「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」

「あらゆる違法がそこにある」ソマリア人コミュニティーを訪ねる

ソマリアに続く“武器街道”を行く(2)

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2009年3月31日(火)

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 アフリカで最も民主主義が発達し、根づいている国の1つ、ケニア。筆者は今、そこに滞在している。国の北東部でソマリアと国境を接しているが、ソマリアとは国の体制が全く異なる。ケニアは人道、人権、民主主義を真に理解する開かれた国だ。その国に、ソマリア人のコミュニティーがあるという。

 筆者が出国する前、「ソマリア人コミュニティーに行ってくるといい」と助言をしてくれた人物がある。国際海事局(International Maritime Bureau)のディレクターだ。「クレンジング(資金洗浄)を含む、あらゆる違法がそこにはある」ということだ。

嫌悪感と警戒心でソマリア人を見つめるケニア国民

 「ソマリア人コミュニティーに行きたいので、連れて行ってくれませんか」

 現地で雇った運転手にそう告げると、彼は目を丸くした。「そこはEastleigh(イーストレイ)っていう地域だが、そこに何の用事がある?」といぶかしんだ。

 筆者は改めて今回の取材の目的を話し、協力を願った。その運転手というのは、筆者の友人である某国のセキュリティー関係者が「彼を雇うといい」と教えてくれた人である(ちなみに、某国のセキュリティー関係者とは、数日後にナイロビで落ち合うことになっている)。

 「友達の友達だから、友達だ」というノリで、その運転手とは初対面の時から様々な話をし、彼の言い値も払ってきた。だから、「コミュニティーに連れて行って」と言えばすぐに、「あいよ」と動いてくれるかと思っていたのだが、ソマリア人コミュニティーの名を出したことで、彼は急に顔をしかめたのだ。

 今回の取材旅行の目的を改めて話すと、彼は「ああ、それは取材というより、調査だね」と反応し、理解してくれた。そして「車から絶対に降りないこと。ゆっくり運転するから、何かやりたいことがあれば、指示をしてくれればいい」と言った。

 筆者が逗留している地域は、首都の中心から北へ車で30分以上かかるところに位置し、アメリカ大使が地域の入り口に居を構え、警察の寮と国連機関が軒を連ねている、首都の中でも最も治安が良く、美観も備えているところだ。国連職員はこの地域からほとんど出ずに、用を済ませることができる。その「完璧な空間」から、違法がまかり通る地域へと車を進めた。

 30分ほど行ったあたりから、ちらほらと、明らかにソマリア人と分かる女性を見かけるようになった。頭からベールをかぶり、首から下もすっぽりと1枚の服で覆っている。服の色は赤、黒、焦げ茶色が多い。運転手はある道に入ったところで、「時計を外して、バッグを座席の下に入れて」と筆者に助言をし、窓を閉めた。

 ソマリア人が、ひしめき合うようにいる。昼日中から大の男たちが数人固まっては何事かを話し、携帯電話をしきりに使っている。音楽に合わせて楽しげに踊ったりしているわけではなく、額を突き合わせて相談をしているふうである。まさに、「たむろしている」という様子だ。「彼らは仕事をしていない。いったい、どうやって暮らしているんだか」と、運転手は顔をしかめた。

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著者プロフィール

吉田 鈴香(よしだ・すずか)
ジャーナリスト

吉田 鈴香1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。
主な著書に『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)、『紛争から平和構築へ』(論創社、共著)など。ウェブサイト「吉田鈴香が見る世界」も公開中。Twitterのアドレスはこちら



■編集部よりお知らせ
本コラムの著者である吉田鈴香さんが参議院選挙に立候補することになりました。 そのため新着記事の更新を停止いたします。[2010年6月14日]

■筆者より
2年弱、読者の皆様の叱咤激励に支えられながら続けてまいりましたことに厚く お礼を申し上げます。ご愛読ありがとうございました。(吉田鈴香)



このコラムについて

吉田鈴香の「世界の中のニッポン」

東ティモールから旧ユーゴスラビア、シエラレオネ、イラクまで、世界の紛争地帯をジャーナリストとして訪ねてきた著者が、国際支援の現状、ODA(政府開発援助)に望むこと、武装解除と平和交渉などを鋭くリポートする。

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