「世界鑑測 菅原出の「安全保障・インサイド」」

「イランの核」を巡り激化する情報暗闘

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2009年4月20日(月)

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 4月7〜9日にかけて、米・イラン関係を巡る興味深い動きが同時にいくつも浮上した。4月8日、米ワシントン・ポスト紙は、マンハッタンの大陪審が中国系ビジネスマンと彼の会社を、イランに核・ミサイル関連物資を売却した罪で起訴した、と報じた。

「イラン核爆弾入手に邁進」報道の浮上

 それによるとマンハッタンの地方検事ロバート・M・モーゲンソーは、Li Fang Weiと彼の会社LIMMTエコノミックス・アンド・トレードが、軍事転用可能な高強度金属を、イラン軍の関連会社に売却したというのであった。これらの物資の多くは軍事プログラムへの転用が可能なため、特定の国への輸出が国連の制裁措置によって制限されている。

 モーゲンソー検事は「制裁というものは強制力があって初めて効果を持ち得る」として、中国に活動拠点を置くLiや彼の会社に対する措置の限界を指摘した。

 4月7日付のデイリー・ニュース紙は、さらに詳細に、2006年から2008年末の間に、中国からイランに以下のような物資が売却されたと伝えている。

・ 3万3000ポンドの特殊アルミ合金(ほぼ長距離ミサイルの製造にしか使われない)
・ 6万6000ポンドのタングステン銅板(ミサイル誘導システムに使用される)
・ 5万3900ポンドの特殊な超硬金属の銅棒(ウラン濃縮に使用される)

 同紙はまた、「これはイランに対する主要供給源の切断につながるもので、いかにイランが全速力で核爆弾入手に邁進しているかを物語るものだ」という匿名検察筋のコメントも掲載している。

 これらの報道は、「国連の経済制裁にもかかわらずイランは違法な取引により大量破壊兵器製造に必要な物資を輸入しており、核爆弾入手に向けて突き進んでいる」という容疑を大々的に世界に伝えている。

絶妙なタイミング

 またちょうど同じ頃、日本経済新聞は、「米国など複数の西側情報機関筋」の情報として、「北朝鮮からイランに渡った船舶が船底に濃縮率の低い数十トン規模のウランを積んでいた疑惑が浮上、調査が進んでいるもようだ」と報じている。「西側情報機関筋」という情報源の曖昧なこの記事は、「北朝鮮が米国から存在を指摘される高濃縮ウラン(HEU)型核計画の痕跡抹消を図ったとの見方もある」との憶測も伝えており、明らかに特定の情報関係者からのリークを基にした記事だ。

 これは北朝鮮の話がメーンになっているが、「イランが高濃縮ウランを不法に入手した」疑いを伝えている点で、上記のワシントン・ポストやデイリー・ニュースの記事と同様の意味を持つと考えられる。

 こうした報道が出されたタイミングは実に絶妙だ。4月9日には、全世界のメディアが「米国がイランとの核開発問題における交渉に加わる決定を下した」とのニュースを伝えているからである。

対話路線をさらに一歩進めるオバマ政権

 オバマ政権は9日、核開発問題でイランと交渉を続けている欧州連合(EU)の交渉チームに、米国も代表者を送るとの決断を下した。これは同政権が過去数週間に打ち出したイランに対する対話路線の延長線上に位置づけられている。

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著者プロフィール

菅原 出(すがわら・いずる)

菅原 出

1969年、東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。平成6年よりオランダ留学。同9年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英危機管理会社役員などを経て、現在は国際政治アナリスト。会員制ニュースレター『ドキュメント・レポート』を毎週発行。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争詐欺師』(講談社)、『ウィキリークスの衝撃』(日経BP社)などがある。



このコラムについて

世界鑑測 菅原出の「安全保障・インサイド」

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

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