Pete Engardio (BusinessWeek誌、国際シニアライター)
米国時間2009年4月28日更新 「Swine Flu: Lessons from SARS」
現在メキシコから他国に感染が広がっている豚インフルエンザについて、インド人のIT(情報技術)専門家ナラヤナン・ビスワナータン氏は、世界的に大流行する恐れのあるこうした伝染病が経済活動に及ぼす影響を軽視できないことを経験からよく知っている。
2003年春、ビスワナータン氏は台湾の自動車メーカー、中華汽車(チャイナモーター)向けのソフトウエア開発プロジェクトの責任者として、台湾に駐在していた。その頃、東アジアで未知の危険な病原ウイルスが引き起こす伝染病のうわさが瞬く間に広がった。この伝染病はSARS(重症急性呼吸器症候群)と名づけられた。
その後わずか3週間で、アジア経済は休眠状態に追い込まれた(BusinessWeek.comの記事を参照:2003年4月11日「How SARS Is Strangling Hong Kong」)。航空会社は台北や香港、シンガポール、上海など、アジア各都市の発着便の4割をキャンセルし、大規模な会議も中止された。高級ホテルやショッピングモールには閑古鳥が鳴き、広州市で開催される中国最大の貿易見本市「広州交易会(中国輸出入商品交易会)」でさえ、参加者が激減する事態となった。
結婚が決まっていたビスワナータン氏は、同プロジェクトに参加していたほかのインド人技術者とともに、台湾の中華航空(チャイナエアライン)でインドに帰国し、プロジェクトの残りはバンガロールで完成させた。
だが現在、米調査コンサルティング会社アバディーン・グループ(ボストン)で世界各地の物流のサプライチェーン部門の責任者を務めるビスワナータン氏は、伝染病の大流行を恐れるパニックが行き過ぎた反応をもたらす危険性について、SARS騒動から貴重な教訓も得た。
当時、世界の製造業、特にエレクトロニクス産業やアパレル産業の相当数の企業が、SARS感染が流行した中国に生産拠点を置いていたため、工場や港の閉鎖によって世界経済が機能停止に陥るのではないかとの懸念が広がった。エコノミストらはアジア全域について、2003年の経済成長率予測を数ポイント下方修正したほどだ(BusinessWeek.comの記事を参照:2003年4月24日「SARS Piles on the Pain in Asia」)。
旅行業と小売業への打撃は避けがたい
ところが、中国の工場は操業を続け、輸出も滞りなく続けられた。SARS感染の沈静化とともに、アジア経済はすぐに回復した。
現在の豚インフルエンザが世界的大流行に拡大しない限り、事態はSARSの時と同じように推移するとビスワナータン氏は予想する。現時点で、メキシコの豚インフルエンザによる死者は少なくとも7人が確認されているほか、感染が疑われる死者が100人以上いる。
皆が人込みを避けようとするため、旅行業と小売業への悪影響は避けられないだろう。航空会社や一部小売業者、食肉生産業者の株は下落が予想される。しかし、メキシコの巨大な輸出産業は、さほど深刻な損害を被ることはないだろう。
「SARSが流行した当時は、新型インフルエンザが世界にどのような影響を及ぼすか分からなかった。だが今回は、当時のようなパニックは起きないはずだ。生産業者が正しい公衆衛生上の管理を行っていれば、豚インフルエンザの影響は生じないはずである」(ビスワナータン氏)
米国土安全保障省は4月26日、「公衆衛生上の緊急事態」を宣言。欧州連合(EU)は加盟各国の国民に対し、やむを得ない場合を除き、メキシコや米国の一部地域への渡航を差し控えるよう勧告した。
次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



BusinessWeekは米ブルームバーグ社が発行するビジネス雑誌である。1929年、大恐慌の年に創刊されて以来、世界中に読者を拡大してきた。現在の読者数は約470万人を誇る。本コラムではBusinessWeek誌および






