開発され、訓練内容を大きく変えようとしている。
今回は、そうした米軍の訓練シミュレーター事情をいくつか紹介してみよう。
軍事用シミュレーターの一大イベント、I/ITSEC
毎年11~12月にフロリダ州のオレンジ・カウンティー・コンベンション・センターでは、米軍やゲーム・シミュレーション産業、研究機関などから1万6000人以上もの参加者が集まる「各軍間・産業界の訓練及びシミュレーション、教育に関するカンファレンス」(I/ITSEC)が開催され、開発中のシミュレーターやその訓練方法などのデモストレーションが行われている。
【I/ITSEC 2008 Learn. Train. Win.】
このカンファレンスは、66年に米海軍訓練装置センターとその開発企業の連携を深める目的で開催されたのが始まりだったが、90年代頃からコンピューターを利用した訓練シミュレーターを開発する企業が台頭するようになってきたらしい。
現在の軍事用シミュレーター開発には、それまで軍隊に縁のなかったゲーム会社や映像製作会社などがビジネスチャンスを狙って参入し、新たな市場として注目を浴びているのだ。
こうしたシミュレーター開発は、米陸空海軍、海兵隊のいずれでも熱心に行われており、特に米陸軍では94年に「米陸軍シミュレーション及び訓練、装置コマンド」(STRICOM)を設立し、研究者とゲーム会社やCG製作会社との連携を図っている南カリフォルニア大学「クリエイティブ・テクノロジー研究所」(ICT)へ多額の出資を行うなど、より高度な技術開発に力を注いでいる。
実機や実弾を使用した訓練には及ばないまでも、コストの掛かる訓練を代替し、経済的かつ効率的な兵士育成の助けになると判断しているためであろう。
【US Military: AC-130 Flight Simulator Special Operations Command Gun Ship】
YouTubeチャンネルより)
ただし、シミュレーターはCG技術などを駆使したものだけではない。中には、機械的で簡単な仕組みの方が有効な場合もある。
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