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オバマに撃ち込まれた北朝鮮のミサイル

米国の「ミサイル防衛」を巡る内外の政策闘争

  • 菅原 出,瀬川 明秀

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2009年5月1日(金)

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 2001年1月のブッシュ政権誕生からワシントンや中東で取材を続け、日経ビジネスオンラインでも随時、分析記事を寄稿していただいている菅原出氏が最近、ブッシュ政権の8年間、とりわけイラク戦争を総括された本『戦争詐欺師』を出版されました。

 この戦争を巡る政権内の政策闘争や、政策に影響を与えるべく暗躍した亡命者、ロビイストや情報詐欺師などの姿を通して、ワシントンの政策決定過程の舞台裏を描いています。この取材を通じて見えてきたことを語ってもらおうと思っています。

 その中でも今回は2つの話をお願いしました。

 まずは北朝鮮のミサイル問題。北朝鮮はなぜミサイル発射をこの時期に行ったのか。このことを考えるために、ワシントンの政策闘争に詳しい菅原さんに、オバマ政権の安全保障戦略を整理していただこうと思います。

 そして連載2~4回目では2001年以降の米国の安全保障戦略の経緯を振りかえります。その中でも、“影の主人公”“米国をイラク戦争に引き込んだ男たち”、菅原さんが言う「戦争詐欺師」たちの話を中心に伺います。


 ―― 2009年4月、北朝鮮が“人工衛星打ち上げ”としてミサイル発射に踏み切りました。なぜこの時期だったのか。改めて整理したいと思います。

菅原 ええ。もちろん北朝鮮国内の事情は数多く挙げられるのですが、ここでは米国との関係、ワシントンの北朝鮮政策との関連、つまりオバマ政権側の事情から見ていきたいと思います。

米国を交渉に引き込むためのカード

菅原 出(すがわら・いずる)氏
1969年東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。平成6年よりオランダ留学。同9年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェローを経て、現在は国際政治アナリスト。米国を中心とする外交、安全保障、インテリジェンス研究が専門で、著書に『外注される戦争―民間軍事会社の正体』(草思社)などがある。最新刊は『戦争詐欺師』(講談社)

 まず、この問題を理解するには1つのことを頭に入れておく必要があります。第一に北朝鮮の現指導部たちが、自分たちの生き残りを長期的に保証するためには、どうしても究極的には「米国と何らかの取引」をする必要があるということです。

 金融制裁をやめてもらうとか、新たに燃料などの供給を受けるなどの大きな取引が必要だということです。

 米国とこのような大きな意味での「取引」を成立させない限り、北朝鮮は日本からの支援も得ることはできないのが現実です。ですから「どうやって米国を交渉に引き込んでいくか」が北朝鮮にとっては死活問題であると言えます。これは北朝鮮の「変わらぬ対米アプローチ」の柱です。

 ですから、今回のミサイル発射問題もこの観点から見る必要があります。

北朝鮮は後回し

 ミサイル発射以前は、米・北朝鮮関係は完全に行き詰まり状態でした。ここで忘れてならないのが、米国の外交・安全保障政策の中で、北朝鮮の優先順位は高くないということです。

 米国は巨大な国家で世界中の様々な国々に関与し大きな影響力を持っていますが、外交・安全保障問題の最高意思決定者は大統領であり、これは当たり前ですが大統領は1人しかいません。国務長官も1人です。

 そうすると危機的な状況を1人の人間がいくつも同時にマネージすることは現実的には不可能で、今この瞬間にも米兵の命が奪われているアフガニスタンやイラクの問題がどうしても優先順位が高くなる。

 イランの核問題の方が米国にとっては圧倒的に優先順位が高くなってしまうのです。

 そうなると、北朝鮮に対しては金融制裁がコツコツとボディーブローのように効いておりますし、緊急に対応しなければならない問題が他にたくさんあるわけですから、当然北朝鮮問題は後回し、というか大統領がわざわざ身を乗り出して取り組むような問題ではなくなってしまうわけです。

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