前回に続き、ナイロビ、ドバイ、ジブチでの取材リポートをお届けする。今回の旅程の中、「もし私が海賊なら、ここを出撃拠点にする」と思った街があった。ここがソマリア海賊の出撃拠点ではないか。そこには、海賊も難民も海上保安官もいたのだった。
2年ほど前まで、国連世界食糧計画(WFP)の食糧運搬船は、よくソマリア海賊のターゲットになっていた。襲っても武力で逆襲されないと分かっているため、海賊にとっては格好の餌食だったのだろう。
元来、ソマリアを含む北・東アフリカには、「自分の手元にないものは、よそで取ってくる」という習慣があるようで、かつては弓矢などで襲撃していた。近年はそれが殺傷能力の高い銃に代わったために、殺戮が容易かつ多数になっただけとも言える。
彼ら自身には海賊という意識はなく、ただ「欲しいものを取りに行く」という行為に過ぎないかもしれないが、一方で人道支援を実行する機関としては、現地の人々のために食糧を届けに行って、物ばかりか命まで奪われるのではたまらない。
食糧運搬船を護衛するフランス船
現地職員が殺されるなど悲惨なことが相次いだため、WFPは去年からフランスに護衛を依頼。2008年12月以来、フランスはアトランタ・ミッションと称して1年間の予定で護衛を始めた。
この護衛はたいそう効果を上げているようで、ナイロビを訪問した時、WFPナイロビ事務所の報道官ピーター・スメルドン氏は、「これで海のルートは安全になった」と語っていた。
しかし一方で、「陸の危険は変わらない」そうで、今年に入っても、荷を輸送する重要な役割を果たしている現地職員が殺される事件が続いている。特に、ソマリア南部と中部での被害は深刻だ。
前回書いた通り、武装紛争が激化している地と食糧不足の地、難民、避難民の流出地は同じ、この地域である。1月6日と8日には、銃を持った男にWFPの現地職員2人が殺された。
WFPは今年1月22日、「陸地での輸送上の安全が確保されない限り、食糧を届けたくても届けられない」と怒りを表したニュースリリースを出し、ソマリアのコミュニティーに対して、協力を仰いだ。
この結果、武器を持った護衛をつける警備ではなく、ローカルコミュニティーに守ってもらう方法を確立しつつあるようだ。食糧運搬は女性と子供の役割という習慣を考えて、トラックの前に男性を立たせ、食糧を受け取った女性と子供が後ろに通じた道路を通って運べるように、配布の仕方を工夫し始めた。
コスト面でも、また、ソマリアに残る「良心」を保つ意味でも、賢い方法だ。イラクなど外地からの過激派が入り込んでいる土地と違い、ソマリアは伝統的なコミュニティーが残り、クラン(軍閥)が統括している土地である。コミュニティーリーダーがうなずけば、だいたいはうまくいく。このようなコミュニティーに対しては、ソフトセキュリティー、つまり、知恵で解決できる治安確保の道を優先させた方がいいのである。
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1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。







