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酪農家が苦しむ“汚染ミルク事件”の爪跡

乳製品メーカーの買い付け激減で存亡の危機に

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2009年4月21日(火)

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経済観察報記者 / 汪言安

河北省粛寧県の前白寺村で酪農を営む趙瀾涛(チャオ・ランタオ)は、石家庄市の乳製品メーカー君楽宝乳業への生乳の納入を4月から自発的に中止した。つい先日、彼は多くの人脈を頼って並々ならぬ労力を費やし、同社から受注を獲得したばかりだった。

 この厳しい情勢下で、酪農家がメーカーから注文を取るのは極めて難しい。にもかかわらず、趙瀾涛が自ら納入を中止したのはなぜか。理由はただ1つ。半月間試した結果、物流コストが高すぎて利益が出ないことが分かったからだ。

 君楽宝乳業との契約では、趙瀾涛は同社の工場に毎日生乳を納めなければならない。しかし、彼の牛舎は石家庄から200キロ以上も離れており、車で往復6~7時間もかかる。彼の生乳運搬車は他の同業者よりも遅く到着することになるため、品質検査の順番待ちの最後に並ばなければならない。“汚染ミルク事件”の後、メーカーの品質検査はいっそう厳格になっており、検査手続きが終わるまで相当の時間を覚悟する必要がある。

(編集部注:“汚染ミルク事件”とは、中国で市販されている粉ミルクに化学物質メラミンが混入し、乳幼児6人が死亡、30万人以上に健康被害を引き起こした事件。昨年9月、大手乳製品メーカー三鹿グループの粉ミルクによる健康被害が多数確認され、その後他メーカーの粉ミルクや乳製品も広くメラミンに汚染されていたことが判明した)

粉ミルクの在庫過剰で「もう来なくてよい」

 生乳運搬車は牛舎を早朝6時過ぎに出発しても、帰り着くのは翌朝の2~3時になる。納品のためだけに20時間も必要なのだ。毎日休みなく運ぶには、運転手が1人では足りない。そこで運転手をもう1人雇い、彼らのための休憩室も用意しなければならなかった。

 「1人余計に雇えば、その分の食事や宿舎も手配する必要がある。長距離輸送はガソリン代や道路の通行料もかさむ。この契約から得られる利益は先細る一方だった」。趙瀾涛はそう実情を吐露する。

 品質検査にもリスクがある。仮に検査に合格しなかったら、生乳は持ち帰らなければならないのだ。配達が無駄足に終わっても、そのコストをメーカーは一切負担してくれない。生乳の買い取り価格は1キロ当たり1.5元(約22円)と極めて安く、趙瀾涛の算盤では同2元(約30円)でないと元が取れないという。

 「この契約は友人のコネで獲得したのに、自分の都合で中断してしまい、友人に対してお詫びの言葉もない」。趙瀾涛は友人の好意を無駄にしてしまったことを悔やんでいる。

 石家庄への納入を中断した後、趙瀾涛は保定市にある新希望グループ傘下の乳製品メーカーと契約を結んだ。1キログラム当たり2.3元(約34円)の買い取り価格で、隔日で配達する。ところが、2度目の納入をした後の4月4日、先方の部長から「もう来なくてよい」という電話連絡を受けた。粉ミルクの在庫が過剰になったため、生乳をこれ以上買い付ける余裕がないからだという。

 かくして、趙瀾涛は毎日1トン余りの生乳の納入先を失ってしまった。今後のことを思うと、食事も喉に通らないほど不安になる。

 天国と地獄の分かれ道は、まさに“汚染ミルク事件”だった。

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