「世界鑑測 菅原出の「安全保障・インサイド」」

オバマが示す“戦後大統領”としてのスタイル

「軍最高司令官」のクールな現実主義的思考

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2009年3月31日(火)

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 いよいよオバマ外交が本格的に動き出した。

 3月20日、オバマ大統領はビデオメッセージを公表してイランに直接対話を呼びかけるという異例の行動に打って出て世界を驚かせた。3月31日にはオランダでアフガニスタン国際閣僚級会議が開催されることになっており、アフガン新戦略も近々正式に発表されることになっている。

 また4月初頭には欧州を歴訪し北大西洋条約機構(NATO)首脳会議やロシア大統領との首脳会談も予定されており、今後の国際秩序に影響を与える重要な外交行事が目白押しである。

 大統領就任から2カ月が経過し、オバマ大統領の運営スタイルや政策決定のアプローチ、それに同政権が重要視するアフガンやイランに対する新しい戦略の柱などが次第に明らかになってきている。そこで本連載では、これから3回に分けて、「動き始めたオバマ新外交」を詳しく見ていきたい。

“戦時”色なき最高司令官

 3月23日付の米ニューヨーク・タイムズ紙は、「ホワイトハウス・メモ、戦時における軍隊の指揮を“戦時大統領”としてではなく」と題した興味深い記事を掲載した。題名が示唆するように、この記事は「戦時大統領」として対テロ戦争に全精力をつぎ込んだジョージ・ブッシュ前大統領と、オバマ新大統領の「軍最高司令官」としてのスタイルの違いに焦点を当てている。

 ブッシュ前大統領が自身をしばしば「戦時大統領(war president)」と呼んだのに対し、オバマ大統領の使うボキャブラリーの中にはそもそもこの言葉自体がない、とこの記事の著者シェリル・シュトルベルクは書いている。

 「ブッシュ氏が毎朝大統領執務室に入ってから最初に会う人物は国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務めたスティーブ・ハドリーであり、前日にイラクとアフガンで何が起きたかについて話をすることから一日が始まった。その後8時ぴったりに大統領日次報告という極秘のインテリジェンス報告が、大統領のスケジュールの中では神聖な時間帯として常に設けられていた」

 シュトルベルクはこのように書いて、ブッシュ前大統領が、大統領執務室に入ったその瞬間からイラク、アフガン、対テロ戦争に日々忙殺されていた様子を描いている。

 これに対してオバマ大統領は、この大統領日次報告に外交・安全保障だけでなく経済に関する報告も加えるよう変更しており、大統領日次報告の時間もその日によってまちまちだという。経済情勢報告が一番に行われる日もあれば、娘の学校の訪問後に行われることもあるのだという。

 オバマ大統領は、ブッシュ政権時には恒例となっていた大統領とイラク現場司令官との毎週のビデオ会議も廃止したという。これはイラクの治安状況が改善したという事情にもよるが、大統領としてのマネジメントスタイルの変化という要素も大きい、とシュトルベルクは述べている。

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著者プロフィール

菅原 出(すがわら・いずる)

菅原 出

1969年、東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。平成6年よりオランダ留学。同9年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英危機管理会社役員などを経て、現在は国際政治アナリスト。会員制ニュースレター『ドキュメント・レポート』を毎週発行。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争詐欺師』(講談社)、『ウィキリークスの衝撃』(日経BP社)などがある。



このコラムについて

世界鑑測 菅原出の「安全保障・インサイド」

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

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