アフリカで最も民主主義が発達し、根づいている国の1つ、ケニア。筆者は今、そこに滞在している。国の北東部でソマリアと国境を接しているが、ソマリアとは国の体制が全く異なる。ケニアは人道、人権、民主主義を真に理解する開かれた国だ。その国に、ソマリア人のコミュニティーがあるという。
筆者が出国する前、「ソマリア人コミュニティーに行ってくるといい」と助言をしてくれた人物がある。国際海事局(International Maritime Bureau)のディレクターだ。「クレンジング(資金洗浄)を含む、あらゆる違法がそこにはある」ということだ。
嫌悪感と警戒心でソマリア人を見つめるケニア国民
「ソマリア人コミュニティーに行きたいので、連れて行ってくれませんか」
現地で雇った運転手にそう告げると、彼は目を丸くした。「そこはEastleigh(イーストレイ)っていう地域だが、そこに何の用事がある?」といぶかしんだ。
筆者は改めて今回の取材の目的を話し、協力を願った。その運転手というのは、筆者の友人である某国のセキュリティー関係者が「彼を雇うといい」と教えてくれた人である(ちなみに、某国のセキュリティー関係者とは、数日後にナイロビで落ち合うことになっている)。
「友達の友達だから、友達だ」というノリで、その運転手とは初対面の時から様々な話をし、彼の言い値も払ってきた。だから、「コミュニティーに連れて行って」と言えばすぐに、「あいよ」と動いてくれるかと思っていたのだが、ソマリア人コミュニティーの名を出したことで、彼は急に顔をしかめたのだ。
今回の取材旅行の目的を改めて話すと、彼は「ああ、それは取材というより、調査だね」と反応し、理解してくれた。そして「車から絶対に降りないこと。ゆっくり運転するから、何かやりたいことがあれば、指示をしてくれればいい」と言った。
筆者が逗留している地域は、首都の中心から北へ車で30分以上かかるところに位置し、アメリカ大使が地域の入り口に居を構え、警察の寮と国連機関が軒を連ねている、首都の中でも最も治安が良く、美観も備えているところだ。国連職員はこの地域からほとんど出ずに、用を済ませることができる。その「完璧な空間」から、違法がまかり通る地域へと車を進めた。
30分ほど行ったあたりから、ちらほらと、明らかにソマリア人と分かる女性を見かけるようになった。頭からベールをかぶり、首から下もすっぽりと1枚の服で覆っている。服の色は赤、黒、焦げ茶色が多い。運転手はある道に入ったところで、「時計を外して、バッグを座席の下に入れて」と筆者に助言をし、窓を閉めた。
ソマリア人が、ひしめき合うようにいる。昼日中から大の男たちが数人固まっては何事かを話し、携帯電話をしきりに使っている。音楽に合わせて楽しげに踊ったりしているわけではなく、額を突き合わせて相談をしているふうである。まさに、「たむろしている」という様子だ。「彼らは仕事をしていない。いったい、どうやって暮らしているんだか」と、運転手は顔をしかめた。
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1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。







